Them magazine

SHARE
CULTURE
Jan 28, 2021
By MARIN KANDA

Interview with Manne Glad as Stockholm Surfboard Club

“サーフカルチャー”と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、パームツリーと燦々と塗り注ぐ日光に垂らされたアメリカは西海岸の海だろうか。そんな先入観を打ち破るブランドが2019年、スウェーデン・ストックホルムで産声をあげた。《ストックホルム サーフボード クラブ》通称《SSC》はサーフボードのシェーバーであり、デザイナーでもあるマンネ・グラッドが手がけるサーフボード&ウエアブランド。多様性と自由なアプローチを表現したファーストコレクションでは、サーフボードやウェットスーツなどのハードなサーフグッズに加えて、ユニセックスのパンツやフルイドシャツ、スクリーンプリントのTシャツなどが揃っている。昨年、ストックホルムに旗艦店をオープンしたばかりの同ブランドが建築家のクリスティアン・ハレロドと制作したインスタレーションとともに、2月4日に「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」に日本初上陸を果たす。マンネが《アクネ ストゥディオズ》での経験を経て自身のブランドを立ち上げるに至った経緯とこれまでの歩み、クリエイションから描いているビジョンまでを聞いた。

 

 

――あなたの経歴を教えてください。また、10代の頃はどのようなカルチャーにハマっていましたか?
スウェーデンのストックホルムの中心部、最近《ストックホルム サーフボード クラブ》(以下、《SSC》)の1号店をオープンしたところのすぐ近くで育ち、6歳からバイオリンを始めてサッカー、スケートボード、アイススケート、ギターなどを楽しんでいました。当時から常に新しいことを学びたいと思っていました。私の音楽面でのキャリアには高校時代に一度だけのライブが含まれていますが、それが今でも私の最大のインスピレーションの源になっていると思います。面白いことに、僕は子供の頃からサーフィンをしようとは全く考えていなかったんです。兄と友達がみんなダウンヒルスケートボードのワールドツアーに参戦していて、それをきっかけにサーフィンを始めました。

 

――サーフカルチャーと聞くとアメリカの西海岸のイメージが強いと思うので、《SSC》のローンチを聞いて驚かれる方も多いと思います。ストックホルムのサーフシーンについて教えてください。
ストックホルムのサーフシーンは歴史としてはとても若いです。70年代には、帆を捨ててパドリングを始めた勇敢なウィンドサーファーたちがいました。その後、冷水用のウェットスーツが開発されて、インターネットを見れば誰もが簡単に天気予報の情報を手に入れられるようになった。昔は風の観測をするには、地元の灯台に電話をしなければなりませんでしたが、今ではそのようなことはありません。海では大勢の人に囲まれてイライラすることもありますが……ストックホルムにも本当にいいサーファーたちが集まっていてとてもかっこいいですよ。

 

――サーフボードシェービングに魅せられたのはなぜですか?
昔から、自分の手で物を作ることができる人には本当に感銘を受けてきました。それは生涯大工をしていた父の影響だと思います。父が木の切れ端をサウナにすることができたのには本当に驚きました。サーフィンを始めたら、自然と自分のサーフボードを作るようになりました。それはサーフィンの経験を別のレベルに引き上げてくれる作業でもあったのです。

 

――サーフボードは機能性を第一に考えるツールでもありますよね。機能性という制約の中で自分の美学やインスピレーションをどこにどのように反映させているのでしょうか?
シェービングをしているときは意識しているかどうかに関わらず、常に美学的なアプローチをしています。それは曲線を持つオブジェクトを作る有機的なプロセスで、単なる道具には収まらないような魅力を持たせる必要があります。もちろん、流体力学的な理論もあるのでそれを意識して制作に取り組んでいます。

 

――《SSC》のデザインのインスピレーションは、サーフボードのシェービングやデザインから由来しているのでしょうか? それともご自身のサーフィン経験から来ているのでしょうか?
私は昔の方が良かったと思っている人。だから、ファッションであれ、サーフボードであれ、音楽であれ、私のインスピレーションの多くは過去から来ています。でも、《SSC》の最初のインスピレーションは、サーフボードのシェービングとサーフクラフトのカルチャーから。初めてサーフボードをシェーブしたときに、自分のクラフトを作ることの無限の可能性と、それが水の中での経験に何をもたらすのかということに瞬時に気づかされました。まるで開眼したかのように。サーフボードは私の創造意欲をくすぐります。クラフツマンシップ、美学、パフォーマンス、表現力を網羅した一つのオブジェクトと考えています。そして、そのフィロソフィーを拡大させたウエアコレクションが登場しました。

 

――世界のサーフブランドとの違いは何だと思いますか? また、北欧の要素を意識的にデザインに取り入れようとしているのでしょうか?
他のサーフブランドとの違いは、たくさんの要素があると思います。まず、私たちはスウェーデン出身で、サーフボードを中心としたクリエイティブな要素とウエアラインを持っています。また、デザイン、品質、サービスの両面で、よりサステイナブルな製品を作っていると思います。正直なところ、私は北欧のデザイン要素をあまり意識していません。例えて言うと自分の家の匂いがしないという感じ。自分にとって馴染み、浸透しているという点ではもしかしたら思っている以上に北欧デザインの影響を受けているのかもしれません。

 

