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FASHION
Apr 15, 2021
By JUNICHI ARAI

Because I love fashion so much!!

朝家を出るときまでは覚えていた公共料金の支払いは平気で一週間忘れるのに、10年前に雑誌で読んだデザイナーインタビューの出所は今でもだいたい即答できる。少しは仕事に役立っているからよいけど、それだけ詳細に覚えているのに、捨てられないからタチが悪い。昨年のステイホーム期間にようやく部屋を圧迫していた雑誌の山をサマリーポケットに預けたら、月々の保管量が大変なことになってしまった。さらに実家から、部屋に置いてある雑誌の山をいい加減どうにかしろというLINEが数ヶ月おきに届く。

「いつか参考資料になるかもしれないから」とくるかもわからない未来のために、大量の雑誌を寺田倉庫に眠らせてる一方で、手元に置いておきたいものがいくつかあります。そのひとつがこの『Fashion News PERFECT』。

ウェブ上でのコレクション配信がまだメジャーじゃないころ、最新コレクションを網羅していた『Fashion News』はコレクション詳報以外にも、トレンドや特定のブランドにフィーチャーした特別号を出していました。この号ではマーク・ジェイコブス特集と、ファッション20年史。バイヤーやアタッシュ・ド・プレスの人たちの思い出の一着をもとに、過去20年のファッションを切り取るという企画。それまでストリートスナップや「今季のマストバイ!」といった記事ばかり読んでいた自分にとって、初めて着る以外のファッションの面白さを学んだ気がしました。はじめて《ペリー・エリス》のグランジコレクションを見て、トム・フォードという人が《グッチ》をやっていたことを知る。その数ヶ月後には掲載されていたユルゲン・テラーの写真集を買いました。学生時代、銀色のライダースジャケットを着て「消防士みたい」となじられたことでファッションの仕事を諦めていた自分が「服を作ったり、スタイリングができないとしても、文字や写真でファッションと関わることはできるかも」と勘違いしたのがこの仕事に興味をもったきっかけ。学校サボって新宿紀伊國屋に行ってよかった……。

 

前置きがだいぶ長くなりましたが、こんな理由でファッションにまつわる読み物が大好きです。今ではNoteYouTubeInstagramで誰もがファッションを語ることができる時代。実際に愛用しているアイテムを忖度なくレビューしている動画やSNSも面白いけど、それだけではない、着ること以上の面白さがファッションにはあって、それを真摯に突きつめてきたプロフェッショナルな人たちには言いたいことがたくさんあるはずだ、と思ったのが特集に至った理由です。弊誌はビジュアル中心の雑誌ですが、今回はクリエイターと同じように、文字や言葉を用いて何がかっこよくて、何がかっこ悪いかを伝えようとする人たちにフィーチャーしました。

誌面では、世界最高峰のファッションジャーナリストであるスージー・メンケスと海外の舌鋒鋭い評論家たち、そして日本におけるファッションジャーナリズムを追求する方々に語ってもらいました。当時『Fashion News』の編集長だった『WWD JAPAN』の向千鶴さんに、今回の特集で協力いただいたことは個人的にも感慨深いできごとです。

 

ちょっとこっぱずかしいタイトルはその『Fashion News』の表紙から。今回の特集を象徴する、スージー・メンケスが何十年にもわたって最前線にいるのは「ファッションが好きだから」というシンプルな理由。インタビュアーの藪野さんから送られてきた原稿を読んでその秘訣に納得しました。特集に際して、藪野さんにも多大なるお力添えをいただいたことにも感謝しています。

おこがましいけど、読んでくれた方々に、いつもと違ったファッションの面白さが伝われば嬉しいです。最新号は明日23日発売です。よろしくお願いします。

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