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MUSIC
Jun 21, 2022
By THEM MAGAZINE

《プラダ》2023年春夏メンズウエア コレクション – ソニックユース by Them magazine

実験と進化を繰り返して創られたソニックユースの音楽ストーリー

《プラダ(PRADA)》の共同クリエイティブ・ディレクターのミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは、イタリア・ミラノでSS23メンズウエアコレクションを開催した。会場ではソニックユースのアルバム『Evol』から「Shadow of a Doubt」、『Dirty』から「Drunken Butterfly」、「Wish Fulfilment」、「Youth Against Fascism」の4曲が響く。

ニルヴァーナの『Nevermind』と並びグランジの傑作と称される『Dirty』の曲が大半を占める中、インディーズ時代のアルバム『Evol』の曲が最初に組み込まれたプレイリストからは、バンドが歩んできたストーリーへのリスペクトを感じる。

そこで今回、独自目線でソニックユースの「ストーリー」に注目して、4曲のプレイリストを作ってみた。

 

1. Starpower/Evol

1曲目は3thアルバム『Evol』の収録曲「Starpower」。それまでノー・ウェーヴの影響を強く受けたバンドに過ぎなかったバンドから、ポストパンク〜ノイズをベースに抑揚とリズムが加わったこのアルバム。そして、アルバムの中で最も魅力的なフックとパワーを持つトラックが「Starpower」だ。ソニックユースの誕生を印象付けたこのアルバムは90年代のオルタナティヴ〜グランジを代表する『Goo』や『Dirty』の根幹にもなり、バンドの始まりとも言える作品である。

2. Teen Age Riot/Daydream Nation

次は、6枚目にしてインディーズ時代最後のアルバム『Daydream Nation』から「Teen Age Riot」を選曲。『Evol』で誕生したソニックユースの音をさらに深めて、疾走感を足した完成形とも言えるアルバム。ソニックユース一番の名作と言われるこの作品の中でも「Teen Age Riot」はインディーズ時代のソニックユースを構成した要素の全てが凝縮されたトラックだ。

3. Tunic(Song For Karen)/Goo

メジャー移籍後に初めてリリースしたアルバムであり、90年代のオルタナティブロックの先駆けとなった『Goo』。メジャーデビュー作にも関わらず、新しいノイズを求めた実験性はパンクの中に気怠さを感じさせる「Tunic(Song For Karen)」という「元祖グランジ」とも言える曲を生み出した。振り返ると、後に続くニルヴァーナを中心にメジャーとアンダーグランドが完全に入れ替わったグランジムーブメントの伏線とも捉えることができるだろう。

4. Winner’s Blues/Experimental Jet Set, Trash and No Star

『Goo』の後に『Dirty』をリリースし、グランジ〜オルタナの盛り上がりの中心にいたソニックユース。ここでバンドは盛り上がりを見せるグランジシーンに別れを告げるかのように、ロックのジャンルにとらわれない進化を8thアルバム『Experimental Jet Set, Trash and No Star』で見せた。ダニエル・ジョンストンを思い起こすような「Winner’s Blues」や「Bull In The Heather」の展開の読めない奇抜な曲は2020年代の音楽シーンともリンクする。

デビュー作が爆発的にヒットするようなバンドではなかったソニックユース。インディーズやメジャーに関係なく、ノイズを基軸に置いた実験と進化を続けてきた。だからこそ、バンドには長い歴史の中で生まれたストーリーがさまざまな見え方で存在する。みなさんはソニックユースにどんなストーリーを感じるだろうか。

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