Them magazine

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FASHION
May 17, 2023
By YATA CHIHIRO

アヴァンギャルドからテック系ウエアまで。韓国にルーツを持つブランド4選。

まだまだある、ハイセンスな韓国系ブランド。

 

 

Them magazine6月号は、韓国特集。今や、エンタメ、ファッション、アート、音楽、美容などの韓国のカルチャーは、何の違和感も無く私たちの生活に溶け込んでいる。満を持して刊行された韓国特集では、チョ•ギソクの《クシコック(KUSIKOHC)》や《カンヒョク(KANGHYUK)》、《ポストアーカイヴファクション(POST ARCHIVE FACTION)》などをインタビューした。また、今年春にはファッションプラットフォーム「MUSINSA」が日本上陸を果たすなど、韓国のブランドには随分とアクセスしやすくなったのだが、気鋭のブランドは今も続々と生まれている。アジアの中でも韓国が特にエネルギッシュだと言われる所以を、ファッションから読み解きたい。

 

 

 

 

GOOMHEO

ロンドンを拠点とする韓国人デザイナー、グム・ヘオによる、ジェンダーフルイドブランド《グムヘオ(GOOMHEO)》。メンズウエアが中心ではあるのだが、性差に捉われない、モダンで自由なアプローチに挑戦している。ヘオは、セントラル・セント・マーチンズでファッションの学士号と修士号を取得し、2017年の卒業コレクションで、「ロレアル・ヤング・タレント・アワード」を受賞、2019年には「ロレアル・プロフェッショナル・クリエイティブ・アワード」を受賞。20202月にロンドンファッションウィークでデビューを果たした。そして2022年には、LVMHプライズのセミファイナリストとなった実力者だ。

2022年春夏のテーマは“DYSTOPIAN BEACH”。スイスの写真家カールハインツ・ワインバーガーの作品に見られるスタイルからインスピレーションを得ている。タバコを口にぶら下げたティーンエイジャーや不良をイメージソースに、虚ろな表情でデニムを纏うカウボーイを形成。牛追い鞭のしなやかな動きを官能的に見立て、コレクションのボンデージスタイルを格上げした。今季、アイウエアがブランド初登場となるのも見どころだ。

 

 

 

 

 

SUNG JU

デザイナー、イ・ソンジュは建築デザインを学んだ後、ソウルで自身のブランド《ソンジュ(SUNG JU)》を2020年にスタートさせた。コレクションの基軸になるのは、ソンジュの過去の記憶、そして彫刻や建築、韓国の伝統文化に対するリスペクトを反映させたテックウエア。今期のコレクションでも「瓜」のデザインが随所に見られるのだが、それは幼い頃のトラウマを昇華したものだ。というのも当時、ソンジュは友達に、名前を「瓜」になぞらえ、からかわれていた経験を抱えている(Sung juは韓国の黄色いメロン「Chamwoe」の名産地の地名)。このように、自身のコレクションに因縁とも言えるモチーフを使用することで、自分自身への探究を行い、アイデンティティを確立し、混乱していた少年時代のセラピーの手段とした。ソンジュの興味や経験からもたらされる繊細な遊び心を大胆な構造に落とし込んだブランド。

 

 

 

 

 

SONGZIO

1993 年設立の《ソンジオ(SONGZIO)》は、フランス在住の韓国人デザイナー、ジオ・ソンによるラグジュアリーブランド。毎シーズン、パリコレクションでその手腕を発揮し、韓国を代表するブランドとして確固たる地位を築いている。(日本ではあまり販売されていないことが不思議なほどだ)。《ソンジオ》のすべてのコレクションは、デザインの基礎となる黒いキャンバスから始まる。ブランドのアイデンティティとなったブラックスーツは、韓国の俳優やアイドルを始め、ドレスアップした男性の色気を引き出してきた。コレクションピースでは、前衛的なパターンメイキングとドレープ、ユニークなシルエット、そしてキャンバスに描かれるジオ・ソンのアートペイントが、東洋のエレガンスと西洋のモダニズムを感じさせる。まさに、ダークで燃えるような情熱を携えたブランド。

ジオ・ソンは《ソンジオ》のほか、《ソンジオ・オム(SONGZIO HOMME)》、《Zゼロ・ソンジオ(ZZERO SONGZIO)》 といったラインを展開している。なかでも《Zゼロ・ソンジオ》は、ソウルの若いアーティストとともに、高品質のプレタポルテコレクションを生み出すユニセックスブランド。そして、ファッションブランドの枠組みを超えた、アーティスト集団でもある。

 

 

 

 

SAN SAN GEAR

ランウェイでコレクションを発表しているわけではないが、韓国のユースに根強く支持されているテックウエアブランドが、2019 年からスタートした《サンサンギア(SAN SAN GEAR)》。サブカルチャーをベースに、フューチャリスティックなムードとテクニカルなディテールを兼ね備えたウエアが人気の秘訣。

革新と流行に熱心なデザインチームが率いる《サンサンギア》は、音楽やアートのシーンでも活躍の場を広げ、韓国のサイケデリックロックバンド、Silica Gelが今年3月にリリースした「Mercurial」のMVにも関わった。MV内で着用されている衣装は《サンサンギア》のもの。

 

韓国国内では約20店舗で販売、そのほかの販売国は、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカと、ヨーロッパを中心に展開している。2023年からは流通をよりグローバルに拡充すべく、地元ソウルのブランドやアーティストと積極的にコラボレーションし、ブランドの強化を図っていくそうだ。

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