FEATURE | 03, Feb, 2017

Interview with RICCARDO TISCI

リカルド・ティッシ インタビュー

2016-17A/Wシーズンより、《GIVENCHY BY RICCARDO TISCI》より新しいラインが登場した。「GIVENCHY ESSENTIALS」と名付けられたこのコレクションはアジアのみで展開され、ブランドのアイコンカラーでもある黒や赤をメインに、定番アイテムを更にアップデートしたラインナップで構成される。シグニチャーあるスターモチーフやロゴなどキャッチーな要素が散りばめられ、アジアフィットでリデザインされており、日本との結びつきの強いリカルド・ティッシの《GIVENCHY》にふさわしい仕上がりだ。ローンチに際して、リカルドへのインタビューを敢行。自身の日本へのリスペクトやクリエイションに対する考え、そして「GIVENCHY ESSENTIALS」に対する思いの内を語ってくれた。

“Japan has always been an inspiration to me.”
「日本はいつもインスピレーションを与えてくれます」

——新しくローンチした、「GIVENCHY ESSENTIALS」について教えてください。

  《GIVENCHY BY RICCARDO TISCI》のクラシックなスタイルに立ち返り、アジアに向けた限定コレクションというかたちで新たに息を吹き込みました。それが「GIVENCHY ESSENTIALS」です。カスタマーにとって、時代を超越した着心地の良い服こそ最も共感されるものだと信じています。何年もかけて作り上げてきたパーフェクトな《GIVENCHY》のワードローブの中からアイコニックなアイテムをセレクトし、新たにアップデートしました。

 ——2015S/Sで発表したすずらん柄に、日の丸を重ねたグラフィックアイテムが登場しています。このグラフィックを採用した経緯や意図を教えてください。

  《GIVENCHY》では、長年にわたって多くのユニークなプリントを発表し続けました。プリントは私たちのスタイルでありDNAで、人々が《GIVENCHY》をイメージする要素のひとつとなっています。「ESSENTIALS」の製作に取りかかったときに、私たちにとって特別な要素でありシグニチャーでもあるプリントを取り入れることが、コレクションの彩りを豊かにすると考えました。そしてコレクションの繊細さや、今回採用したアバンギャルドなプリントは日本へのオマージュです。印象的な色使いと細やかなディテールがクリエイションの出発点でした。日本の文化は非常に独創的なので、それらを研究するのが好きなのです。同時に、私は強さと脆さを共存させることも大事にしています。ストレートなジャケットの表面にグリッドプリントを施したり、黒のテキスタイルに赤のラインを配置したり。奇抜なものを作ろうとしたのではなく、日本をイメージさせる要素として取り入れました。

 ——このコレクション以外にも、日本の(ボーカル音源キャラクターである)初音ミクのためにクチュールのドレスを製作したそうですが、日本のカルチャーやアイコンに影響を受けることは多いのでしょうか。

  初音ミクはとてもクールです。とてつもないほどに!彼女は未来への案内人のような存在です。彼女のMET用ドレスを作ってほしいという依頼があり、(ヴァーチャルなもののドレスを製作するという)アイデアを気に入ったので、オートクチュールドレスを1着製作しました。初音ミクは信じられないほど美しく、大胆不敵です。デジタル時代の我々の社会において、このようなとても強いステートメントを持つ彼女の人気は計り知れません。ただただ魅力的です。このように日本はいつも私にインスピレーションを与えてくれます。デザインを初めて以来、私は日本をテイストの守り神のように考えています。日本はとても趣味がよく、非常に独特な優雅さを持っています。何千というさまざまなスタイルの中でも、日本のものは一目でわかるほどです。常に完璧にコントロールされ、洗練されていると思います。

 ——日本、そしてアジアのメンズファッションについてはどう思いますか?

 私はファッションに強く惹きつけられ、日本のデザイナーやブランドに影響を受けながら育ちました。それは今も変わっていません。日本のデザイナーたちは常に、彼らの周りのものからピュアなデザインを引き出す方法を知っています。クリエイティブなマインドを持っている彼らを尊敬します。純粋で、クールな日本のファッションカルチャーが大好きです。仕立てのよさがまるで芸術のようで、遊び心のあるプロポーションを備えていて、そしてスタイリングに頼る必要がないほど完成されています。他の文化では見つけられないであろう、非常に緻密で、美しいファッションです。アジアの文化全般について愛すべきところは、彼らはとてもユニークであるということです。それぞれ特別な、強いスタイルを持ち合わせています。アジアの国々はそれぞれが独自のファッションのイメージを持っていて、その歴史的背景が世界中のデザイナーに影響を与え続けています。

——メンズラインを始めたとき、インタビューで「メンズの服には2種類しかない。スポーティかクラシックのどちらかで、中間の物がない。だからストリートスタイルにエレガンスを加えて、服を着る楽しみを提案したい」と語っていました。あなたがモードの世界に持ち込んだストリートスタイルが、今ではメインストリームになっています。この状況についてどう感じていますか?

