Sep 01, 2026
By THEM MAGAZINE
TOPコレクション 明日の食卓
「食」から考える、食べることと生きること
東京都写真美術館では「TOPコレクション 明日の食卓」が開催中。会期は9月21日まで。収蔵する約3万9000点の写真・映像作品から、「食」をテーマに作品を紹介する。日々の食事は身体をつくるだけでなく、記憶や人とのつながり、社会や環境とも深く結びついている。本展では「食」を手がかりに、私たちにとって「食べること」、そして「生きること」とは何かを考える。
あのとき、あの食卓で
第1室では、 家族や自分自身の食卓の記憶をテーマに、島尾伸三、原美樹子、野口里佳、潮田登久子、川内倫子5名の作家の作品を紹介する。「日常において、ふと思い出す食の風景とはどのようなものだろうか」をテーマにした第一室。「食」は記憶としても積み重なりながら、やがて自分たちの血肉となって現在の身体をかたちづくっていく。島尾伸三の『生活 1980–85』シリーズには、 同じく写真家で妻である潮田登久子と娘のマホとともに暮らした洋館での家族の日常が収められている。潮田の代表作『冷蔵庫』は、島尾が拾ってきたスウェーデン製の大きな中古冷蔵庫をきっかけに生まれた作品だという。夫婦である島尾と潮田の作品を同室に展示し、それぞれが見つめた家族の風景を紹介している。特定の家族の記録でありながら、どこか普遍的な親密さや懐かしさのある作品は、 鑑賞者の混じり気のない記憶を呼び起こす。第1室の奥に設けられた上映スペースでは、川内倫子が約13年にわたり家族を記録した映像作品『Cui Cui』を上映している。
食と地域のあいだに
第2室のテーマは「食と地域」。街には、レストランやファストフード店など、食事をする場所が数多く存在する。かつて「ヱビスビール」の工場があった恵比寿も、食と地域との結びつきを感じさせる土地だ。他にも、魚を獲るため海へ出たり、豊作や豊漁を願って作物を奉納したりと、食は古くから土地と密接に結びついてきた。そうした食と地域に目を向けた作家たち、奈良原一高、山田實、宮本隆司、竹谷出の作品を通して、その関係を見つめ直す。奈良原一高の『ポケット東京』は、病との闘いを経て再びカメラを手にした奈良原が、東京の街を写した作品群。都市と生活の風景から、土地と人との関係を浮かび上がらせる。
環境のなかで
第3室では、人間の営みと自然環境との関わりをテーマに、宮崎学、土田ヒロミ、楢橋朝子、岩井優の作品を紹介する。米の価格高騰や住宅地でのクマの出没など、食や暮らしをめぐる問題は、私たちの日常とも無関係ではない。また、福島第一原子力発電所事故では、食の風評被害など深刻な問題も生じた。自然を見つめてきた写真家たちの作品を通して、私たちの食卓の向こう側にある環境と、そこで生きる人間の営みについて考える。
明日の食卓
第4室では、これからの「食」、すなわち未来の食のあり方について考える。高齢化や孤食、一人暮らしの増加など、私たちを取り巻く食の環境は大きく変化している。折元立身の『おばあさんのランチ』シリーズでは、日本・福島県二本松市の龍泉寺で地域の高齢者と食卓を囲む様子や、ポルトガルのエヴォラで500人のおばあさんたちを招き、踊り、歌い、食卓を囲む様子が記録されている。誰かと食卓を囲むとは、どういうことなのか。折元の作品を通して、食をともにする喜びや他者とのつながりから、「共に生きる」ことの意味をあらためて考える。
家族との記憶、土地とのつながり、自然環境との関わり、そして誰かと食卓を囲むこと。4つの展示室をめぐることで、「食」は単に身体を満たすものではなく、私たちの記憶や暮らし、社会、そして他者との関係を映し出すものだと気づかされる。展示室を出たあと、頭に浮かぶのは、どんな食べ物だろう。どんな人と囲んだ、どんな食卓だろう。本展は、あたりまえのように繰り返している日々の「食」を見つめ直し、自分自身の現在とこれからの暮らしについて考えるきっかけを与えてくれる。
TOPコレクション 明日の食卓
2026年9月21日(月・祝)まで開催
開館時間:10:00-18:00(木・金曜日は 20:00 まで)※入館は閉館 30 分前まで
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日は休館)
観覧料:一般 700円(560円)、学生 560円(440円)、高校生・65 歳以上 350円(280円)
会 場:東京都写真美術館3階展示室
住所:東京都目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
WEB:www.topmuseum.jp
主 催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
後 援:J-WAVE 81.3FM