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MUSIC
Sep 23, 2020
By THEM MAGAZINE

The LATEST MUSIC -今週聴きたい新譜- SUFJAN STEVENS | The Ascension

あなたがアメリカにしたことを僕にしてはいけない

7月初頭、急遽シングル「アメリカ」を発表し、長きにわたる沈黙を破ったスフィアン・スティーヴンス。かつてアメリカ50州それぞれをコンセプトにしたアルバムを制作する「50州プロジェクト」(The Fifty States Project)を宣言し、アメリカのアイデンティティを掘り下げてきた(プロジェクトは『ミシガン』『イリノイ』の2作のアルバムで頓挫したが)。だからこそ、「アメリカ」というタイトルが持つ重みは違う。1230秒という長尺、はりつめる緊張、世紀末感漂うオーケストラ。大統領選やブラック・ライヴス・マターで揺れ、歴史の髄から問われている現状から、“アメリカ”に対する警笛はまさしくタイムリーな曲にも思えるが、実は両親をテーマとした前作『キャリー・アンド・ローウェル』制作中の6年前にすでに書かれていたようだ。本人曰く「なんだか意地の悪い曲」と感じ、前作には収録されず棚にあげられたままだったが、後に予言的で真実を示す曲だと気がついたという。そうして「アメリカ」をアルバムのメインテーマとし、『ジ・アセンション』の残りの曲を書きおろし、ドラムマシンとシンセサイザーを用いながら、自らの手で作曲した。これまでも聖書にまつわる引用を多くしてきたスフィアンだから、アルバムタイトルはキリストの昇天を意味するのだろう。「アメリカ」はアルバムの最後に配置され、スフィアンの主張が繰り返し強く響く。「あなたがアメリカにしたことを僕にしてはいけない。あなたが自分自身に対してすることを僕にはしないで」。

 

Edit_Ko Ueoka.

ジ・アセンション

ARTIST スフィアン・スティーヴンス
RELEASE DATE 9月25日
LABEL BIG NOTHING / ULTRA-VYBE

Sufjan Stevens

スフィアン・スティーヴンス ミシガン州出身、ニューヨーク在住のシンガー・ソングライター兼マルチ・インストゥルメンタリスト。『ミシガン』(03)と『セヴン・スワンズ』(04)で注目を集め、続く『イリノイ』(05)が有力メディアから絶賛を浴び、世界的な大成功を収めた。今作『ジ・アセンション』が8作目のアルバムとなる。

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