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MOVIE
Jul 07, 2020
By THEM MAGAZINE

Go See a Movie : 映画館へ行こう!『透明人間』

リー・ワネル監督『透明人間』

 

ドラキュラやフランケンシュタイン、そして透明人間……そう聞いて想像するのは、キッズ向けとも言えるコテコテなモンスター作品であろう。

 

7/10(金)公開の『透明人間』も、そんな古典的なお題を元に制作された。しかし、現代の社会観やテクノロジーなどを大いに盛り込むことで、これまでのモンスター映画観を払拭してくれる、新機軸の“大人向け”な作品に仕上がっている。

 

 

監督を務めるオーストラリア出身のリー・ワネルは、『ソウ』シリーズで脚本を担当してきた筋金入りの“ホラー”作家。そして制作には、ジョーダン・ピール監督作品『ゲットアウト』(17)や、スパイク・リー監督作品『ブラック・クランズマン』(18)を手がけた、“ホラー界”で飛ぶ鳥を落とす勢いのジェイソン・ブラムが参加した。両者のコラボは、リー監督の前作『アップグレード』(18)に引き続いての実現である。

 

ストーリーは、富豪で天才学者の恋人エイドリアンに束縛される女性セシリアを中心に描かれる。エイドリアンの拘束から逃れ、妹や幼馴染に匿ってもらっていたセシリア。突然、財産管理人でもあるエイドリアンの兄に呼び出され、エイドリアンが自殺をしたこと、そしてその財産相続についての話を聞く。セシリアはエイドリアンが自殺したと信じることができずにいたが、以降「見えない誰か」がいたずらをするような不可解な現象が身の回りで起こるようになる。エイドリアンが透明人間となったと主張するセシリアだが、周囲からは理解が得られず、恐怖と不信の中で孤立していく……。

 

 

今作品にも、透明な人間そのものへの恐怖という、古典的な「透明人間」の要素はある。しかし注目すべきは、「透明人間」の特性を活用し、目に見えない“何か”に対する普遍的で根源的な恐怖をも浮き彫りにしている点だ。その見えない“何か”とは、日常につきまとう不安やプレッシャー、または女性の権利など、現代に潜む心理や社会問題にリンクしている。

 

しかし、それらはあくまでも散りばめられている要素であり、物語の本筋には大きく影響してこない。豊富なトピックを帯同させつつも、物語は一直線に突き進んで行く“無駄のなさ”は特筆すべきポイントだろう。ゆえに画面は弛緩することなく、常にヒリヒリとし観客を飽きさせることはない。これは前作『アップグレード』でも見られた点であり、リー監督とジェイソン・ブラムによる巧みな演出が、作品のスマートさを決定づけている。

 

ネタバレ回避のため詳しくはかけないが、設定や倫理、テクノロジー、カメラワーク、映像美など、あらゆる要素から古典に現代性を吹き込み、見事リブートさせたスタイリッシュな今作。見ざるものは、2020年のホラーを語るべからず。

 

『アップグレード』はAmazon Primeで公開されているので、『透明人間』を見に行く前にチェックするとより楽しめるだろう。

 

 

透明人間
2020年/アメリカ・オーストラリア/ 英語 /124分
TOHOシネマズほか全国上映中
toumei-ningen.jp

 

 

Leigh Whannell
リー・ワネル オーストラリア、メルボルン出身。2004年公開の『ソウ』で脚本と主演を担当。続編『ソウ2』では脚本を、『ソウ3』では脚本と出演を担当し、『ソウ2』以降の全作で製作総指揮を務めた。自身が製作を務めるホラーシリーズ『インシディアス 序章』(15)で監督デビュー。他に、監督と脚本を担当したブラムハウス/ゴールポスト・ピクチャーズ製作のSFスリラー『アップグレード』(18)がある。

 

Edit_Ko Ueoka.

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