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MOVIE
Jan 02, 2021
By KO UEOKA

Go See a Movie : 映画館へ行こう!『Swallow/スワロウ』

のみ込んではいけないとわかっているのに

 

やってはいけないのに、ついやってしまう。よくある話だが、今作『Swallow/スワロウ』の主人公、ハンターの場合は「異物をのみ込む」ことだった。大企業の御曹司である夫、ニューヨーク郊外の豪邸……誰もが羨む暮らしを手に入れたハンターだが、実際の生活はそうハッピーではなかった。姑のしつこいいびりに耐え、忙しくかまってくれない夫に寂しさを抱きながら、専業主婦としてひとりぼっちの時間を過ごす。妊娠が発覚し、第一子の誕生に喜びながらも、義理の両親の反応に不安と孤独を募らせていく。

そんなとき、たまたま部屋で発見したビー玉をのみ込みたいという欲望に駆られてしまう。周囲からの叱責や不満をのみ込み続けてきた主人公が、なぜか異物をのみ込み排出することで充足感を得るようになり、ついには画鋲やバッテリー、ドライバーの嚥下へとエスカレートし、身体へのダメージが深刻となってくる。お腹にはベイビーがいるのだが……というのが今作のあらすじだ。

 

妊婦に多いとされる異食症をメタファーとしながら、結婚・妊娠におけるフェミニズム、そしてハンター自身のアイデンティティへと切り込んでいく今作。監督のカーロ・ミラベラ=デイヴィスは、自身の祖母が強迫性障害により手洗いを繰り返すようになったというエピソードから脚本を思いたったという。衝撃的なストーリーはもちろんのこと、変わったところはないのになぜか不穏な空気が立ち込める、アルフレッド・ヒッチコックやヨルゴス・ランティモス監督を彷彿とさせる美しい絵作りにも注目したい。特に引きのカメラワークは独特で、写真家グレゴリー・クリュードソンを想起させる。主演のみならず製作総指揮を務めたヘイリー・ベネットの迫真の演技にも脱帽。2021年一発目の衝撃は、この映画で間違いない。

 

Swallow/スワロウ

2019年/アメリカ・フランス/英語/95 分
TERM 2021年1月1日〜
SCREEN 新宿バルト9ほか全国ロードショー
URL klockworx-v.com/swallow

Carlo Mirabella-Davis

カーロ・ミラベラ=デイヴィス ニューヨーク生まれ。北部のイースト・メレディスで育つ。「NYUティッシュ芸術大学院」で映画制作の学士号と修士号を取得。2009年、初の短編映画『Knife Point』がサンダンス映画祭でプレミア上映された。今作『スワロウ』が長編デビュー作となる。

 

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Edit_Ko Ueoka.

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