 (ストリートスタイルがモードの)メインストリームの一つになったことを、非常に誇りに思っています。私自身、この新しいスタイルの確立に一定の役割を果たしたのではないでしょうか。そして今では多くの人々がこうしたセンスの良さだけでなく、より快適であることを求めていると思います。私はリアルな人間を愛しているので、ストリートからインスピレーションを受けます。私にとってストリート感を持ち続けることがとても重要です。なぜなら、それこそが私の人生そのものだから。人々が、自分が作った服を着ているのを見ると嬉しくなるし、とても感動的です。最近では、過去のコレクションの洋服をミックスしている世界中の《GIVENCHY》ボーイズを目にするようになりました。デザイナーにとって、街中で自分の服が着られているのを見るということはとてもスペシャルなことなのです。同時にストリートは、私が最もインスピレーションを得る場所でもあります。想像もしなかったスタイルの人や、ときには通りを歩いている人を見て、自分の着こなしが変わるくらいの驚きに出合うこともあるでしょう?ストリートは魅力的で、インスピレーションが湧き出る場所なのです。

——《GIVENCHY》の大きな特徴の一つでもあるゴシックですが、あなたはいつ、どのようにしてその世界にのめり込んだのですか?

 ご存知の通り、ゴシックの美しさです。(感覚的に惹かれたものを)どうして言葉で説明できるでしょうか。私は人生というものを愛していますが、同時に暗く空想的な男でもあります。幼いころに受けた教育に由来していると思います。イタリア人は非常に宗教的で、私も宗教に魅了されています。宗教的なシンボルやイメージは私にとって、インスピレーションの根源です。私がここにいられるということが、どれほど幸福なことかを気付かせてくれるのです。いつも「(コレクションがゴシックなのは)あなた自身がそうだからなのか? 何故すべてがゴスに由来しているのか?」と尋ねられます。ダークな美学というものが、実際には黒という色、そしてゴスのみから由来されているわけではないことは明らかで、明るい作品を見ても暗いと思うこともあるし、暗闇の中でも人々は光を見出すことができます。どんなものに対しても、肯定的な眼差しを持って接するべきだと思います。そうしたアティチュードが私の全ての判断の基準となっていて、またファッションの虜になっている理由なのです。

——ロットワイラーやスターモチーフなど、数多くの”it”アイテムを生み出している《GIVENCHY》を、ファッションフォワードな人たちがこぞって着用していますが、では逆に、あなたにとって今最もファッションアイコンになると思われる人物は誰ですか?

 もちろん、多くの人たちからインスピレーションを受けます。友人や家族、私のチーム、ストリートで見かけた人々。私はとてもオープンマインドで、世界に向けて自分のことを発信したり、新しいことへのチャレンジや、新たな関係を築くことが大好きです。彼らのエモーショナル、そしてクリエイティブな要素が私を育てるから。親友との休暇でブラジルのビーチにいようが、ナオミ・キャンベルとのバケーションを楽しんでいようが、あらゆる人が私のクリエイションの核となりうるので、人々からはみな同じようにインスパイアされます。

——末っ子だったあなたは姉の影響で、幼少期よりファッションの世界に憧れていたそうですが、具体的にどんなファッションやブランドに夢中だったのですか?

 私の家庭は決して裕福ではありませんでしたが、愛に溢れていました。母親と姉妹、9人の女性に囲まれ、豊かな愛情に溢れ育ちました。彼女らは私のファッションへの情熱と鋭い視点、そして自分自身を創造するという願望をもたらしました。もちろん、周りには雑誌やテレビなどさまざまなファッションに関する資料があり、私はいつもその世界に魅了されていました。90年代のイタリアには、ジャンニ・ヴェルサーチという国民的英雄がいました。私はそんなに彼の仕事を愛し、そのすべてが、私にとってファッションに対する夢や希望の鍵となっていました。ヘルムート・ラングとの仕事では、彼のパーフェクトなテーラリングとスタイリングが私にもっとファッションを追求したいという気持ちを掻き立てました。ロンドンのセントラル・セントマーチン芸術大学に行き、自分自身のアイデンティティを表現したとき、私はいつも心の奥に、この二人の素晴らしいデザイナーを指針としていました。私自身、このようなロールモデルを持てたことを非常に幸せなことだと感じています。

——愛に溢れた家庭で育ったとのことですが、この号の特集はまさしく「LOVE」です。《GIVENCHY》のコレクションにも「LOVE」というワードが多用されていて、あなたと《GIVENCHY》にとって「LOVE」というのは必要不可欠な要素だと思います。あなたにとっての愛の定義はなんですか?

 私は愛というものが好きです。家族が好きで、一方でギャングのような存在も好きです。我々はみな、すべての愛のために生きています。愛は報酬や宗教を持たない唯一のものです。人々はみな等しく、一つの家族そのものだと思っています。愛は常に、私たちが平等であることを思いださせる唯一のものです。人間は誰もが等しく愛情を持ち、愛することができます。私にとって愛よりもピュアなものはなく、とても大切にしているものです。

 

リカルド・ティッシ

1974年、南イタリアのタラント生まれ。セントマーチン芸術大学卒業後、《アントニオ・ベラルディ》や《コカパーニ》、《プーマ》、《ルッフォ・リサーチ》で経験をつみ、2005年3月に《GIVENCHY》のウィメンズ・オートクチュールとプレタポルテ・コレクションのアーティスティック・ディレクターに就任。2008年3月にはメンズ・アーティスティック・ディレクターに任命された。