Them magazine

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MUSIC
Feb 28, 2018
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】SUPERORGANISM

ネットの海に突如現れた変異体

 

「何にも似ていないこと」。それがこの8人組バンド、スーパーオーガニズムがたった3曲のシングルリリースで、3月2日に控える1stアルバム発表前からこんなにも注目を浴びている所以だろう。どんなに期待される注目新人も、「〇〇(著名アーティスト)を思わせる」と形容することができるが、彼らにはできない。完全なオリジナルなのである。今やサンプリングが横行し、創造というよりはアップデートが多いミュージックシーンの中で、その存在がいかに際立ち、いかに面白いか。しかし、どのようにしてそのサウンドは作られるのか?

バンド結成のきっかけは、イギリスに住むメンバーが、遠く離れたアメリカに住むボーカル、オロノに突然メールで作詞を依頼したことだった。そうして生まれた曲「Something For Your M.I.N.D.」が、フランク・オーシャンの Apple Music内ラジオ「blonded」でピックアップされ、一気に世界中でブレイク、すぐさまイギリスの名門レーベル〈Domino〉との契約に至った。
未だ謎に包まれたバンドの詳細を探るべく、ソールドアウトとなった初来日公演の翌日に取材を敢行。ボーカルのオロノ、ギターのハリー、キーボードのエミリーがインタビューに応じてくれた。

左から、ギターのハリー、ボーカルのオロノ、キーボードのエミリー

———フランク・オーシャンのラジオ「blonded」でピックアップされ一気に話題になった以降、海外誌のインタビューが順次ウェブに公開されたのを読んで、徐々にバンドのミステリアスな部分は明らかになりつつありますが。

 

一同 (笑)

 

 

———要所要所、深掘りさせてください。メンバーとオロノが初めて会ったのは、日本だったんですよね。

 

ハリー 「そう。当時組んでいたバンドでジャパンツアーをしていた時だね。スーパーオーガニズムのうち4人のメンバーが在籍していた、The Eversonsというバンドで、インディロックをやっていたんだ。2015年にジャパンツアーとして、宇都宮や浜松、名古屋、大阪、そして最後には東京で2つのギグをやったんだ。その東京公演の一日目に、オロノが見にきてくれたんだよね。彼女は、Youtubeのオススメ欄から俺たちを見つけたらしい。友達でもある、ニュージーランドのアーティストPrincess ChelseaのPV『The Cigarette Duet』からだったはず。それでThe Eversonsの音楽を気に入ってくれたみたいで、ライブの時楽屋まで遊びにきてくれた。俺らは馬が合って、すぐに友達になったよ。で、オロノは2日目のライブにも足を運んでくれて、俺らは次の日が一日オフだったから一緒に遊びに行ったんだ。ハードロックカフェでランチを食べて、上野動物園にも連れていってくれたね。それが、オロノとの出会いだった」

 

 

———メンバー同士の、初対面の印象はどうでしたか?

 

オロノ 「背が高い。身体がデカすぎる。ワイルド。酔っ払い」

 

一同 (笑)

 

エミリー 「あんまりいい印象じゃなかったみたいだ(笑) 彼女の第一印象は、ちょっと複雑だな。異国にいるといろんなレベルの英語を耳にするわけだけど、彼女に会ったときはまだ15歳で体もすごく小さいのに、ジャパンツアー中に出会った他の誰よりも流暢に英語を喋っていたんだ。とても素晴らしいと思ったと同時に、可笑しな話だとも思った。素直に驚いたね!」

 

ハリー 「さらに、彼女は年齢的には幼いのに、非常に大人びていたんだよね。だから、『何が起こっているんだ!?』という感じだった(笑)」

 

———ツアー終了後は、フェイスブックを通じたオンラインでやりとりしていたんですよね。その後、オロノはアメリカに留学。その間に会うことなく、オロノにメールでデモ音源を送って、作詞のオファーをかけたんですよね。なぜ遠く離れた地に住む彼女にオファーをしたのでしょうか?

