FEATURE | 04, Apr, 2017

【vol.2】INTERVIEW about「Styling Edition」 by UNITED ARROWS

なぜUNITED ARROWSはユニークな“カタログ”を作り続けるのか?

 

【vol.1】に引き続き、「Styling Edition」の制作を担当するUNITED ARROWSのチーフプレス渡辺健文さんへのインタビュー。

 

IMG_3373

 

「人ありき」で作るカタログ

Q クリエイションにおいてUAとして良いのか悪いのかを判断するのは渡辺さんだと仰っていましたが、U.A.S.E.をつくる際に、会社から要望や縛りはあるのでしょうか?

 前回は「ありか、なしか」を私が判断するという言い方をしましたが、実際は判断をすることなんてほとんどないですよ。100%信頼できるスタッフと一緒に作り上げているので、そのクリエイションに対してもっとこうしたいということはあっても、NOということはないです。もちろん丸投げで作っているわけではないですよ(笑) 会社の中でのU.A.S.E.のポジションや役割とか、こういうカタログにしたいとかは伝えます。関わってくださる方たちが圧倒的に我々の意図や意向を汲み取る力が凄いんでしょうね。いざ作り始めたら、みんなで一緒に作っていくという感覚が強いです。

 

Q そのなかで、毎号のテーマは設定していますか?

 うーん、内緒です(笑) 

 

Q ではカタログ制作の進行はどのように始めるのでしょうか? 例えば雑誌だと、まずテーマがあってそこからテーマに沿うような人にインタビューしたりファッションストーリーを撮ったりして、一冊を作っていくことが多いかと思います。しかし、U.A.S.E.にはテーマがないとしたら、例えば19号はNYで撮影していますが、それはどのように決まるのでしょうか?

 テーマが無いとは言ってないですよ(笑)ただ、それはその時々によって違うんですよね。先ほどお話したとおり、UAのディレクションはありますが、それをU.A.S.E.のテーマとしてしまうことはあんまりないですね。もちろん雑誌にはテーマが必要だと思いますが、U.A.S.E.は雑誌ではないですからね。あくまでも根底には「UA」というテーマがいつもあるわけです。それを今どう表現するかという話なので、それ以上、ひとつのテーマを設けたりはしていませんが、作っていく方向性は康一郎さんが示してくれます。UAが何をしたいのかとか、あるいはUAにとって大事なことは何かとか、いろんなことを汲んでそれを示してくれるわけですが、それはテーマとは違うと思っていて。何でしょうね。力ですかね。うまく説明ができないんですが、作る力を与えてくれるという感じです。あとは毎号そうですが、どういう人が着るかということはすごく大事にしています。今回もまずモデルのキャスティングから入っていって、それで一番ロケにふさわしい場所がNYだったという流れですね。

 

IMG_3371

 

Q 例えば19号P.099には「Student」とタイトルがついていますが、この女性は本物の学生ではないですよね?

 本物の学生さんですよ。

 

Q そうなのですね!どのようにモデルを見つけるのでしょうか?

 それはもう制作スタッフのコネクションです。編集や現地のコーディネーターさんのつてを辿っていきながら、ですね。現地でモデルを探すこともありますし、ネットで見つけてキャスティングした人もいました。とにかく妥協がないので、ギリギリまで探しますね。

 

Q NYにいそうな人がいいからではなくて、○○さんがいるからNYに行こうということなのでしょうか?

 そうですね。その発想に近いです。19号の前はロンドンでロケをしていて、その前はNY、日本、ベルリン、LA。12号までは日本で撮っていましたね。もちろんNYに行ったら、NYのどこで撮るのかっていうのは大事にしますけれども、はじめからNYのここで撮りたいからNYに行こうという発想ではないですね。

 

Q 常に人ありきということですか?

 人はかなり大事ですね。「誰が何をどのように着るのか。そして、その人がどこにいるのか」ということです。

 

IMG_3367

 

Q U.A.S.E.は毎号違った、特徴的な判型を使用されています。それはどのように決めていますか?

 基本的にはアートディレクターである平林さんからこういうものはどうかとご提案を頂いて、それを受けてみんなで決めていくという流れです。

 

Q 例えば19号は普通郵便で送れないような判型(36mm x 25mm x 6mm)なので郵送コストもそれなりにかかりそうですし、また毎号のように判型を変えると印刷にあたってのリスクも考えられます。言ってしまえば、毎号同じ形の方がローリスクだとおもいますが、それでもなぜ毎号判型を変えるのでしょうか?

