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CULTURE
Oct 15, 2020
By MARIN KANDA

Go See a Movie : 映画館へ行こう!『82年生まれ、キム・ジヨン』

キム・ドヨン監督『82年生まれ、キム・ジヨン』

2016年、韓国で発刊されてから瞬く間に130万部を突破し、世界各国で翻訳され続けている小説『82年生まれ、キム・ジヨン』。フェミニズムを題材にした本作を手に取った多くの女性が「この物語の主人公に私を見た」と発言し話題を呼んだ。昨年、日本でも和訳された本作がキム・ドヨン監督により映画化され、先週10/9(金)から国内で公開されている。

物語の主人公であるキム・ジヨンは優しい夫、デヒョンと2歳になる愛娘のアヨンとともに、専業主婦として“平凡だけど、幸せな生活”を送っている。しかし、ある日突然ジヨンがときどき別人格へ豹変するようになったことをきっかけに、彼女たちの日常に不穏な空気が漂い始めるのだ。それを心配したデヒョンは精神科の医師に相談をするが、なかなか本人にはその症状を言い出せない。どうにかして解決策を探そうとするその姿は、まさに妻思いのできた夫そのものように見えるかもしれない。しかし、疲れた様子で洗濯物を畳むジヨンを横目に一人で晩酌、「子供を産め」という義母のプレッシャーに彼女が耐えがたさを感じていたとき、「手伝うから」と言ってのけたデヒョンは本当にいい夫なのだろうか?

1982年に韓国で生まれた女性に一番多く名付けられたというキム・ジヨン。本作では普遍を象徴するようなジヨンをはじめとした、登場人物の女性たちが多くの差別に虐げられてきたことが克明に描かれた。
能力があってもなかなか昇進できず、家庭を顧みず働けばよき母、よき妻でないというレッテルを貼られ、何歳になっても性的搾取をされる。こうした出来事に違和感を感じながら生きる彼女たちを目の当たりにし、「あのとき私は不当な扱いを受けたのだ」と女性たちは今まで自分が抱えてきた悔しさ、怒り、悲しみを見つけるのだ。もはや普通になってしまった誰かにとっては日常の中の取るに足らない出来事やひと言が、“キム・ジヨン”を抑圧してきたという事実をこの映画は突きつける。

82年生まれ、キム・ジヨン』が映画化されるにあたって多くの批判の声が上がり、出演を決めた主演のチョン・ユミ、コン・ユも反フェミニストたちから非難され、原作の小説を読んだと発言した女性アイドルは一部の男性ファンからバッシングされた。フェミニズムを描いた本作にはこうした逆風が吹き続けている。それでもなお、世界中でヒットしているのは国籍も人種も関係なしに多くの女性にとって“キム・ジヨン”が自身と重なる存在だからだろう。
しかし、本作はあくまで女性VS男性ではなく、フェミニズムとそれを虐げるものを浮き彫りにした。それらはデヒョンの母や、ジヨンの父方の祖母、専業主婦としてのジヨンを蔑む若い女性、そしてベビーシッターがなかなか見つからない状況、育休後に復帰するとデスクがない会社などいたるところに散りばめられている。この作品は女性から男性への宣戦布告でもなければ、あるいは叱咤でもない。だからこそ男性にも観てもらいたい一本なのだ。そして、この作品に何かを感じ取ったならぜひ原作の小説も手に取ってほしい。そのラストには映画とはまったく異なったエンディングが待っている。

 

 

 

Edit_MARIN KANDA.

82年生まれ、キム・ジヨン

2019/韓国/118分
「新宿ピカデリー」「WHITE CINE QUINTO」など全国で上映中。
klockworx-asia.com/kimjiyoung1982/
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Kim Do-young

キム・ドヨン 1970年生まれ。短編映画『自由演技(原題)』を通じて「第17回 ミジャンセン短編映画祭」で最優秀作品賞と観客賞を受賞。今作の『82年生まれ、キム・ジヨン』で長編映画監督としてデビュー。

Cho Nam-joo

チョ・ナムジュ 1978年生まれ。梨花女子大学社会学科を卒業。卒業後は放送作家として社会派番組を10年間担当。2011年、長編小説『耳をすませば』で「文学トンネ小説賞」に入賞して文壇デビュー。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回「今日の作家賞」を受賞。

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