Photography by Matthieu Dortomb

FEATURE | 18, Jan, 2018

【インタビュー】《Ludovic de Saint Sernin》 2018 S/S にデビューした、誘惑するアンドロジナス。

 

 《Ludovic de Saint Sernin》。この名を知らぬ人も多いだろう。パリをベースにするこのブランドは、2018S/Sシーズン、モデルを使ったプレゼンテーション形式で初めてのコレクションを発表した。そこではフラジャイルな雰囲気のモデルが、服を纏いつつもスタイリングにより肌を露出させ、艶かしい世界観が表現された。プレゼンテーションはプレスやバイヤーから大きな注目を浴び、ブランドはすでに《J. W. アンダーソン》を発掘したロンドンのPR会社「A.I.」と契約。来たる1月21日にはパリにて2シーズン目となるコレクションの発表を控えている。

 デザイナーの名は、ブランド名と同じLudovic de Saint Sernin。ベルギーに生まれ、幼少期をアフリカ、7歳からはパリで育つ。パリの芸術学校「ESAA Duperré」を卒業し、オリヴィエ・ルスタン率いる《バルマン》にて経験を積み、2018S/Sよりブランドをスタートさせた。

 ブランドのオリジナリティを創出する、端正なカッティングやバランス感覚、そして匂い立つ色気、セクシュアルなムード。一瞥するだけで《Ludovic de Saint Sernin》だとわかるその“ブランドらしさ”は、どのようにして生まれたのか? 業界の期待を一身に集める新星へのインタビューで解きあかそう。

 

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———あなたの育った背景について教えてください。あなたはどのような家庭で育ちましたか?
 私はベルギーで生まれ、7歳まではアフリカで育ち、その後母と妹と共にパリに移住しました。その時父のみはベルギーのブリュッセルに移住したので、私はパリとブリュッセルを行き来しながら高校生までの時間を過ごしました。ですので、さまざまな文化的ルーツを持って人生のスタートを切りましたが、母親側の家族はパリの第16区出身だったこともあり、自身のことを生粋のパリジャンだと思っていますよ。

 

———どんな少年時代を過ごしましたか?
 一家の長男として生まれ、兄妹の中では唯一の男として女性に囲まれて育ちました。母は私を柔道とテニスの教室に通わせてくれ、それを楽しんで過ごしていましたね。しかし、後にそれらを辞めて、演劇や絵の教室に通いはじめました。その後、いくつかの縫製レッスンを受けたことにより、ファッションの道に進みたいという気持ちが明らかになったのです。

 

———初めてファッションに興味を持ったきっかけを教えてください。
 ファッションを愛していた、素晴らしい母の友人が契機です。フライトアテンダントをしている方でした。彼女の家のリビングルームには、昔の《サンローラン》のVHSテープが特別な箱に入って保管されていました。彼女は、イヴ・サン=ローランの仕事の大ファンだったのです。彼女の家に行った時はいつもそれを見るよう勧めてくれ、私は「これが自分のやりたいことだ」と感じたのを覚えています。

 

———通っていたパリの美術学校「ESAA Duperré」では何を学びましたか?
 自分自身についてもたくさん学べましたが、それ以上に自分以外のことについて学べたのが大きかったと思います。私は「Duperré」入学以前は脚繁くクラブに通い、自分と同じバックグラウンドを持つような人々とのみ出会う特殊な世界で育ちました。しかし、「Duperré」では自分とは違うさまざまな背景や美学を持つ折衷的な人々に出会うことができました。入学当初は正直戸惑って、この環境に馴染めることはないといつも悲観していましたが、振り返るととても解放的で感動的な体験でしたね。

 

———なぜ《バルマン》を最初の仕事場として選んだのですか?

 私は「Duperré」での教育課程を終えてから、さまざまなブランドにインターン希望として面接を受けました。幸運にも、すぐに《バルマン》でのインターン職を手に入れることができました。他にも《ジャン・ポール・ゴルチエ》や「CRファッションブック」といった選択肢もありましたが、私にとって《バルマン》に行くのが自然だと感じたのです。その後すぐには仕事に就きませんでしたが、1年間はインターンとして働きました。そして、私がアシスタントをしていた女性が産休に入ったため、ブランドは私にその穴埋めをしてくれないかと尋ねてきました。それは自分にとって大きなチャンスだったので、はじめは少し怖かったのですが、最高の時間を過ごせましたよ!

