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MOVIE
Jun 08, 2020
By THEM MAGAZINE

Go See a Movie : 映画館へ行こう!『ルース・エドガー』

Them magazineがオススメする劇場公開中の映画、今週の作品はこちら。

 

ジュリアス・オナー監督『ルース・エドガー』

 

 

コロナの影響を受け公開が延期されていた、スリル・ヒューマンドラマ『ルース・エドガー』。先週末6/6(金)から、日本での劇場放映が開始された。

奇しくもブラック・ライブス・マター運動が激化した後での日本公開となり、この作品の重要性がさらに増したように思う。

 

この作品の主題は「リスペクタビリティ・ポリティクス」。マイノリティが、自分たちの存在が一般社会に受け入れられるよう・差別されないように、模範的に振る舞うことを意味する言葉だ。

 

主人公である黒人高校生ルース・エドガーは、東アフリカのエリトリアにて生まれながらに紛争を経験した元少年兵であり、のちに養子としてアメリカに引き取られた過去を持つ。ディベートが上手くアスリートとしても優秀という文武両道な高校生であり、その悲劇的(ドラマティック)な出自と成長過程も利用され、“黒人模範生”という期待を受けながら学校生活を送る。しかし、模範というしがらみ、そして模範を際立たせるために、社会は誰かを“非模範”という烙印を押して蹴落とすという事実が、エドガーを困惑させていく。

 

模範を個人に強要すること、模範から外れるのを悪とすること、そしてマイノリティにとっては、模範であることは必須の生存戦略ですらあること。もはや社会規範のひとつである模範性、そしてその上に成り立つ社会が、いかに不平等で脆弱なものであるかが、この映画ではしかと突きつけられている。

 

黒人にとっての「リスペクタビリティ・ポリティクス」は、ブラック・ライブス・マター運動の元凶から派生した高次的な問題である。もしブラック・ライブス・マター運動の燃料となっているひとつの現実を知りたいと思うなら、この映画はその良い助けになるはずだ。

 

「リスペクタビリティ・ポリティクス」それ自体は、アメリカ国内だけならず、世界中のどこの国やコミュニテイにも潜むような、普遍的な問題である。この映画が投げかける問いに、誰しもが困惑し、自分の行動を見直し、立つ社会の脆さに自覚することだろう。社会の歪みに”光”を照らす、非常に鋭い作品だ。

 

豪華キャストの好演も見所であり、ルース役を演じるケルヴィン・ハリソン・Jr.は、7月10日公開予定の『ウェイブス』でも主役を務めている期待の新星。高校教師・ウィルソン役は『シェイプ・オブ・ウォーター』や『ドリーム』のオクタヴィア・スペンサー、ルースの両親役はナオミ・ワッツとティム・ロスが演じている。

 

 

緊急事態宣言が明け、先週末より徐々に映画がオープンしている。上映中に観客が喋らないのに加え、感染予防対策として、1席ずつ間隔を空けての着席、アルコール消毒、上映中のマスク着用を要請する映画館が多く、屋内空間といえども感染リスクが低いと言える。

 

感染予防対策のルールを遵守しながら、ぜひとも劇場に足を運んでほしい。

 

Edit_Ko Ueoka.

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