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FASHION
May 28, 2020
By TORU UKON (Editor in Chief)

「もう、これ以上買わんでよし! 〜断捨離断念のマイ・ワードローブ〜」Vol.004_ニューバランスのスニーカー

ニューバランスが好きだ。

高校卒業と同時に《ナイキ》の襲来をまともに受けた世代にとって、次なる黒船は《ニューバランス》だった。

現在40才より下の世代の中には「スニーカーになんで“N”?」って敬遠する人もいると聞くが、僕らの世代はこの“N”が衝撃だった。あのラルフ・ローレンさんがプライベートで履いている、という情報も《ニューバランス》の“偉さ”を物語っていた。

今でも《ニューバランス》が好きな理由は3点。

まず、色。あのグレーが好きだ。シリーズによって実に様々なグレーが採用されているが、最初に《ニューバランス》を見たとき、まず驚いたのが、グレーの靴だった。それまでにグレーの靴など見たことがない。靴は黒か白、たまにネイビーが当たり前だった時代だ。それ以降、グレーの靴が意外といろんなボトムに合わせやすいことを知った。

次に、歩きやすさ。《ニューバランス》が日本に襲来したときの謳い文句が「全米で人気と信頼の専門誌『ランナーズワールド』でランキング1位を獲得したポテンシャル」だったから、今日まで、このブランドの機能性を疑ったことはない。

そして最後は、スーツにも合わせやすい、ということ。これは最近改めて感じる。「スタンスミス」のようなシンプルなスニーカーしかスーツには合わない、と信じ込んでいたが、《ニューバランス》は見事にその思い込みを覆してくれた。

あ、MADE IN USAというのは、あえてここでは主張しないでおきます。

そこで、僕がこれまで履いてきた《ニューバランス》を整理してみようと思います。

M1300 JP

 

1985年に誕生したフラッグシップモデルで、ラルフ・ローレンさんも履いたと言われる「名靴」です。発売価格が3万9000円と、当時では驚くような価格。しかし、渋カジの定番アイテムとして、スポーツ店よりもセレクトショップで大ヒット。「スティールブルー」と言われる青みがかったグレーが印象的。僕は2010年に日本で復刻したモデルを『フイナム』編集部の当時の編集長のコネで購入させていただきました。あれから10年。まだ加水分解せずに現役を保っている。さらに2度復刻され(なんでも5年ごとに復刻するらしい)、2020年2月にはホーウィン社のレザーが採用されたようだ。同じ1300というシリーズでも「M1300CL」というモデルがあるが、あれはどうしたものか。20世紀までは復刻モデルはどうしてもオリジナルよりもかなり格下に見られていた。しかし、最近はそんな見方は薄らいだようだ。むしろ、改良して進化していると見たほうがよいだろう。

 

M998

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ここ数年で最もよく履いた《ニューバランス》。これも二足目ですが、かなり年季が入っています。このブランドが誇る反発性能の高いABZORBソール初めて採用したモデル。スリムなシルエットに高さのあるソールで、テーパードでクロップ丈のボトムと相性がよかった。ちょっとわかりづらいが外羽式というのも特徴的。グレーのグラデーションも上品。コラボレーション・モデルも多かったです。

 

M997

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かつてM996のライトグレーに対して、チャコールグレーのM995が存在したように、こちらのM997は998をさらにダークにした印象。最近はこれを履く機会が多いです。かつてのフラッグシップモデルだったM1400(2018年に製造中止)の後継モデルとされ、ENCAP、C-CAPのソールを採用。やはり細身のシルエットだが、インソールがツルツルしているせいか、ソックスとの相性で、たまに靴の中で足が滑ります。

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こちらは同じ997でもブラウンスエード。かなり印象が変わります。

これは秋冬に活躍してくれるスニーカーで、茶系のコーディネイトに使っています。春夏はあまり登場しません。アッパーのドットがちょっと大きいのが玉に傷。ただ、茶×黒というコンビはスニーカーの中では珍しく、とても重宝しています。シューレースは黒もついてきましたが、僕は茶を選択しました。

 

M1700

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1999年に誕生し、2016年に復刻したモデル。5代目のフラッグシップモデルと言われました。こちらも価格は¥36,000と高価です。しかし、青山あたりではこれを履いている人をよく見かけます。《ニューバランス》の中にあってはトゥが丸みを帯びてぽっちゃりとした印象。最近のワイドパンツにも相性良し。僕は春夏のネイビーのスーツに合わせようと購入しました。M998に採用されたABZORBがソール全体にまで拡張されたので、かなり歩きやすい。これをはき始めたら、スーツに革靴がかなり抵抗感を増してきました。