 

———オリヴィエ・ルスタン率いる《バルマン》チームでは、どんなことを学びましたか?

 オリヴィエはファッションへの素晴らしい情熱と気力を持っており、それがチームのみんなに伝染しいい環境を作っていました。彼のエネルギーが、《バルマン》を特別なブランドにしていると言っていいでしょうね。当時、私は装飾やテキスタイルの分野を担当していて、サンプルから今では珍しいキャットウォークの最後のピースまで、すべてインハウスで作業が行われました。ですので仕事量は多かったのですが、その分素晴らしい時間も多かったのです。

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———自身のブランド《Ludovic de Saint Sernin》立ち上げの理由やきっかけを教えてください。

 ある時《バルマン》でデザイナーとして自分の仕事を追い求め、時間とエネルギーを会社に投資し続けるか、それとも自分自身のことをやり遂げるかという人生の岐路に立ちました。同時に、リスクを冒して挑戦するにはいい時期だとも感じていましたね。そして、家族や友人の支援のもと、自分のブランドを立ち上げることを決めました。しかし、公正であるために言及しておきますが、すべては自然に起こったのですよ。決心したのは、日本への2回目の旅の後でした。

 

———現在、ブランドはどのような体制ですか?

 最初のインターンを雇った2017年の9月までは、私のみで活動していました。そして今ではInstagramを通じて私を見つけてくれた少数の人が手伝ってくれています。最近私の周りで起こっているほとんどのものごとが、Instagramを通じていますね! 先日、スタジオ兼アトリエに改装したアパートで仕事をしていて、日に日に充実していっていますよ。

 

———なぜロンドンとパリの双方で活動するのでしょうか?

 実際にはパリに拠点を置いていますが、私自身はロンドンとパリを往復しています。パリでは、生産などのいくつかの仕事をしています。ロンドンでは生地を買うのが大好きで、ハックニーに拠点を置く芸術家のセラミック作品や、同じくロンドンベースで活動する私の親友Khanh Brice Nguyenと一緒にニットウエアを作っています。

 

———初めてのコレクションである2018S/Sシーズンの反応はいかがでしたか?

 とても良かったです!コレクション発表以来起こったすべてのものごとにとても満足しています。初めてのコレクションが実際にショップにて販売されることになるとは思っていなかったのですが、すでに4つのショップが買い付けてくれました(そのうち3つが日本)。 メディアの反応もよかったですね。男性のみならず、女性にもブランドとのつながりを感じていただけていることも嬉しいです。また、このシーズンを通して本当に素晴らしいチームの皆に巡り会えました。例えば、次のシーズンも一緒に仕事をするのを楽しみにしている人々や、僕にとって初めてのキャンペーンをディレクションし撮り下ろしてくれたLuis Venegasにね。彼はブランドのロゴもデザインしてくれ、とても気に入っています。

 

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———2018S/Sのプレゼンテーションはどのようなことを考えて行いましたか?

 今回は、見てくれる人を説得するというよりも、むしろ誘惑をしようと考えていましたね。その上で私のヴィジョンを偽ることなく、ありのままに見せようとしたんです。常々、誰かの期待にこたえようなどと考えることなく、シンプルに自分自身を、そして私が信じることを自由に表現したいと思っていました。そして、見てくれる人々がそれに対して素直に反応することを望んでいました。結果として、チームの努力と情熱によって、とても美しいプレゼンテーションとなったと思います。

 

———2018S/Sコレクションは、プレゼンテーションでのスタイリングを含めて、“性”という要素が強調されているように見えます。どのようなインスピレーションを持ってコレクションを作り上げたのでしょうか?

