Them magazine

SHARE
MOVIE
Jan 13, 2022
By KO UEOKA

Go See a Movie : 映画館へ行こう! トム・マッカーシー『スティルウォーター』

今は景色が違って見えるんだ

 

2007年、イタリアに留学していたアメリカ人学生アマンダ・ノックスがルームメイトを殺害したとして逮捕、告発された事件があった。「人が生んだ悲劇を深く掘り下げた映画を作りたい」と考えていた監督トム・マッカーシーは、その興味を十二分に惹かれ、早速事件を下敷きにした脚本に取り掛かる。しかしすんなりと理想には届かず、他の脚本家の力添えを得ながら10年以上もの時を費やして構想し、ついに完成させたのが今作『スティルウォーター』だ。

 

 

主な舞台はフランス・マルセイユ。留学中にガールフレンドを殺したとして罪に問われ囚役している娘・アリソンを訪ねる主人公のビルは、無罪を訴える彼女から新事実を聞き真犯人捜しに奔走する。しかし言葉の壁や法制度などにつまずいてうまくいかない中、手を差し伸べてくれたシングルマザーの親子と新たな関係を築き始めた。その後、思わぬ形で事件の証拠をつかんだビルだが、その真実は彼の人生を破壊するかもしれない苦渋の決断を突きつける。

 

主演のマット・デイモンは他のどの映画でも良い演技をしているが、不器用なアメリカ男性として配役された今作では特に名演が光る。「究極的にはアメリカ、そして世界におけるアメリカの立ち位置を示している」とトム・マッカーシーは語る。「答えを求めるより疑問を投げかけているのです。今アメリカが分断を乗り越えて前に進むためには、そういうところから始めなければならないのかもしれません」。巨匠クリント・イーストウッドを思わせる、グレードの高いどっしりとしたストーリーテリングと映像は、静かに、しかし饒舌にこの問いを突きつけている。

『スティルウォーター』

2021年/アメリカ/英語・フランス語/139分
TERM 1月14日〜
SCREEN TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
URL universalpictures.jp/micro/stillwater

TOM MCCARTHY

トム・マッカーシー 1966年生まれ、アメリカ出身。長編初監督作となる『The Station Agent(原題)』(03・未)が英国アカデミー賞最優秀オリジナル脚本賞を受賞。2016年、共同で脚本・監督を務めた映画『スポットライト 世紀のスクープ』がアカデミー賞の監督賞を含む計6つの部門にノミネートされ、作品賞と脚本賞を受賞。その他監督作は、『扉をたたく人』(07)、『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』(11)など。俳優としても活躍し、『ミート・ザ・ペアレンツ』(00)、『グッドナイト&グッドラック』(05)などに出演。

 

© 2021 Focus Features, LLC.

Text_Ko Ueoka.

SHARE