(Editor in Chief) | 23, Oct, 2017

昭和のインフルエンサー(3)鴨川つばめ

少年チャンピオンに1977年から1979年に連載されたギャグ漫画『マカロニほうれん草』、その作者が鴨川つばめだ。たった二年間しか続かなかったのに、当時の中高生は彼の描く漫画に熱中した。なぜなら、そこに登場するキャラクターが、とにかくオシャレだったからだ。

昭和50年代中期、少年チャンピオンは無敵だった。平成を生きる若者たちには、にわかに信じられないかもしれないが、少年ジャンプなんか問題にならないほど人気があった。水島新司の『ドカベン』、手塚治虫の『ブラックジャック』、山上たつひこの『がきデカ』、その他にも恐怖漫画『エコエコアザラク』とか、明るい暴走族漫画『750ライダー』など、銀河系軍団を揃えたリアルマドリッドくらいの布陣だった。

その中でも、『マカロニほうれん荘』は異彩を放っていた。ギャグ漫画なので、筋はほとんどない。とにかくナンセンスなパワーだけで押し切る内容だった。爆笑できるか、といえば『がきデカ』のほうが断然面白かった。

しかし、『マカロニほうれん荘』には、サブカル的要素がふんだんに散りばめられていた。登場人物たちが、日本に紹介されたばかりのセックスピストルズのパンクスタイルで登場したり、ブライアン・フェリーのアルバムジャケットをパロったり、ニナ・ハーゲンなども登場した(もちろん、漫画のストーリーに一切関係なく)。

当時、ファッションやサブカルチャーが少年漫画誌に描かれることはなかった。『ガロ』という雑誌では多少はあったかもしれないが、『マカロニほうれん荘』の比ではない。パンクロックやニューウェーブ、さらには当時の東京のストリートを席巻していたフィフティーズなロックンロール・スタイルや竹の子族などを、ふんだんにとりいれた漫画家は鴨川つばめが初めてだった。

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さらに、女性キャラは誰もがファッショナブルで、当時の東京コレクションからそのまま抜け出したようなルックを身につけていた。鴨川つばめは、少年漫画というメディアを使って、音楽やファッションを伝えたかったのだろうか? それとも、ただ自分の好きなサブカル的世界をモチーフにしただけなのだろうか? 『マカロニほうれん荘』が終わる頃に登場した江口寿史の『すすめ‼︎パイレーツ』はおそらく、鴨川つばめの影響を受けたに違いない。そして、当時ファッションや音楽と同じくらい漫画が好きな中高生たちも、彼の影響をモロに受けた。彼女にするなら、鴨川つばめが描くような女の子がいい、と真剣に思った男子生徒も少なくなかった。

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残念ながら、鴨川つばめは『マカロニほうれん荘』の他、ごくわずかな作品だけを残して、筆を折った。異才を惜しむ様々な人たちが消えた彼の姿を追ったが、ノイローゼ説、ヤク中説、怪死説やポン引き説など、様々な噂が駆け巡った。ギャグを考え続けることが、どれほどのストレスなのか、そんなメッセージを読者に残して。

以来40年近く、鴨川つばめの描く絵を見たことがない。