 

M1500

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自分の中では、数少ないブラックレザーのスニーカー。こちらは英国製。《ニューバランス》のイギリス・メイドはソールが硬めな印象です。ただ、なぜかレザーの使用率が高いのもこのモデルの特徴。スーツに1700が楽チンなことを覚えたので、秋冬用の黒っぽいスーツに合わせるために購入しました。これでますますコードバンをはく機会が減りそう。1500は入荷してはすぐなくなり、ソールドアウトが続いたかと思うと、突然入荷したりと、買うタイミングが難しい一足。こちらもカラーバリエーションが多く、中でもこの黒が一番人気のようです。確かにドレスシューズのような面構え。

 

M576

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576は英国製が多いけれど、これは米国製。俗にチョコレートレザーと呼ばれるモデル。これも茶系のスーツはもちろんグレーのスーツに合わせやすかったのですが、最近はカジュアルユースが多いです。1988年に誕生し、そのときは英国製のモデルをすぐに購入したのですが、ちょっとサイズが合わず、手放しました。丸みを帯びたシルエットに硬めのソール。レザーアッパーということもあり、ソフトなはき心地とは言いづらいモデルです。576にはタンにユニオンジャックが描かれる物もありますが、あれはあまり好きではありません。ちなみに574はこの576の廉価版と言われています。

 

M992

 

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コロナの緊急事態宣言解除後に「ビームスプラス」さんから予約入荷の連絡を受けて購入した、最新の(購入ホカホカ)モデル。オリジナルは2006年に誕生し、かのスティーブ・ジョブスがM991とともに愛用したモデルとしても知られています。それが理由でファンも多いとか(自分は違いますが)。これは夏場に活躍が期待されます。オフホワイトやグレーのショーツが多いので。最近の990シリーズは“N”マークが大きく細いので、あまり好きではありません。

 

X-90

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2018年にリリースされたx-90。1990年代に《ニューバランス》の名を世界に轟かせた多くの900番台シリーズからインスパイアされたニューモデル。のっぺりとしたアッパーの今っぽいデザインやアジア製ということで、最初はあまり興味はなかったのですが、「ビームスプラス」さんの「ネイビーブレザーにグレーフランネルのパンツにコーディネイトしたい」という絶妙なセールストークにハマり、購入。これがはきやすく、軽く、コーディネイトもしやすいという優れもの。ネイビースエードが微妙な色合いですが、グレーのウールパンツには本当にベストマッチ。他のショップでも違った色を別注しているようで、好みのカラーリングをチョイスできます。

 

M996

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自分の中では、最も長くはいてきた《ニューバランス》。先日4代目が2度目の加水分解を起こし、タンもヘタってしまい、泣く泣く墓場へ葬られました。グレーのグラデーションが好きでしたが、4代目はメッシュ部分に少しグリーンかかった色味を感じ、だんだんはく機会が減っていきました。M995も好きだったけど、その後復刻されたモデルはどうもオリジナルと印象が違って見え、履いていません。997や998を知った今、“N”マークの大きさにもちょっと抵抗を感じます。

 

M2000

361739001.1-1

このモデルもかなり前に墓場に入ってしまいました。

1000番台からフラッグシップモデルとして継承された2000番台で、当時はかなりのハイテク・スニーカーとして人気でした。これは「ディストリクト ユナイテッド・アローズ」で購入。そういえば、栗野宏文さんがよくジャケット&パンツスタイルに《ニューバランス》を合わせていて、僕もすごく影響されました。このモデルはちょっとソールが硬く、機能性に走りすぎた傾向があったように思えますが、グレーとネイビーのコントラストはとてもきれいで新しい時代を感じたものでした。

1990年代、M1400のグリーンスエードがすごく好きで、買いたかったのですが、当時は買えず、いつの間にやら熱が冷めていました。2010年に「J.クルー」が復刻した時は、再度気持ちも昂ったのですが、やはりスルー。今見てもきれいだな、とは思うのですが、あのマウンテングリーンはコーディネイトするのが、難しいのかもしれません。1400は1300の後継として開発に9年もかかった、しかも先に1500が発売する始末、というストーリーも《ニューバランス》フリークをくすぐる名靴なのですが。とうとう、それもはかずに自分の「NBキャリア」に幕を引きそうです。とは言え、1400も含めて、また新たな魅力的なモデルや素敵な復刻が目の前に現れたら、自戒の念も霧散しそうですが。

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