(Editor in Chief) | 15, Feb, 2017

柳澤健というノンフィクションライター

もう十数年、定期購読している雑誌は『ナンバー』のみ。

ファッション雑誌を作っている立場上、同業他誌も毎号チェックしなければならないのだけれど、いろんな言い訳をして目を通さないでいる。いかん、いかんと思ってはいるのだが。

その『ナンバー』でずっと気になっていた連載が一冊の単行本にまとまったことを、水道橋博士のFacebookで知った。

買わねば、と思っているところに、弊誌でも執筆していただいている田口悟史氏の(これまた)Facebokkで『ナンバー』920号のことがアップされていて(それは藤島大さんが書いたマニー・パッキャオの記事だったが)、そっちを先に買ったら、そこで玉(袋筋太郎)ちゃんも博士と同じ本のことを語っていた。

その本が、柳澤健氏が執筆したノンフィクション『1984年のUWF』(文藝春秋刊)。

面白かった。校了日で待ち時間がたっぷりあったとはいえ、一気に読んだ。

年齢的にUWFが「俺の青春だった」と言うには、ちょっとおっさん過ぎたが、猪木の新日→UWFに間違いなく熱くなった自分には、読んでて口の中が酸っぱくなるような思いを何度もした。そして、柳澤さんの文章に何度も、「そうそう、そうだったんだよな〜〜!」と納得した。

あの当時のプロレスや格闘技に対する自分の中のモヤモヤしていた気持ちを、柳澤健氏がきちんと整理してくれた(掃除してくれた)気分になった。

マガジンハウスからスタイリストの野口強さんと一緒にUWFを見に行き、「Uはガチか、否か?」から「日本人最強は誰か?」という議論をよくした。野口さんはジャンボ鶴田を挙げ、僕は猪木を推した。最後は野口さんの「俺、バット持ったら辰吉にも前田にも勝てると思うんですよね」という、全く違った方向の結論に着地するという酒を何度か飲んだ記憶も蘇ってきた。1984年、あれから、ずいぶん経ってしまった。

柳澤健という作家のことを全く知らなかったことを、(同業者の端くれとして)大いに恥じて、悔いた。すぐに彼のことを調べた。

驚いた。

『1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代』(集英社刊)というノンフィクションも書いていた!

林美雄のパックインミュージックは紛れもなく、俺の青春だ。UWFよりももっと濃密な感情がそこにはある。

翌日に購入し、校了がなかなか終わらないことをいいことに、一気に読んだ。二日で750ページ。心が震えた。

UWFよりも10年以上若い時代だったから、口の中が酸っぱくなるというよりは、甘く、切なく、悲しかった。

柳澤健、恐るべし。

昭和30年代殺しか? ならば、次回作を目をつむったまま「1クリックで注文」しよう。