 そもそも、判型をこうじゃなければいけない、こうしなければいけないというのをあまり考えたことがありませんでした。今言われて、そうなんだと思いました(笑)でも、例えば判型を一つ決めてそれでずっとやっていきましょうとなったとき、中のページも判型にあうレイアウトで構成していくしかないわけですよね。それには絶対に表現の限界がある気がします。たとえば、今回の号は横開きですが、レイアウトも含めてすごく気に入っているんですよね。もし、判型を縦で統一してたら、これって出来なかったってことですよね。判型が決まるタイミングも、制作の一番最後の時もありますよ。想定はしつつですけどね。紙面を作りながら、表現したいことや撮れた写真に合わせて決めていくこともあります。

 仰る通り、19号のこの大きさは通常より高い郵送代などリスクはありますが、それ以上に印刷物でしか出来ないことをやろうという思いが強かったです。オンラインで完結できることをわざわざ紙でやりたくなかったんです。サイズもぎりぎりまで検討しました。このサイズで良いのか、もっと小さい方がいいのかなど推敲を重ねましたが、最終的にはUAのディレクターも含めたみなさん総意で、今出すんだったらこういう佇まいがよいのではないかとなという結論に至りました。

 

Q U.A.S.E.は社内やショップスタッフ、お客さまからはどのような反響を受けますか?

 それはもうさまざまですよ。直接渡した人には「ああだね、こうだね」と意見をもらいますが、それはちょっと片寄っているかもしれません(笑) お客さまの声を僕自身は直接聞くことができないので、お店のスタッフが拾い上げて伝えてくれます。

 

Q 前号を出した後に会社から指摘されたことや提案、反省点を生かしていくことはありますか? 制作経費も多くかかっているとおもうので、会社として数字的な縛りなどもあるのではと思うのですが。

 答えるのが難しいですね。はっきり言うと、洋服屋さんが出しているカタログなので、雑誌や写真集ではなく販促物ですよ。ましてやお金を出して買ってもらうものではなく、ある種お客さまの欲しい欲しくないという意思に関わらず届くわけじゃないですか。もちろん店頭で欲しいと言ってくださる方は別ですけれど、基本的には郵送してお送りするので、U.A.S.E.をご覧になってどのようなリアクションをしてくださったかとか、KPI(*重要業績評価指標)みたいなところはもちろん重要です。ただ自己満足で作っているわけではありませんからね。UAのお客さまであり続けてほしいとか、ファンで居続けてもらいたいという気持ちの先に、U.A.S.E.を見てお店に商品を買いにきていただきたいわけです。ですから、毎号作っていく中で、U.A.S.E.を郵送したお客さまがどのくらいお店に来てくださっていて、どれくらい買い物してくださっているかという数値的な反展は必ず出します。お店からの意見もそうです。それが、「何が良かったのか、何が良くなかったのか、次はどうするのか。」を考える指標となるわけです。そうやって、我々がどのようにお客様のお役に立てるか、ということを常に考えて次につなげていくわけで、お店もプレスも商品部も、それは同じですね。

 

Q それは具体的にどのように活かされますか?

 細かい話ですが、例えばどの洋服を使うのか、どのような写真を選ぶのか、どのような構成にするのか、男女比はどうか、読みもののページは必要か、物撮りは必要か、物撮りとモデルの比率はどうかなど、もうあらゆる面ですね。そういうところはきっちりとシビアに考えます。具体的に言うと、お店から、男女比は同じなはずなのに、紙面の構成上どうしてもメンズのシェアが高く見えるという意見があったり、現段階ではウィメンズの方が店舗は多いので、ウィメンズのほうが多いくらいでいいのではという意見もありました。そういった反響を吸い上げて、次にどう生かすかという話はたくさんしますよ。その内容は、制作チームの皆さんにも共有します。一番ありがたいのは、僕らUAサイドはもちろんのこと、康一郎さんや平林さん、編集者の方々も同じ目線で考えてくださっているということです。ですから、一度この方向で作ろうと決めて走り出したら、それから「これはアリだナシだ」という局面が極めて少ないのかもしれませんね。

 

Q なるほど。でも、事前にそのような細かい事項の確認はあっても、走り出したらもうそこまでは言わないと。

 言わないというより言わなきゃいけない場面がないんですよね。皆さんが同じ目線と認識を持って作ってくださってるからでしょうね。スタッフには本当に恵まれていると思います。立場上無責任に聞こえますが、平林さんや康一郎さんの方が僕よりそこをシビアに考えてくれているんじゃないかと思うことすらあります。思うことのほうが多いかもしれませんね(笑)

(【vol.3】に続く…)

【vol.1】はこちらからどうぞ。

 

【プロフィール】

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

渡辺健文

UNITED ARROWS チーフプレス

1979年生まれ。文化服装学院を卒業し、2002年にユナイテッドアローズにアルバイト入社。2006年よりプレス担当となり、2016年からプレスチーフに就任。

 

Edit_KO UEOKA