
Jul 22, 2020
By KO UEOKA
Letter Exchange 1/8 – Bing & Ruth / 原 摩利彦

京都を拠点とし、ピアノやフィールドレコーディング、エレクトロサウンドなどを取り入れながら、情景豊かな作品を発表する音楽家、 原 摩利彦。
NYブルックリンのピアニスト兼コンポーザー、デヴィッド・ムーアを中心とした不定形な室内音響アンサンブル・プロジェクト、ビング・アンド・ルース。
奇しくも新アルバムのリリースが年央の同時期に重なった2人による、連載企画がここにスタートする。
まだ出会ったことのない2人をつなぐ、コロナ禍の東京とNYを行き来する不思議な往復書簡。
計8通にわたる手紙のやりとり。そのファーストレターは、原からデヴィッドへと送られた。
一通目のテーマは、「最近、どんなふうに過ごしていた?」。
1.【一通目】 「最近、どんなふうに過ごしていた?」 原 摩利彦→デヴィッド・ムーア
2,【一通目】 「最近、どんなふうに過ごしていた?」デヴィッド・ムーア→ 原 摩利彦
3.【二通目】 「インスピレーションは何から受ける?最近ハマっていることは?」 原 摩利彦→デヴィッド・ムーア
4.【二通目】 「インスピレーションは何から受ける?最近ハマっていることは?」 デヴィッド・ムーア→原 摩利彦
5.【三通目】 「最近、何を聴いている?」原 摩利彦→デヴィッド・ムーア
6.【三通目】 「最近、何を聴いている?」デヴィッド・ムーア→原 摩利彦
7.【四通目】 「この先の暮らし方とは?」原 摩利彦→デヴィッド・ムーア
8.【四通目】 「この先の暮らし方とは?」デヴィッド・ムーア→原 摩利彦
Diary #1 from Marihiko Hara to Bing & Ruth
はじめまして。最近、どんなふうに過ごしていた?
こんにちは、原 摩利彦です。こちらは京都。梅雨に入り、蒸し暑くなってきました。そちらはどうですか?今も在宅ですか?
4月上旬にアルバム《PASSION》ミュージックビデオの撮影をしたのが、仕事で外に出た最後でした。それからずっと自宅にいます。日に日に、家の前の通りは静かになっていって、ある時は街は息を止めたようになっていました。仕事の多くはキャンセルになったので、自作の楽譜を書いたり、オーケストレーションをしたり。また妊娠している妻と映画を観たり、二人でベランダに出て昼食を食べたりして過ごしていました。

妻は料理家で「VOLVER(ボルベール)」という屋号でケータリング、「KIKA」という名のレストランをやっていました(どちらも今は休業中)。そう、どちらもペドロ・アルモドバル監督の作品と同名です!二人とも大ファンなのです。『Talk To Her』と『All About My Mother』が特に好きです。

予定日より5週間も早く子どもが生まれてきました。1ヶ月入院しなければならなかったので、毎日自転車で冷凍母乳を病院まで届けに行っていました。感染症のため面会はできませんでしたが、毎日様子を聞くのが楽しみでした。無事退院して今は一緒に暮らしています。家にいて、一日もかかさずに子どもの成長を見られるのは本当に幸せですね。あっという間に時間が過ぎていきます。

家の中のお気に入りの場所はリビングのソファ。ここで自分で淹れたカフェラテを飲みながら、本を読むのが楽しみです。ここで聴くパーフェクトサウンドトラックは、あなたの『City Lake / Tu Sei Uwe』です。この曲の展開とともに部屋に入る日の光が変化していきます。



京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科修士課程中退。音風景から立ち上がる質感/静謐を軸に、ポスト・クラシカルから音響的なサウンド・スケープまで、舞台・ファインアート・映画など、さまざまな媒体形式で制作活動を行う。ソロ・アーティストとしてアルバム『Passion』『Landscape in Portrait』、をリリース。坂本龍一とのセッションやダミアン・ジャレ+名和晃平「VESSEL」、野田秀樹「贋作 桜の森の満開の下」の舞台音楽、ANREALAGEパリコレクションのショー音楽などを手がける。アーティスト・コレクティブ「ダムタイプ」に参加。
ビング・アンド・ルースは、NYブルックリンのピアニスト兼コンポーザー、デヴィッド・ムーアを中心とした不定形な室内音響アンサンブル・プロジェクト。ニューヨークのグリニッジ・ビレッジにあるニュー・スクール・フォー・ジャズ&コンテンポラリー・ミュージックで学んだデヴィッド・ムーアは、2006年にビング・アンド・ルースとしての活動をスタート。初期作品はエレクトロニクスとアンビエント・ドローンが交差するサウンド・プロダクションで注目を集め、〈4AD〉からリリースした前作『No Home of the Mind』は米Rolling Stoneなど各メディアから絶賛された。
Edit_Ko Ueoka.