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LIFESTYLE
Nov 30, 2017
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】中川浩孝 / 《10 eyevan》

【インタビュー】中川浩孝 / 《10 eyevan》


このサイトを見ている読者なら、洋服だけでなく身の回りのアクセサリーにも各々のこだわりがあるだろう。そしてもし、アイウエアに対してもファッション同様、作り手の美意識やこだわりが落とし込まれたものを選びたいのなら、ここに紹介する一本はきっと気になるはずだ。あるいは、もう既に惹かれているかもしれない。

 

今年3月に《EYEVAN》からローンチされた《10 eyevan》。《EYEVAN 7285》のデザインチームでデザイナーを務める中川浩孝氏が自らの美意識のもと、純粋に美しいと思えるデザインと機能性を具現化したアイウエアブランドだ。
そのコンセプトは、「美しい道具」。プロダクトは3年以上の歳月をかけて吟味、考察した10種の特別なパーツで構成されている。《10 eyevan》に込められた思いや美意識について、中川氏自ら語ってくれた。
「この仕事を初めて20年くらい経つのですが、メガネ作りに携わっているなかで感じた思いやアイデアが積み重なってきたんです。なのでそういう思いを一つにした、新しいブランドとしてのアイウエアを作りたいと考え、《10 eyevan》を立ち上げました。例えば、昔のメガネはノーズパッドに天然貝を使っていたのが今ではプラスチックになっていたり、逆に他のプロダクトには高品質のネジがたくさん作られているのに、メガネに使われるものはずっと昔のままだったり。作り上げていくことで溜まっていたものがたくさんあったんです」。かくして伝統と革新の両立を目指して生み出された《10 eyevan》のすべては、氏が考える美意識がベースとなっている。「僕が思う美しさの基準というのは、機能的な裏付けがあるということなんです。プロダクトそのものを見たとき、単に形として良いということでは説得力がないと思います。持ちやすさ、使いやすさを意識して作られたようなものを美しいと思うことが多いんです」。
天然貝のノーズパッド、モダンの先端にあしらわれたシルバー925や18金はバランサーの役割を持ち、独自構造であるシェル型のヒンジは製作に2年を要し、特許を取得した。六角星型の頭を持つトルクスネジも、40年以上のキャリアを持つ熟練の職人が試行錯誤の末に生み出した一級品だ。「ここのネジはiPhoneなどにも採用されています。ネジ頭は綺麗な星型になっているのですがデザインではなく、この形が一番力を伝えやすく、最も滑りにくいからなんです」。一方で、機能性を追求するだけでは生まれない美しさの表現にも挑戦したという。「《10 eyevan》のパーツがすべて機能的に優れているわけではないんです。ノーズパッドの例で言えば、天然貝はカルシウムなので使っていくうちにすり減っていく。利便性ということを考えたら、シリコンのほうが半永久的で、優れている。それを理解しながらも、着用時の心地よさや、化学製品では出せない色合いなど、かける人の気分が上がるような美しさも求めました。薄ければ薄いほど繊細でかっこいいと思っても、簡単に折れてしまうようでは意味がない。でも機能性を求めすぎても美しくない。そこを葛藤しながらも、一つひとつその基準を満たしたものだけで作り上げていきました」。

天然貝を使用したノーズパッド
力の伝導効率が高く、ネジの最高峰と評されるトルクスネジ
装用時に鼻へ掛かる重さの負担を軽減させる為に、メガネの後方部に重しとして設置されるシルバー925

「やはり、メガネをかけたアイコンで一番かっこいいと思うのは、アンディ・ウォーホルですね」。苦心の末完成した《10 eyevan》のモデルを過去の人物が愛用するとしたら、どんな人物をイメージするか尋ねたときの氏の答えだ。「彼なら《10 eyevan》の魅力をわかってくれる気がします。機能的なところだけじゃなくて、面白さや良さを大事にしてくれる感じがするので。スティーブ・ジョブズも生きていたら、かけてくれたかもしれないと思うほどのものに仕上がったと思います」。

 

旗艦店でのローンチ後瞬く間に、《10 eyevan》は世界各地の名立たるアイウエアショップや、「colette」などの一流店で取扱われるようになった。そしてこの度、国内のファッションストア初となる展開が「トゥモローランド 渋谷本店」でスタートする。それに際して12月2日から一週間、旗艦店と同じオリジナルの什器を設置したローンチイベントが催される。
同店では、スタッフの多くが《EYEVAN》ブランドを展開以前から愛用していたという。自分たちが本当に良いと思い使い続けてきた彼らなら、プロダクトの魅力のみならずファッションと結びついた提案をしてくれるだろう。また《EYEVAN》のコレクションは、男性のみならず女性のファンも多いと言う。男性が好む細かなディテールやこだわりがブランドの魅力の一つだが、その佇まいに惹かれ、直感で手に取る人も後を絶たない。「パーツへのこだわりが強いということもあり、割とマニアックなブランドと思われることが多いのですが、実際旗艦店やセレクトのスタッフの方々にはあまり説明しなくてもいいと伝えています。いろいろと説明することがあるものより、ぱっと見の直感で何かを感じとってもらえるようなものこそが、本当にいいプロダクトだと思うんです」と、中川氏は語る。
今回のローンチイベントでは、通常では行っていないサイズ調整とフィッティングサービスが行われ、また会期中の2日、3日は中川氏も来店するとのこと。

 

柳宗理のカトラリーや《New Balance》のスニーカーといった、優れた機能性と直感的に惹かれるような美しさを兼ね備えた一本として生み出された《10 eyevan》。つい着てしまうシャツや毎日履くデニムのように、きっとこの一本も欠かせないものになるはずだ。

 

 

10 eyevan / EYEVAN 7285 Launch Event at TOMORROWLAND SHIBUYA

Terms:2017/12/2—12/10
Address:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti 1F
Opening Hours:11:30〜21:00

デザイナー中川氏来店日時
12月2日、3日 13:00〜15:00 / 16:00~19:00

 

 

Text_JUNICHI ARAI

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