 

ハリー 「単純に、彼女に才能があると思ったからだよ。彼女が、高校の時に作ったドローイングやペインティングといったアートワークをネットにあげていたのを見たんだ。クールだなと思っていたら、サウンドクラウドにニュートラル・ミルク・ホテルのカバーなどをアップしているのを見つけた。それを聴いたら、彼女の音楽的ルーツがわかったし、声もとてもいいと感じた。それで、一緒に曲を作ってみたいと思ったんだ」

 

 

———ハリーはロンドンにいて、オロノは遠く離れたアメリカにいて。やりとりは難しくなかったですか?

 

オロノ 「楽勝よ」

 

ハリー 「その通り、簡単だったよ(笑) 僕らは、そういうのに慣れきったデジタル世代だから。今も、ネットを介した同じような方法で作曲しているしね。俺らはもう、一緒に練習したり、ジャムったり、レコーディングスタジオに行ったりはしないんだ」

 

エミリー 「このバンドにはいろんな個性が集まっていて、それぞれで違う方法でそれを発揮するんだ。それこそ昔はジャムったり一緒に練習したりはしていたけどね。たくさんの作曲のプロセスを試して、今の方法が一番いいって思った」

 

 

———現在はオロノ含むメンバー全員が、イーストロンドンの一軒家に一緒に暮らしているんですよね。一緒に住んでいても、一緒に作業することはないということでしょうか?

 

エミリー 「もちろん全部が全部、というわけではなくて、誰かの部屋に集まってみんなで一緒にやったりすることもあるよ。でも、かっこいいギターパートやキャッチーなメロディラインを詰めようとするときは、他の誰の介入もなしに何時間でも部屋に閉じこもってやりたくなるだろう? メンバーそれぞれが分業で、自分のパートを突き詰めるのさ。それで最後に結合するわけ。だから、メンバー内のやりとりはネットを介してすることが多い」

 

 

———なるほど。この一年は、バンドにも自身の生活にも劇的な変化があったことかと思いますが、振り返るとどのような年だと言えますか?

 

ハリー 「どうだろうね。オロノ、君は高校を卒業したばかりだったし、どう思っている?」

 

オロノ 「正気でないような一年だったわ。私、実は13歳の時に〈ホステス〉のインターンに応募したことあるの。英語も流暢に喋れますよ、って触れ込んでね。でも私の年齢を知った彼らの答えはNO」

 

一同 (笑)

 

エミリー 「13歳じゃなあ(笑)」

 

オロノ 「でも私はとても腹が立った。そこで、私は将来アーティストとして〈ホステス〉に所属して、美味しい飲み物を飲みながらインタビューをされるくらいになるんだって誓ったの。それで5年後のいま、まさにこうしてインタビューされている。クレイジーよね」

 

ハリー 「オロノは強い決意を持った人だからね(笑) 俺はこのバンドの成功を振り返るだとか、あんまりそういうことを考えたくないかな。なぜなら、今がちょうどその瞬間だからね。例えるなら、『さて寝るぞって時に一番考えてはいけないことは、いかにこの睡眠が大切かについて考えること』に似ているかな(笑) 明日は6時に起きなきゃとか考え始めると、思考が止まらなくなるからね。だから、今は風にまかせて、なるようになるだけかな」

———では、バンドのどのような点が評価されていると自己分析しますか?

 

オロノ 「わからないわ」

 

エミリー 「自分たちを楽しませるために音楽を作っているようなものだからね(笑) 俺らとしても、驚きだったんだよ。他の人のことなんて、何も考えていなかったんだから」

 

ハリー 「そう、俺らが評価されている理由として思いつくのは、そのポイントなんだ。何かを計算しながら曲を作らないことや、ただ自らのパーソナリティやメンバー同士の関係性が純粋に落とし込まれていること。こういった、音楽に対する正直であるということがみんなに気に入ってもらえる理由なんじゃないかな」

 

 

———楽曲やBBCでのライブ衣装など、バンドにはキャッチーな要素があると思いますが、その辺りは意識的なものではないのでしょうか?

