Them magazine

SHARE
FASHION
Nov 26, 2020
By MARIN KANDA

Interview with GREG CHAIT as THE ELDER STATESMAN

《ジ エルダー ステイツマン》を形づくるのは西海岸の風を感じる特徴的なカラーリング、極上の肌触りを誇るカシミア。そして、10年以上もカシミアに惚れ込んだデザイナーのグレッグ・チェイトによる飽くなき探求である。数多あるニットブランドとは一線を画す、鮮やかな色と素材の上質さを抜群の配剤で盛り込んだ同ブランドのニットウエアのコレクション。その真価を探るため、LAに暮らすグレッグにオンラインでの取材を敢行した。暖かなLAの日の光に照らされ、穏やかな口調で語る彼の海を愛し、家族や友人との交流を尊重し、ブランドに携わる人々を“ファミリー”と呼ぶその人柄にもブランドが愛される理由があるように思える。

 

 

――元々はエンターテインメント業界で働いていたそうですが、なぜ《ジ エルダー ステイツマン》を立ち上げようと思ったのでしょうか?かねてから、いつかは自分のブランドを立ち上げたいと思っていたのでしょうか?
大学を卒業後、レオナルド・ディカプリオやスヌープ・ドッグをマネージメントしていた「The Film」という会社で働き始め、エンターテインメント業界での自分のキャリアをスタートさせました。そして、「The Film」で自分のキャリアを積んでいる頃、オーストラリアに住んでいたときに知り合った《スビ》の友人が私に会いにLAにやって来て、ブランドを広めてほしいと言うので私は北アメリカの多くのメディアや、セールスの人々に対して、《スビ》の認知を広めるため仕事を始めたのです。こうした経験の中で、私はコマーシャルでの成功を追い求めていたわけではなく(結果的にはそれが大いに作用したが)、創造的であり、ただひたすら楽しむことを大切にしていたということに気づきました。エンターテインメント業界での私の道のりは非常に上手くいっていましたが、《スビ》の持つクリエイティブな世界は私にとってそれ以上のものだったので、エンターテイメント業界を離れ、《スビ》のビジネスへフォーカスしていくことになりました。
また、そのころの私はカシミアのブランケットがとても気に入って自分用に集めていたんです。私はブランケットの収集を追求していくうちに最高品質のカシミアブランケットはまだ市場に多く出回っていないと気づき、私は友人を通して毛糸も紡ぐ編み物の商人を見つけ、彼らと一緒に毛糸を作り、そして最終的には私の頭の中に描いていたブランケットを作り上げました。その後、2007年に《スビ》を離れ、その年の年末に私はLAのブランド、《マックスフィールド》のためにブランケットを製作。翌年の2008年の2月に私自身の小さなコレクションを完成させ《ジ エルダー ステイツマン》をローンチしました。

THE ELDER STATESMAN Resort 2021 collection

――それまでファッションを専門的に学んでいなかったあなたが、どのようにして服作りのイロハを学び、生産背景を持てるようになったのでしょうか?
ブランドは純粋な情熱と問題解決をすることから始まったのです。私は本当に毛糸に夢中で、ブランケット以外のアイテムも作りたいと思っていました。時間をかけて学びながら、私の追い求めていることができる職人や技術者を見つけたことは幸運でしたね。また、私自身のナイーブだけれど好奇心が強く、行動力がある性格が市場に欠けていたいくつかのプロセスを発見し、それを自分で作り出すことに繋がりました。もちろん、私は今でも学んでいる過程の中です。

 

――他のラグジュアリーブランドやカシミアを売りにしているブランドと、《ジ エルダー ステイツマン》の一番の違いはなんだと思いますか?
《ジ エルダー ステイツマン》は100%、私の情熱から生まれています。それは私のチーム、家族、友人など、私が世界で初めて繋がった人々を表しています。私たちがどのように、そしてどのような理由で物事を行うかによって、ブランドは常に変化していきます。
また、私たちは多くの技術と原材料のために、とてもユニークで複雑ではないプロセスを構築しました。この事実が、最終的には私たちの強みとなっています。

――鮮やかなカラーリングは日々の生活や旅先で見たり、感じたことがベースとなっているとのことですが、具体的にどのようなものからその色使いのヒントが生まれてくるのでしょうか?
正直に言うと、何からきているのか明確に答えるのは難しいです。私の祖母であるThelma Chait は素晴らしいアーティストで、私は彼女の世界の中で育ちました。幼い頃から見てきたペインティングの工程は確実に私に何かしらの影響を与えていると思います。それに、単に色が自分を幸せにしてくれるので好きなのだと思います。

 

――ファッションに興味を持ったきっかけになった原体験はありますか?
私は子供のころファッションの世界については何一つ知りませんでした。なぜなら私が育った場所では、ファッションの世界で何が起こっているのかを知るきっかけはありませんでしたし、それどころか、美術学校に通うということすらありえないことだと思っていたのです。ですが、私は常に「スタイル」というものを、自分自身がどう解釈するかということには夢中でした。 私のスタイルセンスは、アウトローの友人たち、『アウトサイダーズ』のような映画、そして当時シアトルで起こっていたグランジ・シーンのような音楽など、私の周りの世界から得たものでした。 祖父母やいとこたちと夏を過ごすことができたのは幸運でした、その頃はグランジの全盛期だったので、実際にその場で実感していたので間違いなく記憶に残っています。

Them magazine No.32 “GRANDS ESPACES” ‘Solo’  Photography BY MASATO KAWAMURA. Styling BY SHUHEI YOSHIDA.

