(Editor) | 14, Sep, 2017

BALENCIAGA issue

「プレタに乗り出すには、あまりにもクチュールを知りすぎた」

1968年にこの言葉を残して、ファッション界を去ったクリストバル・バレンシアガの意志を受け継ぎメゾンを舵取ることとなったデムナ・ヴァザリア。
前評判通り、いや、それ以上の賛辞を持って受け入れられたファーストシーズン以降、バレンシアガは一躍トップブランドの一つに躍り出ました。自身のヴェトモンのみならず、こちらも見事モードの最先端へと押し上げたデムナですが、そのクリエイションの秘訣は“アクセシブル”であり、“共感”されるものだからだと思います。
Instagramなどに見るキャッチーなグラフィックやインパクト重視のデザインがもてはやされるようになり、スーパーモデルのような体型でなくても各々の個性によってファッションアイコンになれる時代。ファッションのあらゆる基準がリアリティをもとにジャッジされるようになった今、道行く人や実生活からインスピレーションを得るデムナ・ヴァザリアはまさに時代が生んだスターの一人だと思います。IKEAのバッグやパリ土産のTシャツ、サイズが合わなくなってフロントボタンが見えてしまったデニムなど、世代や文化を問わない普遍的な要素や言語がある。そして同じようにカルチャーやアートからもインスピレーションを得て、クリエイションに反映しながらもそれを全面に打ち出さない。ラムシュタイン(ドイツのメタルバンド)と、かつて子供部屋に貼られていたタイタニックやスターウォーズのポスターをすべて等しい要素としてデザインに落とし込む。ファッションとカルチャーの結びつきの重要性を理解しながらも「バンドTを着るならそのバンドを深く知らなくちゃいけない」という、ある種排他的でスノッブな風潮からも距離を置いている気がします。まるで洋服それ自体が気に入ったのなら、何も考えず着ればいいとでも言わんばかりに。

そして年齢や性別、文化を問わないその普遍性を、ハイブランドが生み出す「モード」に昇華しているのがバレンシアガというメゾンの器量。創業者の「クチュール界の建築家」の名にふさわしい精密なパターンやクラフツマンシップによって生み出されたシルエットやフォルムが新しいバレンシアガの強み。ラグジュアリーさとウエアラブルさを絶妙なバランスで両立させたカジュアルウエアから、クラシックな素材やディテールを用いながらも先進的なシルエットのテイラードまで。一見しただけではその“仕組み”がわからず、着ることで初めて理解できるプロダクト一つひとつの奥深さが人々を魅了しているのだと。もちろん個性的なモデルを通して、リアルでありかつ驚きのあるモダンな“アグリービューティ”で表現するロッタ・ヴォルコヴァのスタイリングなど、周りを囲むクリエイターたちのサポートも不可欠です。
こうしたさまざまな要素がデムナの下でしっかりとかみ合っているからこそ、ファッションフォワードな人たちがこぞって欲しいと思うコレクションを生み出し続けているのではないでしょうか。

今回Them magazineでは、この時代を代表するメゾンの一つであるバレンシアガのクリエイションをより深く伝えるために、1冊すべてを使って特集した特別号をリリースします。さまざまなクリエイターが解釈し、表現したファッションストーリーや他では絶対に訊けないデザインチームの生の声、メゾンのクリエイティビティを加速させるアーティストたちへの取材など、その奥深さにふさわしいラインナップで、バレンシアガの魅力を解き明かします。
Them magazine 2017年秋冬特別号「BALENCIAGA」は明日15日発売。
お求めはお近くの書店もしくはamazonやfujisanマガジンまでどうぞ。