――ジョニー・ヨハンソンとの出会いについて教えてください。また、《アクネ ストゥディオズ》に誘われたときの率直な感想をお聞かせください。 あなたは大工として働き、ファッションのバックグラウンドはありませんでしたが、デザイナーとして参加しようと思ったきっかけを教えてください。
当時は大工の仕事をしていましたが、その傍らで自分や友人のためにサーフボードを作っていました。ある日、ストックホルムのシェービングスタジオの近くのコーヒーショップでジョニーと出会いました。私たちはすぐに、サーフボードとデザインへの興味を共有していることがわかりました。私はファッションデザインについてほとんど何も知らなかったので、彼が《アクネ ストゥディオズ》のデザインチームに誘ってくるとは思ってもいませんでしたが、私の人生の中でこれまでで最大の挑戦だったので、参加しないという選択肢はなかったのです。

 

――《アクネ ストゥディオズ》では具体的にどのような仕事をしているのですか? また、同ブランドでの仕事は、《SSC》にどのような影響を与え、反映されているのでしょうか?
《アクネ ストゥディオズ》で働いた3年間は、デニムコレクションのデザインチームに所属していました。“Blå Konst”は、アートとオルタナティブな文化に焦点を当てたブランドの新しい取り組みだったので、とても興味深い時間を過ごせましたね。そして、そこでの経験が私にファッションの中のサーフカルチャーを探求する好奇心に火をつけました。ジョニーと密接に仕事ができ、技術的にも美学的にもその経験に浸ることができたことは本当に素晴らしいことでした。

 

――現在販売されているウェットスーツは日本で生産されているとのことですが、どのような経緯で日本で生産することになったのでしょうか?
日本はウェットスーツ作りの歴史が長く、サーフィンの世界では最高のウェットスーツを作っていることで知られています。そして、日本のアパレルメーカーはどこも最高品質のものを作っているので、日本での生産以外のものを選ぶ必要はありません。

 

――これまでに影響を受けたアート、音楽、本、写真などについて教えてください。 また、今夢中になっているものはありますか?
今は70年代のアウトロー・カントリー・ムーブメントに夢中です。ブーツカット、ホンキートンク、ビール。Martyn WorthingtonやPeter St Pierreのような古いサーフボードのエアブラッシャーも好。裁縫師であろうと木工であろうと、職人と彼らが身につけているものからインスピレーションを得ているんです。

 

――プライベートの時間やリラックスタイムはどのように過ごされていますか?
できるだけサーフィンをするようにしています。でも、私は仕事とプライベートの境界線がかなり曖昧なほうです。正直いうとあまりリラックスしていません。早起きしてコーヒーを飲むというシンプルなことが好きです。それに、冷えたビールと晴れた空が好き。

 

――古いタバコショップを改装したブランドの旗艦店が先日オープンしました。インテリアデザインを担当したのは、《アクネ ストゥディオズ》で長く一緒に仕事をしてきたChristian Harelodですね。今回の《SSC》のインテリアデザインでは、どのようなコンセプトを重視しましたか?また、コロナウイルスが世界中で蔓延し、ECサイトでの買い物が主流になっている中で、実店舗をオープンしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
インテリアデザインの基本的な柱の一つは、ブラウンやベージュを使用していることです。幸運にも古いタバコショップの内装は、70年代の素晴らしい大工仕事で構成されていて、茶色にペイントされていました。それはまさにその時代に思いを馳せ、インスパイアされることが多い私たちの美学に合っていました。鏡張りの壁や磨かれたスチールのレールと相まって、《SSC》の雰囲気を醸し出すことができたと思います。我々は素晴らしいショールームとデザインスタジオを持ってはいますが、在庫が置ける場所を確保し、お客様にお会いすることがもっと重要でした。確かに私たちはデジタルの時代に生きていますが、物理的な存在の重要性があると思っています。

 

――「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」のインスタレーションもHarelordと一緒に制作されたとお聞きしました。今回のインスタレーションで表現された「ブランドの美学と、サーフィンカルチャーの過去・現在・未来を解釈するというビジョン」について教えてください。
まずは、《SSC》を代表する要素であり、すでに使用しているものを整理することから始めました。それらはミラーや70年代に染め上げられた突板、磨き上げられたスチールのレール。この架空のサーフキャラクターをイメージしたグロテスクなインテリアのようなもの。友人たちの彫刻と一緒にブランドのアイテムを置くことで、アート、ファッション、サーフィンの世界を繋げるというアティチュードを表現しています。

 

――今回のインスタレーションでは、Sander Tillmanの音楽を取り入れたり、Ryan BurchやDerrick Disneyの作品を配置したりと、ブランド、人と人とのつながりを見てもらえるような気がしました。他のアーティストとのコラボレーションは、どのような影響を与えますか?
アーティストたちとコラボレーションすることによって創作のエネルギーが湧いてくるんです。コラボレーションする、しないに関わらず私はいつも他の人の作品からインスピレーションを受けることが多いですね。

 

――「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」でのポップアップなど、今後の更なるグローバル展開に期待している方も多いと思いますが、今後はどのようにブランドを展開していきたいですか? これから《SSC》をどのようなブランドに発展させていくのか教えてください。
若いブランドなので、私自身も将来がとても楽しみです。変化が早く、短いスパンで全てのものが消費されていく時代の中で、強いアイデンティティと存在理由を持つことは素晴らしいことだと感じています。私たちは《SSC》の長期的な目標として、人々の創造、サーフカルチャー、優しさを刺激するような質の高い製品を提供し、サステイナブルなブランドになることを目指しています。

 

Manne Glad

マンネ・グラッド
1988年、スェーデン・ストックホルム出身。フォトディレクター、大工を経てジョニー・ヨハンソンとの交流から《アクネ ストゥディオズ》のデザインチームに参加する。2019年に《ストックホルム サーフボード クラブ》を立ち上げ、その翌年には第1号店となる旗艦店をオープンした。

 

https://stockholmsurfboardclub.com/collections/frontpage
Insatgram @stockholmsurfboardclub

 

 

Edit_MARIN KANDA.

SHARE