Photography by MANABU MATSUNAGA

FEATURE | 09, Jan, 2018

【インタビュー】FAITH CONNEXION (アーカイブ)

 

(2016/8/24発売のThem magazine No. 011 「LOVE LOVE LOVE」に掲載されたアーティクルです。)

 

 デザイナーは疲れている。年2〜4回、プレコレクションを含めると6回にも及ぶコレクション製作に加え、キャンペーンビジュアル、店舗のディレクション、はたまたSNSにアップする写真、パーティへの列席など。ラグジュアリーメゾンやコレクションブランドのデザイナー、もとい“クリエイティブ・ディレクター”は今、これまでに類を見ない程“働かされている”。その結果、クリエイションに十分な時間を費やすことができずに、メゾンを去っていく者たちが後を絶たない。そんなマーケティング主導のファッションシステムから距離を置き、自由なマインドのもと、コレクションを発表するブランドを知っているだろうか。2004年にパリで誕生した《Faith Connexion》は2012年、新たなオーナーの元、匿名のデザインチームによるコレクションブランドとして再始動した。オーバーサイズのニットにはクラッシュ加工、ミリタリージャケットにはド派手なハンドペイントが施され、ボロボロになるまではき古したようなデニムはまさに時流を捉えるストリートテイスト。一方で、ロックスターが舞台衣装で着るような金刺繍のジャケットやフリンジ付のライダースといったラグジュアリーなプロダクトも目を引く。まるでかつての《BALMAIN》を彷彿とさせるがそれもそのはず、新生《Faith Connexion》はクリストフ・デカルナン在籍時の《BALMAIN》のメンバーによって製作されているのだ。そして、現在フォトグラファーとしても活動するデカルナン自身もデザインチームに在籍しているのではないか、という噂もある。モードの主流を行く卓越したセンスと、メゾン譲りの技術をもとに、唯一無二のファッションを生み出す彼らの主張はこうだ。
“Fashion needs to be free… Freed from Fall Winter,    Spring Summer seasons, freed from multimillion dollars shows, freed from flagship stores and freed from star designers.”

——ファッションも自由でなくてはならない……秋冬、春夏といったシーズンや、数百万ドルのショーや、フラッグシップストアやスターデザイナーといったものからも。

ファッションの新時代の到来を予感させる《Faith Connexion》。
このたび、デザインチームへいくつかの質問を投げかけた。
彼らの回答を通して、その謎に迫りたい。

 

スクリーンショット 2017-12-11 17.24.04

2016-17A/W

——ブランドの簡単なプロフィールと、《Faith Connexion》のデザインチームについて教えてください。

 《Faith Connexion》は約10年にパリでスタートしたが、その歴史の中ではいくつかのことが起きている。2012年にはAlexandre Allard氏に買収され、2014年から全く新しいチームによる2015/SSのコレクションをリスタートした。新レーベルの裏側にあった欲求を取りまとめたAllard氏は「私の向こう見ずな《BALMAIN》での経験は、ファッションの裏にいる、インスピレーション溢れる人たちへの愛情を募らせた。粘土や絵筆と同様に、洋服というものが我々の時代の表現方法のひとつであることを見つけたんだ――天啓のように。自分は、妥協なき誠意を持って、マーケティング本位な現状から洋服を解き放たなくてはならない、と。アーティストにとって唯一の義務が自由であることのように、ファッションも自由でなくてはならない……秋冬、春夏といったシーズンや、数百万ドルのショーや、フラッグシップストアやスターデザイナーといったものからも」と語っている。

 

——リブランドに至った経緯は何だったのでしょうか?

 オーナー兼CEOであるAlexandre Allard氏が新しいチームを作ろうと決め、リブランディングをしたのが2014年。彼のファッション業界における最初のステップは10年前の《BALMAIN》だったが、彼の(ファッション業界において)“全く経験がなかったこと”こそが、幸運にもクリエイティブな挑戦を可能にさせ、ラグジュアリーにおけるエレガンスの限界を押し広げることができた。その10年は、我々にとって本当にクリエイティビティが熱く沸き立っていて、音楽、建築、デザイン、アートなどを取り込み、Royal Monceauの破壊から最近のSao Pauloにおけるクリエイティブな侵略までと、常に多くの新しい才能を押し進めてきた。《Faith Connexion》とは、素晴らしい出会いの集合体であり、それらが技術やクリエイティビティをもたらしてくれるんだ。我々は皆、パリの7 rue TronchetにあるHotel de Pourtalesの中のスタジオに住み、働いている。

 

——アトリエに常時数名のアーティストが活動しているほか、外部アーティストとのコラボレーションも積極的に行っていますね。こうしたコラボレーションがブランドにどのような影響を与えているのでしょうか?

