Them magazine

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ART
Apr 18, 2020
By THEM MAGAZINE

Pictures for Elmhurst

今、話題の「Pictures for Elmhurst」。
picturesforelmhurst.com


コロナの影響でいろいろ大変なことになっているNYのエルムハースト病院を支援しようと立ち上げられた企画で、「作家の写真プリントを安価で買う、それが支援になる」というもの。
会社ではなく有志の人々による企画のようで、プリントの概要は以下の通り。

 

・値段は一律150$
・オープン・エディション(期間中は枚数制限なく販売、期間以降は再販されない)、サインなし
・一律8.5×11インチのプリント(ほぼA4サイズ)
・ブルックリンのプリンターGriffin Editionsが制作

 

 

ポール・グラハムやジャック・ピアソンなど御所な写真家から、チャド・ムーアやダニエル・シアのような若手、ビビ・ボスウィック(マーク・ボスウィックの娘)やタイラー・ミッチェルらファッション関係な写真家など、豪華出品者が集って話題となった。が、会期中盤には突如としてアレック・ソスやデヴィット・リンチ、(まさかの)トーマス・デマンド、日本からは川内倫子らも登場(すでに購入していた人は、「マジかよ」と思っているに違いない笑)。今では総勢187名という、大規模なプリント・セールとなっている。4月10日よりはじまり、20日(月)まで開催中。

 

オープンエディションのナンバリングはなし、サインもなし、プリント方式も不明。アート市場的な価値付けは徹底して避けられているようで、それによって短縮された工程がコストカットを生み(一社で一括して全発注をプリント→発送だけになる?)、相対的に寄付額も大きくなると。結果として、売値$150から$15のプリンティング費用を差し引いた額≒$135、全額寄付されるという。サインなし(写真家のお墨付きなし)だが、しっかりしたプリンターなので、プリンティングの質も家で鑑賞するには十分なクオリティになるはず。寄付にフォーカスした、シンプルな設計のようです。

 

16日の時点で4000万円近い額を集めているもようで、この週末のラストスパートでもっと伸びそう。日本への配送料も$15とそこまで高くないし、気軽に好きな作家の写真を買えるチャンス、逃すべからず。しかもチャリティとなれば、なんとなく嬉しい。いくつ買っても、「チャリティだから」という大義名分がある(笑)。

©Thomas Demand

このような企画、ぜひ日本でもあったらいいですよね。よく言われるのは、日本には個人・一般家庭レベルで「アート作品を買って部屋の壁にかける」習慣がないということ。比較的、日本は部屋が小さいということもあるけれど、身近にアートがあるという感覚が一般的でないんですよね。しかしチャリティとして、安価なエントリープライスで作家のプリントが買えるという機会は、日本のアート市場のポテンシャルを開拓するという効果もあるかと思います。いや、本当は、日本の作家さんたちの作品に手が届くという機会を、僕自身が享受したいだけ……。下心あってすみません。でも対価を得ようとする下心こそ、チャリティのキモなのですから……ゴニョゴニョ。

 

 

僕が欲しいのは、大ファンなリネケ・ダイクストラ。ピーター・サザーランドの作品も好きでした。でも数日前までやってたマグナムのチャリティ・セールで、念願のアントワン・ダガタとアレックス・ウェブのプリントに飛びついてしまったので、財布は空のままですが……。

 

 

上岡

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