 ええ、これは新しい時代の話と言えるでしょう。衣服を通して性を解放し、あなた自身とあなたの身体を表現する自由を得ることについて考えました。インスピレーション源は、ロバート・メイプルソープとパティ・スミスのラブストーリー、そして彼らの人生そのものです。スミスによる個性とアイデンティティーの華麗な探求、そしてメイプルソープによる写真を通じた性的な表現に感化されたのです。2018S/Sのプレゼンテーションには10体のルックが登場しましたが、実は11体目もあって、それはメイプルソープの有名な写真の1つに触発されて作った、リネンとシルクで編まれたジョックストラップのルックです。

 

———コレクションには、布ではなく、陶器をつなぎ合わせて作られたウエアがあります。これはどのようなインスピレーションを得て制作されたのでしょうか?

 このコレクションは、制作前にした日本への旅行に大きくインスパイアされています。私は日本の陶器に夢中なのです。去年は京都で大量に購入し、大切にしていますよ。日本には毎年のように行くのですが、いつも東京・渋谷にある、男の陰茎のオブジェなんかが飾ってある変わったレストランで夕食を楽しんでいます。先日そこに行ったときは、シェフは日本語で「Take me」と書かれたティーカップをくれました。それで自然と、東京で過ごした楽しい夜を思い起こさせるような、陶器の服を作りたいと思ったのです! 服に使われている陶器によく近づいて見ると、日本語がわかる人なら「Take Me」と書いてあることがわかるだけでなく、「Top」、「Bottom」、そして私のイニシャル「LDSS」の文字も読むことができるでしょう。

 

———陶器以外にも、日本の多くの素材が使われているようですね。

 はい、もともと初めてのコレクションには、日本のユニークなものを取り入れたいと思っていました。東京での生地探しは、パリよりもいいですね。ヴィンテージ品もいろいろ買いましたよ。しかし、最もインスパイアされたのは香川県の直島ですね。すばらしい時間を過ごしました。

 

———《Ludovic de Saint Sernin》には理想の男性像がありますか?

 ショーのためキャスティングや、プレスや特別なプロジェクトの時にはそういった指針を必要とします。男性像についてはまだうまく説明できませんが、今回のキャスティングの際にはそのイメージを煮詰めていましたね。ひとつはっきりしているのは、私はユニークでエレガント、若々しく他人にインスピレーションを与える人には惹きつけられるということです。

 

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2018 S/S Campaign by Luis Venegas

———ファーストシーズンのキャンペーンは、スペインの編集者/ディレクターであるLuis Venegasと制作されていました。その過程はどのようなものだったのでしょうか?

 2018S/Sのプレゼンテーション後、あるスタイリストが雑誌「CANDY」(Luis Venegasが編集長を務める)の撮影のために私の服を借りていったんです。数ヶ月後、Luisがinstagramを通して私に連絡をくれ、キャンペーンを一緒に作りたいと提案してくれました。初めてのシーズンでキャンペーンを作ることは考えていませんでしたが、Luisのオファーを魅力的に思ったので一緒にやってみようと思いました。素晴らしいコラボレーションだったし、彼とは是非もう一度仕事をしたいですね! とにかく彼には感謝していますよ。

 

———日本に、2018S/Sコレクションを取扱うショップはありますか?

 現在、日本はブランドにとって最大のマーケットです。2018S/Sコレクションは「伊勢丹」、「アデライデ」、「スーパー Aマーケット」で見ることができますよ。日本でのセールスはDiptricsにお願いしており、彼らは丁寧にサポートしてくれています。

 

———あなたは普段どのような服を着ていますか?ウィメンズの服も着るでしょうか?

 私は、今の自分にも将来の自分にもフィットするような服を買います。即座に欲しいと思わせつつ、実際に着る期間も長い服ですね。タグやラベルをあまり見ないので、メンズでもウィメンズでも、いいと思ったら買ってしまいます。具体的には《イッセイ ミヤケ》や《ルメール》、《ロエベ》を着ることが多いですね。今は金銭的余裕がありませんが、《ザ ロウ》もいつかは着たいです。

 

———影響を受けたファッションデザイナーについて教えてください。

 ブランドでしたら《ヘルムート ラング》、《ジル サンダー》、《アライア》です。

 

———ブランドの将来の展望について教えてください。

 制作した2018S/Sのキャンペーンは、「CANDY」でデビューする予定ですので見てみてください! 次のコレクションは、1月21日に発表します。私にとっては初めて秋冬のコレクションです。また、いくつかのコラボレーションも進行しているので楽しみにしていてください。

 

Edit_Ko Ueoka