(Editor in Chief) | 10, May, 2018

スクリーンの中のファッションチェック #01 『君の名前で僕を呼んで』

映画を観ていると、ストーリーよりも前に出演者の着ている服が気になってしょうがない、ってことありませんか? 職業病というよりは、そんな癖があるからこの仕事に就いたのだと思っています。って、ことで最近気になった映画が、2017年のアメリカ・アカデミー賞ノミネート作品『君の名前で僕を呼んで』。ゲイ・ムービーはだいたい、お洒落です。

男性の同性愛をテーマに描いた作品は、女性に支持されることが多い。『アナザーカントリー』『眺めのいい部屋』『モーリス』などなど。そして、この『君の名前で僕を呼んで』も然り。(『君の名前で僕を呼んで』の脚本家は『眺めのいい部屋』『モーリス』の監督を務めたジェームス・アイヴォリーだから、当然ですが)

その理由は、映像が美しいから、ファッションが美しいから、そして主演男優が美しいから。

確かに『君の名前で僕を呼んで』も北イタリアの自然や建物など、美しいシーンがふんだんに描かれる。そして、ティモシー・シャラメという美少年の針金のように細く白い体や、子犬のようにクセの強い髪の毛や、知的で、ちょっと憂いを秘めたタレ目は、それだけでも腐女子にとっては数え役満級。さらにシャラメ君演じるエリオのファッションもこキュート。映画の時代設定が1983年(原作は1987年だが)。当時、二十代前半だった僕にはおなじみのスタイルだからよーく、わかる。

ヨーロッパのお坊っちゃまの定番と言われる《ラコステ》のポロシャツ、ボルドーやブルー、ボーダーなどをサラリと着こなすエリオ。80年代前半、東京でも大流行した《ラコステ》は、もちろん僕も着ていたけど、たった一枚、赤しかもっていませんでした。

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しかし、エリオがお洒落なのは、《ラコステ》だけにあらず。上のTシャツを見よ。なんとトーキングヘッズのバンドT!。うーん、これは原宿のベルベルジンRでもなかなか見かけないレア物! 「夏休みは読書と編曲」をして過ごすというエリオとはいえ、北イタリアの田舎の少年がトーキングヘッズを着ているとは? 僕は、このTシャツを観ただけで、この映画にお金を払ったことに後悔はありませんでした。

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エリオはボーダーTもノースーリーブにして着るなど、当時東京でいえば、YMO好きのテクノボーイということになるでしょうか? ちなみに、この映画では坂本龍一さんもサントラに参加しています。

衣装担当のジュリア・ピエルサンティが、当時のテクノ少女だった、という推測もできそうですが(ベルベルジンRにも来てるかも?)。

しかし、ジュリアのすごいところはエリオだけではありません。相手役のアメリカ人お兄さん、オリバーの衣装のほうが僕には何倍も魅力的でした。

アーミー・ハマー演じるオリバーは、シャラメ君と違って腐女子からは賛否両論ありそうですが、ファッションは国士無双(役満)級。《ポロ ラルフローレン》のBDシャツやTシャツなど、当時のヤッピー系のゲイを見事にトレースしています。

ちなみに(が多くて申し訳ありませんが)、スタイリストの野口強さんが、ある主演男優がゲイの役を演じるに当たって、「どんな衣装を着れば良いか」と相談されたことがあるそうですが、「ラルフローレンのボタンダウン。しかもオックスフォード」と即答したんだとか。これ、回り回って、ジュリアにも伝わっていたのではないでしょうか。

オリバーには《ポロ ラルフローレン》のシャツよりも、ショートパンツのレングスを指摘する声が多いようですが、あれも時代を忠実に再現。確かに、今なら「キモい」という声にもうなづけますが。

しかし、僕がこの映画で最も注目したのは横チンギリギリの短めのパンツではなく、《ポロ ラルフローレン》の「ビッグシャツ」! 

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右のオリバーが着ている《ポロ ラルフローレン》のシャツは、馬のワンポイント刺繍が胸にはなく、左裾にあること(見えるかな? サドルの横に赤ぽいワンポイント)。そして、胸には、ほとんどの《ポロ ラルフローレン》のBDシャツにはないポケットがあること。この BDシャツは、《ポロ ラルフローレン》が「Big Shirts」シリーズ(ブランドのネームタグの下にも記されていた)として80年代末にリリースした名作です。アーミー・ハマーは身長194センチなので、それほどビッグに見えませんが、恐らく、彼が着ているのはMサイズズだと思います。 ちなみ僕は、Sサイズでも当時はLサイズを着ているのか? とよく言われたので、それほど「ビッグ」だということです。

1983年の舞台と言うと、まだ《ポロ ラルフローレン》の「ビッグシャツ」は生まれていないと思いますが、ジュリアは敢えて着せたのか、それともアーミーのガタイに合う《ポロ ラルフローレン》が「ビッグシャツ」しか用意できなかったのか? 

《ポロ ラルフローレン》の「ビッグシャツ」はBDシャツだけではなく、ポロシャツもリリースされていて、日本でも当時の渋カジ少年たちに大流行しました。アメリカでは、流行り始めたHIPHOP少年たちが着て、日本でもZOO時代のHIROさんとかが着ていましたね。

この「ビッグシャツ」は現在、日本の古着市場にはほとんど見ることができません。年代がそれほど古いわけでもないのに、まるでないというのは不思議。誰かが買い占めているとも推測できます。(ジュリアじゃないだろうな?)ちなみに、僕も古着屋さんで見つけたら、問答無用でタッチ&バイです。

BDシャツ、ショートパンツは、僕も何年も続けてきたスタイルですが、今年はオリバーを真似て《コンバース》のハイカットにしてみようかな、と思います。ベルベルにあるかな?