 “Connexion”という文字が意図することは、人々をつなげるということ、個人個人の才能に絶対的な信頼を持ちつつも、この新しい世界秩序の中では、人々が共に一致団結してこそ真のパワーが生まれるのと同じように。もちろん、《Faith Connexion》は個人自体を信頼しているけれど、天才は一人だけではないとも確信しており、クリエイションというものは、他の人間、そして他の表現方法からもあたえられることが必要。実際、ストリートアーティストらの登場によって、それまでの永続的な姿に、多面的なライフスタイルが加わったのだから。

 

——またグラフィティ・アーティストとのコラボレーションが多いのは、ストリートカルチャーがブランドの根底にあるからなのでしょうか。

 ストリートカルチャーが《Faith Connexion》の根底にあるとは言い難いが、(さまざまな要素の)集合としては、ストリートは我々の環境の重要なパートを担っており、全員がインスパイアされているといっていい。ストリートカルチャーは、我々のコレクションにインスピレーションをあたえる様々な影響のうちの単なる一つの要素。さらに、ストリートは自発性と真実との同義語であり、我々はその、都会の生きたエネルギーを再現したいんだ。アクセシブルでありたいし、オーセンティックであることを信条としている。確かに現在は多くのグラフィティアイテムがあるけれど、各コレクションは進化し続けているので、例えば、グラフィティなしのハンドペイントされた装飾になったりと、次のシーズンは全く違う方向になる可能性もある。

 

——コラボレーションの相手はどうやって見つけているのでしょうか?

 アーティストやデザイナーとコラボレーションするときの決まりは特になく、知り合いや口コミなどからなんだ。我々のメイン・ゴールは、自分たちの正統性を守ること……ゆえに、コラボレートする人たちも本物でなくてはならない。全く同じ美意識ではなかったとしても、同じランゲージを話し、確かな世界感を持っていること。

 

——デザインチームが一着のプロダクトを生み出すまでのデザインプロセスを教えてください。

 どのアイテムかでプロセスは全く異なるけれど、ジャケットを例にあげるとするならば、まずスタイリストがスケッチを起こし、生地を選ぶ。次にそのスケッチをテクニカルシートと共に、最初の縫製パターンを作っている製造業者へと送る。この縫製パターンで、納得がいくジャケットになるまでさまざまなフィッティングを重ねる。その後、この縫製パターンと選んだ生地を工場に送り、最終的なジャケットの形になる。もちろんこのプロセスは、さまざまな手法を取り入れたものの場合、例えばデニムならばブリーチをしたり、ダメージを施したり、染色したりと、より複雑になっていく。

 

——数人のデザイナーやアーティストたちのイメージをまとめたり、一つの方向に皆を導くディレクター的な役割の人はいるのですか?

 《Faith Connexion》では、アーティストやスタイリスト、アクセサリーデザイナーらと、メゾンのストーリーを作るべく共同で働いている。我々の狙いは、すでに何人かのストリートアーティストたちとやってきたように、世界の面白い人たちとコラボレートを展開すること。誰か一人に焦点を当てるのではなく、このコレクティブな精神を強調するというのが我々の哲学ゆえに、共同で働くということが大事なんだ。もちろん、コレクションのプランを立てる、予算を管理するといった、メゾンを運営するための手助けをしてくれる協力者たちはいるけれども。

 

スクリーンショット 2017-12-11 17.24.29

2017 S/S

——“ストリート”が、ブランドの軸にあるということですが、ストリートのどのような要素に影響されますか?

 ストリートとの主立った共通項は、どちらにもある種のフリーダムがあるということ。我々のメゾンは “きちんとしたラグジュアリー”やデザイナーメゾンではなく、多様性を支持し、表現の自由を推奨している。いわゆる「ファッション」と呼ばれる定義にどこにも当てはまらないし、区別や棲み分けといったものに抵抗している。この考え方こそが、僕らを自由にしてくれるんだ! 僕らは、古着や“使われた”感のある服を愛している。従来からのラグジュアリーブランドとは違うけれど、だからといってグラマーさやセクシーさを主張しないわけでもないんだ。

 

——“ストリート”以外に、デザインのインスピレーションになるものはありますか?

