(Editor) | 21, Dec, 2017

「最近気になる雑誌」No.04 THE PLANT

 花/植物は、ファッションテキスタイルの絵柄として一番よく使われるモチーフなのではないか。ウィメンズに顕著であるが、特に春夏シーズンにはあらゆるコレクションに花が咲き乱れる。ショーで使われる音楽がコレクションを解読する大きな手助けになるのであれば、フラワープリントに宿る花言葉だって同じ役割を果たす。すると、ファッションを俯瞰的に語るには、音楽や映画といったジャンルと同列に、花や植物についての知識も必要とされるべきといえよう。と考えたのだが、しまった、僕は、花/植物について何も知らない。

 個人的には、花といえば《ドリス ヴァン ノッテン》が第一に思い浮かぶ。メンズウィメンズ問わず、多くのコレクションに登場する花や植物柄の美しさに、毎度惚れ惚れする人も多いはずだ。その独創的な柄の使い方はどこからきているのだろう。以前、「Vogue」誌にてドリス・ヴァン・ノッテンの自宅が取り上げられたことがある。掲載されているあまりにも美しい写真に僕の心は貫かれた。
 ドリスは自宅の庭として広大な敷地を持っており、そこでたくさんの植物と花を育て、さらには自身の手でそれらを管理しているという。僕は、この生い茂る無数の草花が奏でるシンフォニーが、ドリス特有である柄と柄の繊細かつ大胆な美しい組み合わせをもたらすインスピレーションとなっていることを確信した。もし彼がパリやロンドンに拠点を構えていたならば、これほどの潤沢な土地を得ることはできず、今日の《ドリス ヴァン ノッテン》は違ったクリエイションの形をとっているだろう。もちろん他にさまざまな理由があっただろうが、植物への愛情というピュアな心が彼をアントワープに留め、それがオリジナリティ溢れる感覚を養い、今日多く取り沙汰されるインディペンデントなビジネススタイルに繋がっているとも考えられる。

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ドリスの自宅

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ガーデンにて、おそらく作業着であろう服装で微笑むドリスがカッコいい。。。

 

↓ここから、ドリスの自宅に関するVogueの記事が読めます。
http://forums.thefashionspot.com/showpost.php?p=12328521&postcount=177

 年明け1/13には、映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』が公開される。このドキュメンタリーでは、第二次世界大戦中はドイツ軍と連合軍の倉庫だった建物を改築したという、アントワープの本社/アトリエ内はもちろんのこと、ドリスの自宅や庭にもカメラは潜入しているようです。先日の《ドリス》が行ってきた100回のショーをまとめた書籍の発売といい、ブランドのファンとしては嬉しいできごとが多いですね。

 

 

 さて、今回ご紹介したいのは、先日に書店で気になり買ってみた『THE PLANT』というスペインの雑誌。その名の通り、植物にフォーカスを絞った雑誌です。イギリスとアムステルダムにも編集拠点(?) があるようで、用いられる言語は英語です。

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 もちろん単なる植物解説雑誌ではなく、テキストとヴィジュアルが心地よいレイアウトには、植物に絡んだ豊富なコンテンツが並ぶ。巻頭には、アメリカとメキシコを隔てる国境沿いの壁付近に生える植物を政治的な視点も含めたドキュメンタリーが置かれ、花には欠かせない「匂い」という観点から、イソップなどで仕事をする調香師Barnabe Fillionへインタビュー。また、花と関係の深い生き物である「蜂」の、巣箱の写真を載せるなど、さまざまなコンテンツがあります。また、インサートされる写真のために素晴らしいフォトグラファーたちを起用していて、例えばカニエ・ウエストによる《YEEZY》のZineを撮影したJackie Nickerson や、10冊目となる新作写真集を刊行したばかりである、モデル卒のスウェーデンの写真家リナ・シェイニウスも名を連ねています。

 

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 植物×ファッションもフォローされていて、今号に登場するのはジョナサン・アンダーソン。イギリス人フローリストSimone Goochをインタビュアーにおき、伝説的なイギリス人フローリストConstance Spryの作品を軸に、ジョナサン自身と花、そして《ロエベ》と花の関わり方について語られています。
 ジョナサンがクリエイティブ・ディレクターに就任した後の《ロエベ》は、花や植物との関係性を深めています。昨年リニューアルされたマドリード旗艦店には恒久的にフラワーショップが併設され、今年は写真家スティーブン・マイゼルとのコラボレーションでフラワーアレンジメントのカレンダーを制作。《ロエベ》今冬のカプセルコレクションの、ウィリアム・モリスとのコラボレーションもやはり植物と花がモチーフです。テキスタイルにおける草花の表現だけではなく、服以外のカルチャーとしてブランドイメージに巻き込もうとしている。
 彼がさまざまなインタビューで話すとおり、《ロエベ》は多方向的にさまざまなカルチャーをフォローアップし、ファッションのみならずカルチャーを感じられるブランドを目指している点がよくわかります。《ロエベ》は「ロエベ クラフト プライズ」も今年より開始し、バッグの縫製とはまた別の”クラフトマンシップ”も援助。今後はどのような分野と取り組んでいくのかも楽しみです。

 

 この雑誌を読んで気づいたのは、僕にとって花は僕の生活には存在せず、ただ写真集で眺めるような存在になっていること……。これじゃいけない。花の匂いを嗅ぐような機会がないので、ドリスのような立派なガーデンは無理でも、まず自分の部屋で一輪の花を育てるところから始めてみようか。ひとまず、自分の好きな花ぐらいは言えるようにしたいところです。

 

連載「最近気になる雑誌」

No.00 序章

No.01 Print 

No.02 HOLIDAY

No.03 DOCUMENT

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上岡