――最新号でも特集した、黒をメインとしたコレクションを立ち上げた理由を教えてください。このコレクションはブランドにとってどのような位置付けなのでしょうか?
良い質問ですね。「ブラック コレクション」はブランドのプロダクトの奥深さを純粋に表しています。あなたが言及したように、私たちは独特のカラーチョイスで知られており、それは素晴らしいことなのですが、同時に私たちはコンストラクションという点においても、とても情熱を注いでいます。「ブラック コレクション」はまさにそのハイライトと言えるでしょう。また、黒一色になっているのも気に入っており、魅力的ですね。

 

――独特な色彩が特徴であるブランドが手がける黒のコレクションとして、黒に対するどのようなこだわりがあるのでしょうか?
料理をするように、素材によって最適な染料や工程をとても丁寧に選んできました。黒といってもその一色の中にはさまざまな表情の違いがあります。素材や染め方によって深みやトーンが違うのは、つまりその素材自体の素晴らしさやポテンシャルを生かしているということでもあるのです。黒のコレクションによって、それらを世界に発表できていることが幸せだと感じています。

 

――最近、自社工場をLAのソーホーに移転したそうですが、何がきっかけだったのでしょうか?移転する前とした後で、クリエイションや制作過程において大きく変わったことはありますか?
以前の工場のスペースが足りなくなったため、工場を移転しました。新しい建物は改装された築100年の穀物倉庫内にあり、私たちの求めていた新しい工場にぴったり合いました。大きな変化としてはLAというこの場所で体験し、見たものをすぐそこでアウトプットできることです。

――2014年には、アメリカの双子のアーティストである「Haas Brothers」とのコラボレーションを行いました。彼らとのコラボレーションに至った経緯を教えてください。また、さまざまなブランドがコラボレーションを行う状況で、《ジ エルダー ステイツマン》におけるコラボレーションとは、ブランドにとってどのような意味を持つのでしょうか?
ニキとサイモンとは2012年に出会い、すぐに仲良くなりました。私たちが今日まで非常に良い友達であり、協力者であり続けていることを嬉しく思います。 私は彼らをとても愛し、尊敬しています。
2014年のコラボレーションは意義のあるものでした。お互いにコンセプトをとても気に入っていますし、単に私たちはコラボレーションをするべきだったのです。《ジ エルダー ステイツマン》というブランドは、原則として、外でも中でも人と協業することで成立しています。私たちはチームのメンバーや、直接やりとりしている職人と日々協力し、また、私たちとコラボレーションしてくれるアーティストとも仕事に取り組んでいます。 誰かと一緒に仕事をすることは、何十年経っても愛着を持って仕事ができると信じています。 また、私たちはコラボレーションによって生まれたアイデアを信じて愛さなければなりません。

 

――小誌の最新号のテーマが「アウトドア」です。自宅近くのビーチなどでサーフィンを嗜むあなたにとって、自然でのアクティビティは、クリエイションを刺激するようなものなのでしょうか?もしくは仕事から離れるためのリフレッシュなのでしょうか?
これに対する答えは、どちらでもあるし、また、それ以上です。私は自然との繋がりを信じており、それは思考、体、精神にとても重要なものです。私は水の中では良いこと以外思い浮かびません。サーフィンは私にとって「瞬間」を表すアクティビティです。波をかき分ける瞬間、すべてがリセットされ、リフレッシュできるのです。

――あなた自身のファッションにおけるスタイルもサーフカルチャーが背景にあるのでしょうか?また《ジ エルダー ステイツマン》のクリエイションにどれくらい影響を与えているのでしょうか?
ビーチカルチャーはどちらにも明らかにありますね。サーフィンに限らず、その周りにあるすべてのもの。 パーティー、都市、都市を訪れる人々、などなど。目の前に広がるLAのサンセットなんかも。

――自社工場による一貫生産、LAのフラッグシップストアへの注力など、《ジ エルダー ステイツマン》はあなたのコントロールが行き届く範囲のなかで、ブランドとして着実に成長させていこうとする意図が見えます。これから先、あなたはどのような形でブランドを発展させていこうと考えていますか?
ブランドを立ち上げてから13年目となり、ここまで歩んできたのは長い道のりであったということを自負しています。そこには偉大なものには時間と努力が必要であるという私の信念があるのです。家族や職人、これまでコラボレーションしてきたアーティストたちすべてが今のブランドの世界を作り上げ、培われた《ジ エルダー ステイツマン》のあらゆるアイディアがまず誰よりも先に私たち自身を感動させてきました。こうしたビジネスをスタートさせられたことが心から幸せだと思っていて、今日この時もそしてこれからもずっとそうだと確信していますし、もっと違う形でもブランドの世界観を押し広げていけたらいいと願っています。

Greg Chait

グレッグ・チェイト 1978年、トロント生まれ。大学卒業後、エンターテイメント業界に足を踏み入れる。その後、《スビ》のアメリカでのローンチに携わり、2008年に自身のブランド《ジ エルダー ステイツマン》を設立。カシミアを使ったコレクションは、紡糸から染色、縫製まで、すべての工程をLAの自社工場で行っている、現在は家族とともにLAに暮らし、趣味としてサーフィンを楽しむ。

 

Translation_MINAMI JINNOUCHI. Edit_MARIN KANDA.

SHARE