 

ハリー 「自分たちの脳を楽しませるためにやっているという点では、計算していると言ってもいいかもしれないね(笑) こういう姿勢は、興行的にはギャンブルと言っていいのかもしれない。しかし、俺の大好きなカニエ・ウエストはいつもクレイジーなアイデアで大きなギャンブルを仕掛けて、それにリスナーがついて行ったり反応したりして成功しているんだよね。だからとにかく、頭でごちゃごちゃ周りのことを考えるんじゃなくて、自分自身をさらけ出すことが大切なんだと思うよ」

 

エミリー 「曲に関しては、バンドのみんながポップ・ミュージック好きというところで共通点を持っているから、キャッチーなメロディーに仕上がっているんだと思う。この共通点がドローン・ミュージックとかじゃなくてラッキーだったよ(笑)」

 

 

———メンバー間で年齢の差が少なからずあるかと思いますが、音楽的にもジェネレーションギャップがあったりしないですか?

 

オロノ 「時々ね。日によって感じ方も違うし(笑) みんなでポップ・ミュージックのことを話す時、彼らが高校に通っていたころに流行った曲の話になるとついていけないわ。私はその時代に生きていなかったわけだしね」

 

ハリー 「同じことは俺らにも言えるよ。オロノがYoutubeで、彼女の世代で流行っている音楽やPVを見せてくれたりすると、いいね!ってなる時もあるんだけど、ちょっと奇妙すぎると感じることもある。最近の若者は何考えてるんだ!ってね(笑) オロノと俺はこんなにも背丈も違うから、親子に間違えられることもある(笑) しかし、メンバーはみんな違う国、違う年代で育ってきたけど、俺らの中には大きな類似点があるというのがポイントなんだ。その一方で、似ていない部分というのもバンドの強みになる。お互いに、自分にないものをいろいろ学ぶことができるから。アーティストは自分のやり方に固まりすぎたりするべきでないし、他の人と刺激を受けあったりしたいものだからね」

 

 

———なるほど。2月5日に渋谷のライブハウス「WWW」行われた日本初公演はいかがでしたか?

 

オロノ 「とてもよかった!」

 

エミリー 「最高!奇妙でもあったよ(笑)」

 

オロノ 「もう少し、曲をプレイするべきだったかも。まあでも、また次の機会にね」

 

ハリー 「俺らは日本で出会ったから、ホームカミングな気持ちになったね。前回、別のバンドで来た時からそんなに時間も経ってないのに、アーティストとしてもこんなに違う立場でいるのは変な気分だ」

 

オロノ 「日本に住んでいる昔からの友達や家族が駆けつけてくれて、私にとっても異様な体験だったわ。私の姉妹の親友のお父さんや、中3のときの美術教師まで見にきてくれて」

 

エミリー 「俺らの日本の友人もきてくれたね。前のバンドでの来日をオーガナイズしてくれた人は、今回のステージの大きさを見て『何が起こっているんだ!?』って反応だったよ。前回のハコは本当に小さかったからね(笑)」

 

 

———3月2日に待望の1stアルバム『SUPERORGANISM』がリリースされますね。リリース後の、バンドとしての次のステップは?

 

ハリー 「とりあえずは、ツアーで世界を周ることかな!日々さまざまな音楽吸収して、成長していくよ。まあ、あとは超クールな暮らしかな(笑)」

 

エミリー 「いいセンテンスだね(笑)」

 

 

陽気な態度でインタビューに迎えてくれたスーパーオーガニズムは、今夏の「FUJI ROCK FESTIVAL」にも出演が決定した。これからの時代を象徴するかのような、大注目のグループから目を離せない。

 

 

リリース情報

スーパーオーガニズム
ARTIST スーパーオーガニズム
RELEASE DATE 3月2日
LABEL DOMINO/HOSTESS
URL hostess.co.jp/artists/superorganism

 

 

Edit_Ko Ueoka

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