(Editor) | 01, May, 2017

『ムーンライト』と『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

2017年のアカデミー賞受賞作である『ムーンライト』と『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。両作には、他者に対する視点/考え方に共通点がある。

 

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両作とも、物語の説明が少なく、隙間の多い構成で、過剰な演出はない。つまり、人類を滅亡させるような企みもなければ、大地を揺るがす天変地異がおきるわけでもない。頭で理解できる事実、実際に現実世界で起こっている問題、誰にでも起こりうるような悲劇を、流れるようなタッチで淡々と描いている。

両作を考える上で、まず始めに“共感”というワードがふっと浮かんでくるが、これはニュアンスは近くとも、正しく説明する言葉ではないと思う。淡々とした演出が突きつけているのは、登場人物への感情移入ではなく、そこにある様々なストーリーを認めることにあるはずだ。共感より一歩引いた、他人の人生に対する理解。共感はしなくてもよい。互いに認めあうことが大切なのだ。

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製作者の意図するところではないにしても、どうにもトランプ政権の用いる排他性と絡めてみてしまう。人は、すべての人類とはわかりあえない。趣味も違えば信仰もそれぞれだ。当然、人に対しての好みもある。しかし、その各々の人生/ストーリーを認めあうことこそが、今の社会に必要なことで、人はみんなそれをわかっている。だから今このような映画が作られ、また評価されているのだ。『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督は「両作とも普通なら興行的に成功しそうにないと思われる映画だが、実際には成功している。観客はいろいろな映画を求めている」とインタビューで答えている。

『ムーンライト』が日本でも興行的にその成果を伸ばしていることが嬉しい。5/13に公開を控えた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』も、よい興行成績を残すことだろう。改めて、現実世界と芸術/表現の世界は密接にリンクしていることを感じることができる。ゆっくりと、しかし確実に、時代は移ろっているのだ。

 

『ムーンライト』

TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ新宿ほか大ヒット上映中。

http://moonlight-movie.jp/

 
 
 

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

5月13日より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。

http://www.manchesterbythesea.jp/

 

上岡