FEATURE | 13, Jun, 2018

【インタビュー】BEN TOMS “Untitled”

擬態をテーマにした、ファッションフォトグラファーによる初の作品集。

 『DAZED』や『Another』誌でのエディトリアルや、《ヴェルサス ヴェルサーチ》などブランドのキャンペーンを手がけるイギリスの写真家、BEN TOMSがキャリア初となる作品集『Untitled』を発表した。正面にダイアグラムがプリントされたボックスには、ロンドンやNY、スリランカなど世界各地で撮影された写真がポストカード形式で20枚収録されている。

 日本でのローンチにあわせ、「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」では特設スペースが展開中だ。会場には作品に登場する、日本人アーティストUraraが制作したオリジナルコスチュームや、セットデザイナーJanina Pedanが手がけた什器が設置され、『Untitled』の世界が現実に拡張されたような空間が楽しめる。また、日本限定色のネイビーとピンクのボックス版、そして作品がプリントされたTシャツも発売される。スペースのオープニングには、BEN本人も来日。日本好きでなんと20回以上も来日しているという彼に、今作の狙いや作品にまつわるストーリーを訊いた。

 

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——作品集『Untitled』の制作はどのように始まったのでしょうか?

「実は僕から企画したのではなく、サンフランシスコにある出版社『Owl Cave Books』が『写真集を作らないか』と声をかけてくれたのがきっかけなんだ。その話を受けて、“擬態”というアイデアが思い浮かんだ。そこで、まずテーマとなるワードを設定し、そこからテーマを“擬態”するような写真を収録することにした。キーワードはケース表紙のダイアグラムに記してあるよ。まずは過去に撮った写真からテーマを“擬態”するものを探し、テーマにインスパイアされた新作を多く撮り下ろした。アイデアを思いついてから作品を撮りきるまでは2ヶ月くらいだったかな」

 

——なぜポストカード形式の写真集にしたのでしょうか?

「本のように綴じられることでページの順番がコントロールされるのではなく、写真一つひとつが独立していて、自由に順番を入れ替えることができるポストカード形式のアイデアを気に入ったんだ。一枚だけ取り出して壁に貼り付けるのもいいし、ポストカードとして友達に送っても面白いよね。美術館に行くとたくさんのポストカードを見つけることができる。僕は、ポストカードはアートを掲載するフォーマットとして優れていると思うんだ。だから今回はイメージに適切なポストカードとしてのサイズ、そして紙の厚さにもこだわったよ」

 

——なぜ『Untitled』というタイトルとなったのでしょうか?

「最初ははっきりしたタイトルをつけようと適切な言葉を探したけれど、収録している写真はすべて一枚で独立できるほど力強いから、それらを包括するタイトルがつけにくかった。だから無理にタイトルをつけるより、曖昧にしておくことで見る人がそれぞれ自由に解釈できる余地を残したほうがいいと思ったんだ。ギャラリーに飾られているアートワークに、しばしば“untitled”って名前がついているだろう。それに対するジョークみたいなところもあるよ」

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——今作にはどのような写真が収録されているのでしょうか?

 「“擬態”をテーマにした、人物や動物、風景などの写真だ。コスチューム写真の多くは、『DAZED』のクリエイティブ・ディレクターを務めるスタイリストのロビー・スペンサーとともに、このプロジェクトのためにオリジナルで作った。『ドーバー』の特設スペースには、友人である日本人アーティストUraraが制作してくれた牛のドレスが飾ってあるよ。あるコスチュームは、80年代にクラブなどでパフォーマンスを行ったアーティストLeigh Boweryからインスピレーションを受けた。他にも、博物館で見つかるようなマスクを新しく作るなどいろいろなアイデアを試した」

 

——千葉や京都で撮られた写真も収録されていますね。

 「千葉の写真は、今年の元旦に行った『ディズニーシー』を裏側から撮ったものなんだ。説明なしだと、本物の古代ギリシャやローマの建築のように見えるだろう。裏面に建築に関するテキストが添えられることで、僕の作品の中ではさらに“擬態”しているんだ」

 

——千葉の写真だけでなく、すべてのポストカードの裏面にはそれぞれ写真に関連したテキストが入っていますね。

 「うん。写真にどこか関わりがある文章だけど、写真を直接説明する内容ではないんだ。例えば、カマキリが蘭に擬態している写真の裏には、『北京では環境汚染によって全ての動物の色が変わり始めた』という架空のストーリーを載せた。また、京都で撮ったピンクのレインコートを着た男の写真の裏には、《マッキントッシュ》の創設者であるチャールズ・マッキントッシュのプロフィールを書いたりしたね。テキストが写真に新たな面白みをもたらしているんだ」

 

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——今回はネイビーとピンクのボックスを日本限定版として発売されています。ケースの色によって、中の写真の見え方や捉え方も変わってくる気がしますが、どのように色を選んだのでしょうか?

 「そうだね。だからこそカラートーンは重要だと思っている。オリジナルはグリーンだから、限定版は何色がいいかなとよくよく考えてみたけれど、結局僕の好きな色であるピンクに落ち着いたよ(笑) 限定色のショッキングピンク、そしてシンプルかつシリアスにも見えるネイビーのどちらも気に入っている。写真にもファニーなものとシリアスなものが混じっているから、それぞれに違ったコントラストが生まれていいね。次の夏にはもう2色展開し、全部で5色になる予定だ」

 

——普段から仕事ではないパーソナルワークをされているのでしょうか?

 「ファッションの仕事で忙しいけれど、時間を見つけてパーソナルワークにも取り組んでいるよ。写真集にすることを前提に行なっているわけではないけれどね。今回初めて作品を発表する機会を得て、その準備の間は作品制作が僕の生活における大部分を占めたし、このように作品を形にできたことに一つの安心感もある。ファッションの世界で働くのは好きだけれど、時にファッションは繰り返しのように感じ、シーズンが終わるとまた次のシーズンとタイムスケールも詰まっていて忙しいから物事を落ち着いて考えている暇もない。一方、作品制作ではもっとピースフルな環境で喜びを感じられて、今回はそっちの世界を知ってしまった感じかな」

 

——今回の写真集発売をきっかけに、今後はどのようなプロジェクトを行おうと考えていますか?

 「現在はパフォーマンスアーティストとのコラボレーションに取り組んでいるよ。ロンドンに帰ってからは、この前『DAZED』のために撮ったパフォーマンスアーティストのミュージックビデオを撮影する予定だ。また、コスチュームを作ってくれたUraraの陶器作品集の撮影も担当している。今回のポストカード式のアイデアも気に入っているから継続したいとも思っているけどね」

 

[書籍]
Ben Toms『Untitled』
税抜価格:5,800円
[限定Tシャツ]
税抜価格:半袖 7,500円、長袖 8,500円
サイズ展開:S、M、L、XL

ドーバー ストリート マーケット ギンザ
ADDRESS  東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館
OPENING HOURS  11:00 ‒ 20:00
TEL  03-6228-5080

 

Edit_Ko Ueoka