 我々の居る場所や、クリエイティブな仲間のアートパフォーマンスを通じてなど、インスピレーションは様々なフィールドで見つけている。彼らのエネルギーこそが《Faith Connexion》のインスピレーションの源であり、クリエイティビティの沸き立つ場なんだ。ファッションはストリート、隙間や失敗、散らかった場所などに属しているものだと我々は思っており、そのエネルギーをロサンゼルスやパリ、コペンハーゲンなどの街の中心から、その生々しさ、シンプルさをエレガントな手法で取り出している。インスピレーションソースとしては、80年代のロンドンアンダーグラウンドからプリンスやマドンナ、デヴィッド・ボウイといったポップアイコンまで、音楽とそのアートシーンも非常に重要だ。

 

——リブランド以降の《Faith Connexion》には、《BALMAIN》の前クリエイティブ・ディレクターであるクリストフ・デカルナンもデザインチームに加わっているという噂が飛び交っています。匿名の集団だということを主張しているブランドとして、そうした噂に対してはどのように感じていますか?

 前にも述べているように、我々の哲学は一人にハイライトを当てるのではなく、コレクティブな精神を強調すること。従って、このコミュニティそれ自体について話し、宣伝することが大切だと思っている。

 

——現在のモードファッションにおいて、ブランドそれ自体より、一人のスターデザイナーの存在がそのブランドの価値を左右している側面があると思います。そうした状況のなかで、匿名のデザインチームである《Faith Connexion》が支持を得ているのは何故だと思いますか?

 我々はパートナーと、ダイレクトでパーソナルな関係性を持つこと、シーズンに縛られないことを目指しているけれど、それこそが成功の秘訣だろう。どんな競争関係にも巻き込まれていないし、スーパースターデザイナーに焦点を当てるよりも、もっと本質的な対話があると信じている。ブランドの成功は決して誰か一人の仕事のおかげではない。誰がなんと言おうと、そこにはコレクティブなストーリーが常にあるからなんだ!

 

——また、デザイナーたちが休みなく働き続ける現在のファッションシーンについてはどう思いますか?デザインチームというのは、そうしたスターデザイナーのクリエイティブを消費するようなサイクルからの回避という側面もあるのでしょうか。

 我々の新しいストーリーが始まってから、ファッション業界全体が新しい時代に突入したと思っている。我々は新しい方法で洋服を作りたいのであり、その人たちが本物である限り、異なるコラボレーションに対してもオープンだ。もうこれ以上、ファッションのシステムに準じて働きたくないんだ――シーズンごとのコレクションも、ファッションショーも、スターデザイナーもいらない。僕らはアーティストやクラフトマン、デザイナーなど、さまざまな人たちとコラボレーションの機会を持っていて、それらに価値を見いだしている。区別や棲み分けに対抗することで、自分たちを自由にしている。トレンドを作りたいわけでもない。単に、自分たちが好きな服が欲しいだけであり、多様なセンシビリティこそが僕らの美学を強めるんだ。

 

——《Faith Connexion》を表現するキーワードのひとつに、「YOUTH」が挙げられます。クラッシュジーンズやパーカー、ペイントやグラフィックが目を引くジャケットなど、まさにストリートのキッズが欲しくなるようなラインナップですが、彼らには買えないハイエンドな価格です。最も惹かれるようなユースの世代が手に入れづらいという矛盾についてはどう思いますか?

 まず、《Faith Connexion》はクラッシュドデニムやペイントされたジャケットだけではない。通常のデニムピースやオフショルダージャケット、ボヘミアンドレスなどもある。さらに、上記に挙げられた各ピースはハンドペイントで、各種のテクニカルで革新的な処理や装飾がされているのであり――僕らはコラボレーターたちのクリエイティブなデザインや技術の価値にリスペクトを払っている。そして、間違いなく同様にユースであるコラボレーターたちに正しく報いるため、ということでもあるんだ。

 

Text_Mamiko Izutsu
Edit_Junichi Arai