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FASHION
Jun 12, 2020
By TORU UKON (Editor in Chief)

Tシャツを巡る旅 最終章のその後

Tシャツを巡る旅 最終章のその後

歓喜と失意の《ジョッキー》「Bo’sun」シャツを二枚同時に入手してから、数日後。

またまた、追加報告があります。

自分の見当違いが再び発覚しました。

やっとの思いで手にした《ジョッキー》のハイネックTシャツ。

これが「Bo’sun」というモデル名だとわかったことから、僕の「最高のTシャツを探す旅」」の事態は急展開。一日千秋の思いで着ること夢見ていたTシャツが実はMADE IN USAではなく、日本のライセンス商品だと知ったときの愕然。

そんなことを前回のブログで書きました。

 

 

最も僕が落胆したのは、生産国もさることながら、素材でした。MADE IN USAはコットン100%ではないことを知ったことが原因でした。

ところが!

これも、早とちり。もう、なんたる失態。

パッケージをよく見ると、ボディは「100% combed cotton」。「74% combed cotton、26% nylon」というのはネック部分だったのです。

 

 

やれやれ。

MADE IN USAも、日本ライセンス商品も「綿100%」だったんです。

ただ、MADE IN USAのほうには丁寧に、いや、堂々と「74% combed cotton、26% nylon」の表示が記されていた。これは僕が推測するに、このTシャツを着たことがある人なら誰もが驚く「頑として伸びきらないリブのネック」の理由なのでは? コットンとナイロンの黄金比率が産む革命的なネック。おそらく、日本ライセンス商品も同じネックが使用されていたと思われます。だって、高校時代、僕らが着た《ジョッキー》のハイネックは、本当にピタッと首元にフィットしていたのだから。あれは綿100じゃ無理でしょう。26%ナイロンがなせる技だったんでしょう。そうに違いありません。

 

 

上の日本ライセンス商品には、「74% combed cotton、26% nylon」の表記がありません。

 

僕は、この《ジョッキー》のハイネックがトラウマとなって、何歳になってもリブの細い、ダラ〜ンと伸びきったネックがどうしても馴染めませんでした。《ジョッキー》ほどではなくても、《オニータ》や《ヘインズ》のビーフィーが好きだった理由はリブが太く、ネックが立ち気味だったから。そして、どんなに洗濯しても高校生のころ着た《ジョッキー》みたいにネックが伸びきらないTシャツを結局見つけられなかったのは、《ジョッキー》がこの「74% combed cotton、26% nylon」のネック、つまりは「Bo’sun」ネックを、何らかの方法で他社に使用させなかったから、ではないでしょうか。

 

いや、ただ単に時代が、若者たちの好みが、ぴったりフィットしたネックから、ダラ〜ンと伸びきったネックへと変わってきたとも言えるかもしれません。「Bo’sun」ネックは時代遅れの売れないデザイン、と見なされてきたとも考えられます。実際、日本のライセンシーもその後、「Bo’sun」シャツの生産はやめてしまったのだから。

 

古着屋さんでも《ジョッキー》の「Bo’sun」シャツを見つけることはできなかった。それもやはり、このネックのせいでしょう。ピッタリと首にフィットするネックはどうしても汗で黄ばみやすい。そのくせ、ネックは丈夫だが、ボディが洗濯に耐えられず先に穴が開く。逆ならまだしも、そんな黄色いタフなネックに穴あきボディじゃ、ヴィンテージ・バイヤーさんも敬遠するでしょう。ましてや、乾燥機にかけた日にゃ、あのネックの縮率は相当なものでしょう。原宿の「フェイクα」さんでも、たくさんのデッドストックのTシャツ(《ジョッキー》も含めて)は見てきたけど、「Bo’sun」シャツはほとんど見たことがない、と仰っていました。

 

《ジョッキー》のハイネックTシャツを探し続けて40年以上、ようやく納得できたような気がします。

 

それにしても、『アメリカン・グラフィティ』のリチャード・ドレイファスから始まった「Tシャツを巡る旅」〜いや《ジョッキー》のハイネックTを巡る旅、と言ってもいいでしょう〜長かった。まだ、完全に終わりを迎えていませんが、誰か、どこかのブランドが、このTシャツを復刻して、「その後」を語らせてほしいです。

 

 

ちなみに、このとき、彼が履いていたネイビーのキャンバス・シューズも《トップサイダー》なのか、《コンバース》の「スキッドグリップ」か、不明です。僕はそのどちらでもない、と思っているのですが、ではどこのブランドなのかは、謎のまま。次はこの疑問を府に落とさなければなりません。

 

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