FEATURE | 15, Oct, 2018

【インタビュー】Matthew Miller

2017/18年度インターナショナル・ウールマーク・プライズ受賞者インタビュー。

「ザ・ウールマーク・カンパニー」が開催する、インターナショナル・ウールマーク・プライズの受賞者が発表された。

昨年度、同アワードに参加したのは60カ国を超える国々からノミネートされた65名以上のデザイナーたち。その中から世界6地域を代表したファイナリストが集まり、「メンズウエア部門」と「ウィメンズウエア部門」「イノベーション部門」の3部門から各1名が選出。今回は見事メンズウエア部門のグランプリに輝き、10月16日まで「日本橋高島屋S.C.」と「髙島屋大阪店」にて開催されているインターナショナル・ウールマーク・プライズリミテッドストアでのウールコレクションのローンチでで日本を訪れていたデザイナーのマシュー・ミラーに話を伺った。

 

 

———まず、あなたのキャリアについて教えてください。

 もともとアートに興味があり絵を描くのが好きだったことから、マンチェスターで学生時代を過ごした後、自然な流れでロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に入学したんです。RCAではメンズウエア科を専攻し、在学中は伝統的なテーライングに興味があったことから《ブリオーニ》でインターンとして、イタリアのアトリエでクラフトやハンドステッチングを学び、非常に貴重な体験をしました。

 

———ブランドを設立するきっかけはなんだったのでしょうか。

 私がRCAを卒業したころというのは、金融危機で若者は仕事を見つけることができず生計を立てるのが難しい時期でした。そんな環境から、私たちの世代は自ら会社を立ち上げ、デザインをしたものを売っていく人が多かったんです。現に私もその一人で、ロンドンはファッションデザイナーにとって非常に恵まれた環境だったことからRCA卒業と同時にブランドを設立しました。はじめにダッフルコートを作り、それをパリで売るようにして、NewGenやスピリットオブファッションアワードなど数々の賞をもらい、幸運なことに今回のアワードも受賞することができました。

 

———プライズを獲得した時の率直な感想を教えてください。

 本当に驚きました。新しく今年ノミネートされたデザイナーやその作品をみていても本当に素晴らしいものばかりで、これまでのアワードの歴史をみてきてもイヴ=サン・ローランやカール・ラガーフェルドなど、素晴らしいデザイナーたちが受賞しています。その中で私がプライズを獲得することができ、自分の名も連ねることができたのは名誉なことだと感じています。

 

———ご自身ではどういったところが評価されたのだと考えていますか?

 評価について分析をはじめてしまうと、止まらなくなってしまうので考えていません。でも、一生かけて分析していくようなものなのかもしれませんね。

 

———このアワードに参加する前からご自身のブランドでもウールを使用していたのでしょうか。

 そうですね。ウールはいつも使っています。日本のウールを使うこともありますよ。日本は技術も凄いですし、品質も良い。パリで開催される見本市「プルミエール・ヴィジョン」でも好評です。だからこのアワードがあったからというよりかは、私にとってウールを使うことは自然と続けていたという印象です。メンズウエアの歴史を振り返っても、ウールという素材はラグジュアリーな素材として身近な存在ですしね。

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———今回のアワードではそのウールを使い、どのようなコレクションを展開したのでしょうか。

 まず、このコレクションを作る上で最初にあったのは、世界中で発生している異常気象に対応する機能性を重視したプロダクト作ることでした。今、日本は秋ですがまだ夏のように暑いですよね。ロンドンでも同じく昨年は異例の5週間続けて雪が降ったことがあり、今年の夏は40度近い猛暑日が続きました。私はこういった異常気象が、これからはもっと極端な気候に変化していくと考えています。なので、それに対応できるアウターとして完全防水性で暑い時には腰のベルトを外し、後ろのフープに通すことで肩から下げるアクセサリーとして使用できるコートをつくりました。他のプロダクトもそうです。ポケットを自由自在に動かせるジャケットや、袖の部分をフックで留めることでマフラーのように首に巻きつけることができるニットウエア。被らなくなったらウエアに取り付けられるキャップなど、本来の機能性に加えてさらにもう一歩先を考えた機能を採用しました。あと素材という面では、大理石を再利用したボタンなどを使用し、天然繊維のウールをより引き立たせるようにしました。

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———なかもで気に入っているアイテムを教えてください。

 気分によっても変わるのですが今で言えばタキシードかな。クラシックなアイテムですが、実際着てみるとはとてもモダンなデザインなんです。あと面白さでいうと「Riot – Black Flag」と「Dyed Effect Merino Wool Scarf」。どちらもスカーフで、前者はアナーキーや反抗というイメージが連想される黒旗のような生地に、“Riot.”という単語とその意味や定義をプリントしました。後者は、テキスタイルを扱っている中村裕一さんという方と一緒につくったスカーフ。彼はセントラル・セント・マーチンズでプリントデザインを勉強していた方で、ある日突然私のアトリエを訪ねてきて「一緒に仕事をしませんか」と声を掛けてきたんです。その時二人でコーヒーを飲みに行き、それ以来ずっと一緒に仕事をしています。

 

———アワードを通してなにか新しい発見はありましたか?

 はい、沢山ありました。このコレクションを制作する段階でも、ロンドンのメーカーの方と食事をしている時に突然思いついたデザインとかもそうですし、これから訪れる予定の京都で中村裕一さんがやっているプリンティングの工場や尾州の工場でも、間違いなく新しい発見はあるだろうと思っています。やはり、学ぶということは絶対に止めないで続けていくべきものです。「学校を卒業したから勉強は終わり」というのではなく、これからも沢山の人と関わり続けて行きたいです。

 

———最後に、今後どのようなブランドの発展を望んでいるのかお聞かせください。

 基本的なアプローチとしては、今までとってきた姿勢に変わりはないです。ただ、ファッションの世界は凄くスピード感があるので、それに追いつこうとする考え方ももちろんあると思います。ですが、どちらかというと私は自分のやり方でゆっくりと楽しみながら制作をしていきたいと思っています。

 

 

マシュー・ミラー
イングランドのストーク=オン=トレント出身。2009年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートのメンズウエア科修士課程を修得。卒業時に発表したコレクションは『VOGUE』の「One to Watch」に選出され、翌年にはFashion East Initiative MANの支援のもとコレクションを発表。その後もNewGenやスピリットオブファッションアワードなど数々の賞を受賞。今年は2017/18年度インターナショナル・ウールマーク・プライズのメンズウエア部門でグランプリに輝いた。