FEATURE | 09, Jan, 2019

【インタビュー】EDDIE MARTINEZ “Blockhead Stacks”

NYはブルックリンを拠点とするアーティスト、エディ・マルティネズによる日本初個展『Blockhead Stacks』が、六本木の「ペロタン 東京」にて2019年1月23日まで開催されている。

 エディの作品から感じられるのは、ウィレム・デ・クーニングやジャン=ミシェル・バスキアを彷彿とさせるダイナミズム。ペインティングのみならずスカルプチャーまで制作する彼だが、今展ではスカルをモチーフにした「ブロックヘッド」という、彼らしい大胆なタッチが発揮されたシリーズに焦点があてられている。オープニングに合わせて来日したエディに、インタビューを敢行した。

d© Eddie Martinez; Courtesy of the artist, Perrotin, and Mitchell-Innes & Nash, New York. Photo: Kei Okano

 

 

 彼の作品の成り立ちを理解するには、このムービーを見るのが早い。アメリカのメディア『ART21』がエディのアトリエを訪れ、その制作風景を映像でドキュメントした動画だ。そこに映されるのは、散らかったアトリエの中でキャップのてっぺんからシューズの爪先までを絵具まみれにしながら、真摯に作品と向き合うアーティストの姿。ただ座って優雅に描くのではなく、まるでキャンバスと戦うかのように対峙し、動的な手法で制作する。時にキャンバスにスプレーを突如として吹き付け、時に絵具の塊を遠くから投げつけるなど、その方法は突発的でアグレッシブとも言える。「この動画は2012-13年あたりに撮られたものだから、今とはちょっと違うけど。まあ見ての通り、僕の制作スタイルはとても直感的なものなんだ。アグレッシブだと感じられるのは、あまり考えすぎないようにスピードを重視して描いているからだと思う」。スピード、そしてそれに伴う即興性が、エディのアートワークにおけるダイナミズムを生んでいるのは間違いない。ブラシやスプレー、クレヨン、シルクスクリーンなど、あらゆる手法や媒体が駆使され、絵具以外のもの、例えばガムの包み紙やウェットティッシュといった“ゴミ”までもが作品に組み込まれる。「僕はゴミに魅力を感じている。僕のスタジオからは信じられないくらいの量の廃棄物が出るんだけれど、それに反応するようにゴミを拾い上げてキャンバスにくっつけてみるんだ。自分の作品にルールを設けているわけではないから、状況に応じて作品にも変化が生まれるわけだ」

 

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 このエネルギッシュな制作スタイルは、どのように体得されたのだろう。1977年に生まれたエディは、幼少期をブルックリンで過ごし、その後はアメリカ国内を転々として育った。美術学校に入学するも、自分には合わないと悟り早期に中退。アートの制作を継続することを望んだ彼は、学校教育をなしにして、どのようにアーティストとしての存在を確立すればよいのかを考えた。そして美術史を参照し、これまでの時代を風靡してきた他のアーティストたちの制作方法や人生を掘り下げて研究したという。「僕もピカソやマティスと同じく、まずポートレイトやランドスケープを描くことから始めた。それをひたすら繰り返すなかで、徐々に今のスタイルになっていったんだ。2005~08年は静物など具象画を描いていたけれど、次第に辟易してきて、抽象画に移行していった。花瓶などオブジェを机の上に並べて、それを大きなスケールに引き伸ばす作業などをしながら、僕だけの抽象画のスタイルを模索した。最近ではまた具象も気になり始めて、抽象と具象をひとつの作品の中にミックスしているよ。“セミアブストラクト”といった感じかな」

 

f© Eddie Martinez; Courtesy of the artist, Perrotin, and Mitchell-Innes & Nash, New York. Photo: Kei Okano

 

 抽象と具象を気ままに行き来するエディの“セミアブストラクト”は、ペロタンでの今展にてじっくりと観察することができる。会場に展示される「ブロックヘッド」は彼が2005年より手がけてきたシリーズ。大きな瞳のついた2つのスカルが、異なる色、異なる手法で反復されている。ギャラリー奥の部屋では、「ブロックヘッド」制作の原画も展示(彼はノートの切れ端にスケッチを描き、それを元に作品を描く)。会場は色とりどりのスカルで埋め尽くされた。「僕には、自分の過去の作品を参照して現在の作品をつくる傾向がある。昔の目で見て描いたものを、今の目で再解釈するのは楽しいんだ。今回のブロックヘッドシリーズも同様で、2005年に制作した第一号目のイメージに立ち戻って制作している。何枚も同じモチーフを描き続けることで、興味深いこのイメージについて探求してきた。同じキャラクターを使って、異なるムードをつくり出しているんだよ」

 執拗に繰り返される巨大な目を持ったスカルのモチーフには、果たしてどのような意味があるのだろう? 本展のプレスリリースにて、このシリーズについてエディ自身はこう語っている。

「僕は“ブロックヘッド を2005年に描き始めた。振り返ってみると、ブロックヘッドは僕のフィリップ・ガストンへの熱狂―特に彼の“ブロック積み”作品に対する、直接的な反応だと言える。ハンプティ・ダンプティの煉瓦壁のなかに消えゆく“ピカソのスカル”に融合する顔を視覚化したことを、鮮明に記憶しているんだ」

 なぜスカルなのか問うてみると「プレスリリースに記載した以上のことはない」と前置きしつつこう語った。「単にクラシックだからかな(笑) スカルに特別な意味があるわけではなくて、モチーフは別にトマトでもなんでも構わない。僕にとっては常に制作をし続けることこそが重要なんだ。今回の来日でも、ホテルで絵を描き続けているくらいなんだよ」

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 さて、プレスリリースではフィリップ・ガストンへの熱狂を述べていたエディ。フィリップ・ガストンといえば、クー・クラックス・クラン(KKK)など政治的な集団をモチーフに制作をしたことでも有名だ。現在、政治に燃え、多様なムーブメントが日常茶飯事的に起こるNYに住むエディだが、政治や社会情勢に影響を受けることはあるのだろうか。「確かに、社会的な事象などが僕のムードに影響して、作品にも反映されることはあると思う。ここ数年のNYのムードは、トランプ大統領のこともあってとてもクレイジーだったしね。しかし、僕の作品を見てくれる人にある特定の感情を抱かせようとか、そういったことをしたいわけではない。ただ社会のムードを嗅ぎ取ってスタジオに持ち込んでいるだけなんだ」

 過去には『mandala』(=曼荼羅)という作品シリーズを制作し、幼いころから東洋哲学に興味を持ってきたというエディ(毎日瞑想も行っているという)。待望のアジア、そして日本初個展に向けて意気込みを聞いてみた。「想像つかないね!日本の人々がアートに対して熱心であることは感じ取っているよ。だからこそ、何も期待を持たないで臨んでいるよ。ただ成り行きを見守るだけさ」。

 

Blockhead Stacks
TERM ~ 1月23日(水)
PLACE ペロタン東京
ADDRESS 東京都港区六本木6-6-9
OPENING HOURS   11:00- 19:00 (日月休)
TEL 03-6721-0687
URL perrotin.com/exhibitions/eddie_martinez-blockhead-stacks/7387

Edit_Ko Ueoka