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CULTURE
Dec 25, 2024
By THEM MAGAZINE

GO THERE いま行きたいニューショップ -2025 PRE SPRING- / MA STORE

MA STORE

松陰神社前駅から発信する“現代民藝”

 

東急世田谷線という路面電車に揺られて行く松陰神社前駅。駅を降りるとすぐそこには、人々が行き交う松陰神社通り商店街が広がる。線路を挟んでまっすぐ延びるこの通りには、精米店、おでん屋、写真館、駄菓子屋といった昔ながらの店が多くあり、どこか懐かしさを感じる。その半面、モダンな古書店や雑貨屋、カフェなども混在する心地よい街だ。「この場所で街に根付いた店をやりたい」。そう語る「MA STORE(エムエーストア)」のオーナー松尾翼氏は、2015年にファッションレーベル「Ithe」をデザイナーとともに創業し、かつて民藝的なものとして存在してきたプロダクトを現代的に解釈するという取り組みを行ってきた。そんな松尾氏の思いを発信する場としてオープンした「MA STORE」は、実に自然な流れだったといえる。ここでは、日本の伝統的な美意識とコンテンポラリーデザインを組み合わせることで生まれた作品を“現代民藝”と定義し、それらに基づく家具やインテリア、食器などを日本各地から取り揃える。また「Ithe」初の直営店としての機能も兼ね備える。「柳宗悦さんによって民藝という言葉が生まれてからおよそ100年が経過しても、民藝の在り方が更新されていないことに違和感を覚えていた」という松尾氏。店内には、愛媛県砥部町で作られている伝統的な陶磁器「砥部焼」をミニマムなデザインへと昇華した「白青」や、長崎県にある精密板金加工メーカー、日本べネックスと協業したブックエンドなどを展開する「イータル」、木工作家の松澤諒氏による無垢材で制作した石やオブジェなどが集結する。「『デザインとは突き詰めると暮らしの中でどれだけ透明になるものを作れるかという仕事だと思う』という言葉が心に残っている。本当の意味で人に使われる便利な道具とは、なんの意識もなくあたかも存在していないかのように扱われる。そんな現代のライフスタイルに寄り添う作品を提案していきたい」。かつての職人たちが残した伝統が今を生きる職人へと受け継がれ、その作品がこの店を通じて後世に残り続けていくのだと確信した。松尾氏によって選び抜かれた作品を実際に見て、触れることで、今の暮らしを見つめもっと丁寧に生きたくなる。

路面電車の音が優しく響く店内は、築50年ほどのアパートが改装された一室。梁が剥き出しになった屋根と真っ白で無機質な壁が生み出すコントラストは、まさに現代民藝を体現している。
松陰神社前駅から祖師ヶ谷大蔵駅に移転オープンした古書店「nostos books」が選書したアートブックを紹介するイベントを開催。松尾氏は、今後もさまざまなブランドや作家とともにイベントを行っていきたいと話す。
左上から「白青」による「平皿」と「くらわんか碗」、スイス人工業デザイナーのカルロ・クロパスによる食事や食習慣に注目した《SARO》のカトラリーシリーズ、埼玉県に工房を持つ木工作家の松澤諒氏による木皿やオブジェ。
「人は無意識のうちに間を感じながら生きていると思う」と語る松尾氏。店名のMA(間)は、日本の伝統的な美意識としての間、作り手と買い手の間、床の間といった部屋の意味などに由来している。
富山県を拠点とするアップサイクルプロジェクト「Yes」が「MA STORE」のためにセレクトした古物などが揃う。「できるだけ価値や背景の明らかでない、直感で面白いと感じたものを揃えている」と松尾氏。

SHOP INFO

ADDRESS_東京都世田谷区世田谷4-13-18 クミハウス2F

SHOP HOURS_13:00〜19:00(水曜定休、不定休)

INSTAGRAM_@mastore.official

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