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ART
Mar 23, 2019
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】Katherine Bernhardt “Big In Japan!”

【インタビュー】Katherine Bernhardt “Big In Japan!”


2019年4月13日まで、NYを拠点に活動するペインター、キャサリン・バーンハートによる日本初個展『Big In Japan!』が、渋谷にあるコンテンポラリー・アート・ギャラリー「NANZUKA」にて開催中だ。

 

ストリートやポップカルチャーに基づくアイコニックなモチーフを、鮮やかでどこかドラスティックな色彩と、大胆な筆使いで表現するキャサリン・バーンハート。彼女の作品は、「ハーシュホーン博物館」(ワシントンD.C.)などへの収蔵をはじめ、アメリカを中心とした世界のアートシーンで注目を集めている。展覧会開催に合わせ日本を訪れた彼女に、制作に対する考えとプロセスを尋ねた。

1975年にアメリカ・セントルイスで生まれたバーンハートは、NYにあるアニメーション、イラストレーションを専門とした大学「スクールオブヴィジュアルアーツ(School of Visual Arts)」の美術学修士を修了、その後ペインターとして、大きなキャンバスに自身の世界観を描き続けてきた。今展覧会のタイトル『Big In Japan!』に対しても「タイトルに関しては面白半分でつけていて、日本で開催する私の作品の展示だから『Big In Japan!』。私の作品は大きいものがほとんどだからね。あとは、80年代にヒットしてた曲、アルファヴィル (Alphaville)の『Big in Japan』も頭の中でよぎっていて、響も気に入っていたから、名付けたわ」と語るように、彼女自身の身長より倍ほどのキャンバスにダイナミックに描かれた作品に、鑑賞側は圧倒されるに違いない。

 

また、今までの彼女の作品を遡りみてみると、特徴としてアメリカのストリートカルチャーを彷彿とされる要素、タバコやペプシコーラ、《ナイキ》のスニーカー、SCOTCHテープなどが度々登場する。今回もそれらのモチーフは登場するが、特に注目されるのは各々のキャンバスに大きく描かれたミッキーマウス、ガーフィールド、ピンクパンサーやスターウォーズといった時代を代表するポップカルチャーアイコン達だ。多くのペインターやストリートアーティストがモチーフとしているのがよく見かけるが、彼女にとってそれらは作品の中でどのような役割を担っているのだろうか。

 

「NYで活動していると、ストリートカルチャーのイメージはNYの街の風景であったり、グラフィティやポスターなどのストリートアートからインスピレーションを得ることはよくあるけれど、グラフィティを描くというよりも、個人的にはピーター・ドイグ(Peter Doig)やアレックス・カッツ(Alex Katz)などの作家が使う色彩やテクスチャーが好きなの。つまり、今回描いたポップカルチャーのキャラクター達はあくまで絵画を構成するモチーフであって、日本人が私の絵に親しみを持ってもらえると思って選んで描いたわ。だから、正直なことをいうと私自身がミッキーマウスやスターウォーズに特別な愛着があるわけではないの。」

 

 

アンダーグラウンドが唱える反逆のシュプレヒコールとして生まれたはずがアートシーンのみならず、ファッションや音楽など、時代が進むにつれ、洗練され美化され文化として進化を遂げたストリートカルチャー。それを彼女は自身の中で解体し、ストリートカルチャーから摘出した被写体と彼女のスタイルを混ぜ合わせ作品を構築している。作家自身が唱えるように、彼女の作風は、描く対象が同じであってもグラフィティやウォールペイントでみられるストリートアートではなく、大衆のイメージを活かしたポップアート運動に沿ったコンテンポラリー・アーティスト達の描き方に近いことがわかり、このことから、彼女が常に描いている日常生活に見かけるモチーフも納得がいく。日本にもポップアイコンをモチーフにするアーティスト、マッドサキ(MADSAKI)がいるが、彼が描くキャラクター達は風刺的な含みを持つと同時にアプロプリエーション作品とし成り立ち、どちらかというとグラフィティなどでみられる特徴に近いものがある。彼の作品と比べた時、バーンハートと似たモチーフでも異なる矛先で描かれているのは明らかだ。

 

 

では、彼女のように自身のスタイルを貫徹し新しいビジュアルを生み出すにあたって、彼女自身の中で大切にしているものや意識していることはあるのだろうか。「制作する上での変化は常にあるものだと思ってるの。それは自然なことであって、高校生で絵を描くことが好きになってから、毎日絵を描いて生活して、常に学ぶことや発見があるわ。恐らく今後も新しい作品を制作する過程で、私自身の成長はずっと続くと思うし、興味を持ったり好きになった新しいものはポジティブに制作に取り入れていきたいと思っているわ」と彼女は語る。意欲的に常に変化を求め作品を生み出し続けることは、彼女の作品を解釈する上で、重要なキーワードになりそうだ。過去のアーカイブを追うと、NYのヴィーナスギャラリーにて開催した個展「Pablo and Efrain」では作家自身が訪れたプエルトリコをイメージさせるフルーツ、ヤシの木、サメ、ウミガメなどのモチーフが今回のキャラクターのように大きく描かれた作品が展示空間に並んだ。新たに見出した要素や価値観、思想などを踏襲しスタイルを保ちつつ器用にアウトプットする作業を彼女の作品からは感じることができる。

 

最後に、日本で初となる個展を迎える彼女に現在の心境を訪ねた。「今のところ順調ね。今回の展示はずっと楽しみにしていたイベントのひとつなの。日本という初めての場所で出来るのはもちろんだけど、日本の様々な人と交流して新鮮な体験ができればと思っているわ。特に若い世代の日本人には私の作品をチェックしてもらいたい」と期待感を抱きながら語るバーンハート。今展覧会はもちろんのこと、今後の活動も合わせて注目していきたい。

 

 

 

Big In Japan!

期間 ~ 4月13日(土)
場所 NANZUKA
住所 東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビルB2F
時間  11:00- 19:00 (日月休)
電話番号 03-3400-0075
URL nug.jp/ja/exhibition/2019katherineBernhardt

 

 

Interview & Text_Daiki Tajiri

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