May 05, 2018
By THEM MAGAZINE
【インタビュー】《KIKO KOSTADINOV》×《ASICS》‘GEL-BURZ 1’
異才揃いのロンドンコレクションの中でも、ひときわその存在感を示す《キコ コスタディノフ》。初めてランウェイ形式で発表した2018 S/Sコレクションの足元には、日本が誇るスポーツブランド《アシックス》の姿があった。両者のコラボレーションから生まれたのは「ゲルバーズ 1 (GEL-BURZ 1)」と名付けられたオリジナルのスニーカーだ。2年前からローンチの準備が始まっていたというこのプロジェクトは、《キコ コスタディノフ》と《アシックス》どちらにとっても初の取り組みとなり、プロダクトをまずひとつ作り、そこからまた新たに構想を組み立てるといった入念な準備を経て発表された。コラボレーションスニーカーのグローバルローンチを祝し、「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」では一夜限りの特別なインスタレーションが行われ、合わせてキコ・コスタディノフ自身も来日。その新たなコラボレーションについて訊いた。
———『Them magazine』最新号 No.17のために、あなた自身が指揮をとって、コラボレーションアイテムを使用したファッションストーリーを撮りおろしてくれましたね。一風変わったヴィジュアルになりましたが、このシューティングの背景について教えてくれませんか?
「今回のシューティングは、プロモーションではなくコラボレーションを祝すという目的がありました。僕たちはこの来日で、神戸にある《アシックス》のスポーツ工学研究所を訪れました。そこは《アシックス》にとって非常に重要な開発拠点で、コラボレーションを祝う撮影のロケーションにふさわしいと思いました。そうして訪れた研究所は素晴らしい建築物で、500もの人が中で働いている。なので、建築にフォーカスしてストーリーを組み立てることに決めました。僕たちはロケーションハンティングも兼ねて内部を歩き回る中で出会った、32年間も《アシックス》で働いているという神戸出身の男性にモデルをお願いすることにしました。とてもキュートなストーリーに仕上がったのではないでしょうか? 実際に研究室で使われるビニールのキャップや手袋を用いて、スタイリングはわざとやり過ぎともいえるくらいに落とし込みました。おかげで、モデルの彼が研究所や体育館に住んでいるような、楽しいストーリーになったと思います」
———「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」では、コラボレーションの発売を記念したインスタレーションが行われました。上下に動く緑のベッドなど印象的な空間づくりでしたが、どのようなインスピレーションがあったのでしょうか。
「インスタレーションは、《キコ コスタディノフ》の2018 S/Sランウェイと連動させています。ランウェイでのスニーカーの見せ方と、モデルが歩くというアイデアを活かしたかったんです。スペースを生活空間のように仕立て、そこに2時間の間次々とモデルが介入してくるのです。装飾として病院で使われるベッドやリハビリで使用される平行棒を使用しましたが、ほんとうの病院のような空間ではなく、モデルルームのような空間を目指しました」
———インスタレーションでも、キーカラーとしてライムグリーンが使われていましたね。
「シューズやマスクなど、すべてにおいて使いましたね。とても日本的な色だと思います。ベッドも日本でしか手に入らないようなものですね。日本でやるインスタレーションで、日本でしか手に入らないものを使うというのもとても重要なことです。パリやロンドンから持ってきたものではなくてね」
———自身のコレクションでもライムグリーンは印象的に使われていますが、あなたにとって特別な色なのでしょうか?
「あ、今日首に巻いているのは、コレクションが終わった後に買ったものです(笑) 多用している、有毒とも言えるようなライムグリーンは、確かに目を引くものだけど、特に思い入れがあるわけではなくて今シーズンのカラーパレットの一部でしかないですね。このグリーンは、その色自体が目立つとともに、合わせた他の色も引き足せる効果があって気に入っています」
———今回発表されたコラボレーションスニーカーは、どのような点が気に入っていますか?
「そうですね。アイコニックでピュアなところ、パフォーマンスの部分を意識して開発したところでしょうか。シューズの形自体を大きく変えることができなかったから、さまざまな《アシックス》のシューズから好きな要素を取り出して、一足にまとめ上げたんです。カラーリングは、《キコ コスタディノフ》のコレクションから持ってきました」
———《マッキントッシュ》とのプロジェクトや《アシックス》とのコラボレーションなど、他企業と協働することは自身のコレクション制作に影響しますか?
「それほどではないですね。確かに、大企業の働き方や構造それ自体から学ぶことは多いですが、インスパイアされること自体を好んではいません。そこは、自分の中でしっかりと分けて考えたいのです。しかし、インスピレーション以外での影響はありますね。例えばこの前発表したシグネチャーのコレクションではアウターウエアは作りませんでした。なぜなら《マッキントッシュ》で、アウターは作りすぎてしまったから(笑) 僕の脳と身体はひとつしかないし、《キコ コスタディノフ》と《マッキントッシュ》は僕のスタジオで同じチームで作業しているから、そこは分けられないんです」
———今回の《アシックス》とのコラボレーションは一足のみでしたが、今後はどのような展開となるのでしょうか?
「2018-19 F/Wでは2種類のこれボレーションスニーカーを発表しました。ひとつは今回の2018 S/Sのスニーカーをアップデートしたもの。もうひとつはまったく新しいシューズです。今後どのような展開になるかは、言えません。お楽しみに。予測可能なブランドにはなりたくないので!」
Edit_Ko Ueoka