Them magazine

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FASHION
Dec 07, 2020
By THEM MAGAZINE

Interview with CHRISTOPHE LEMAIRE and SARAH LINH TRAN

クリストフ・ルメールはこれまで、20年ほどの間に40回以上、日本を訪れていると言う。ブランドの設立当初から日本では大きく展開され、長年続く《ユニクロ》との協業では、パリR&Dセンターのアーティスティック・ディレクターに就任。コラボレーションラインの《ユニクロ ユー》として展開するなど、日本のファッションとの結びつきの強さが広く知られている。そしてまた、日本のファッションフォワードな人たちにとっても《ルメール》が作り出す服は、ワードローブに残る永続的な服として親しまれている。そんな《ルメール》が10月、南青山に期間限定で直営店をオープンした。世界二店舗目となる同店は、「ダイケイ・ミルズ」が主宰するプロジェクト「SKWAT」によってデザインされたもの。コロナ禍による困難な時代の中で一貫した服作りを続けながら、積極的に新しい取り組みを行っているクリストフ・ルメールと共同デザイナーのサラ=リン・トランに、メールでのインタビューを敢行。彼らの哲学や、日本との関わり合いについて聞いた。

 

―今回オープンしたストアは、「ダイケイ・ミルズ」と「twelvebooks」によるプロジェクトである“SKWAT”とのコラボレーションによるものですが、このきっかけはなんだったのでしょうか?

The new store is a collaboration with “SKWAT”, a project by “DAIKEI MILLS” and “twelvebooks”. What made you decide to do this collaboration?

 

Christophe Lemaire : Daiken Mills are part of SKWAT collective . Yoshiko Edström introduced us to them , we talked with Kei ( Keisuke Nakamura ) , we liked their concept and decided to trust them…

 

クリストフ・ルメール(以下C):「ダイケイ・ミルズ」はSKWATとも連動しており、エドストローム(オフィス)のヨシコさんが紹介してくれました。そこから ケイ(中村圭佑)と話をして、コンセプトが気に入り、信頼に至りました。

サラ=リン・トラン(以下S):また、私たちはSKWATの都会の空き地に仮設の場所を作り、さまざまな分野の人々を集めて廃墟となった場所に、新しい命を吹き込むというプロセスやアイディアを気に入っています。

 

―(ブランド名が《クリストフ・ルメール》だったとき)かつては神宮前にもストアがありましたが、以前からまた東京で直営店を開きたいと考えていたのでしょうか?

 

C:私たちは近いうちに、東京に旗艦店をオープンしたいと思っています。このSKWATプロジェクトは東京での小売をテストケースとし、どんな人がLEMAIREに興味を持ってくれるのかを理解するための良い方法だと思っています。

S:《ルメール》は長い間、日本と日本の文化に親しみを持ってきました。パリの旗艦店に次ぐ2番目の店舗として東京にスペースをオープンすることは、ブランドにとって自然なステップです。ブランドを十分に表現することが重要だと考えています。

 

―直接自分の目で見ることができない状況で、SKWATとはどのようにコミュニケーションをとりながら設計していったのでしょうか?

 

C:東京に訪れてスペースを見たり、SKWATのチームと会ったりすることができなかったので、プロセスの最初の段階が最も大変でした。 そのため、納得のいくものにするために普段よりも、もう少し時間がかかったかもしれません。

S:私たちは、「ダイケイ・ミルズ」のビジョンを信頼するしかありませんでしたが、 ケイが提案してくれたストアデザインは彼の前作から引き続いているものでした。そしてそれは理解しやすく、理にかなっているストアデザインだと感じました。したがって、開発プロセスは非常に流動的であることが分かっていました。

 

―ストアでは、内装と什器に築100年の日本の古民家の廃材が再利用され、日本の伝統的な技法である木組みが用いられています。日本と縁の深い《ルメール》らしいものだと言えると思いますが、このアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

C:これはケイのアイディアで、私たちはすぐさま気に入りました。現代性が歴史に根付いており、現在が過去と紐付き、古いものに新しい命を吹き込むという考え方、日本の伝統的な建築美、魂のある建築に敬意を示していることが素晴らしいと感じました。すべてはそこにあります。

S:全くその通りだと思います。

 

―画面越しに訪れた、ストアの感想を教えてください。

C:私たちはこの取り組みは成功だったと思います!このコラボレーションを非常に誇りに思っています。

S:このストアは最初のスケッチに非常に忠実です。私たちも実際に東京へ行き、お店へ訪れることが早くできるといいのですが。

―20年秋冬と21年春夏のコレクションでは、マルティン・ラミレスの作品とのコラボレーションを行っています。サラ=リンさんが20歳のときギャラリーでのインターンシップをしていたときにマルティンの作品に出会ったとのことですが、今回コレクションに採用しようと思った理由を教えてください。

 

C:私たちはMartin Ramirezの作品、そのユニークな美しさとグラフィックが大好きです。私たちはただ彼の作品に敬意を表し、服にプリントすることで新たな次元をもたらすことを素晴らしいと感じています。

S:ずっと前にフランスのギャラリー である「Abcd art brut」で インターンシップをしていました。そこでMartin Ramirezの作品に出会いました。最初はニューヨークのアウトサイダー・アートフェアで、後には2007年に彼の作品を展示したアメリカン・フォーク・アート・ミュージアムで再度彼の作品に再会しました。

私たちは彼の作品にとてもセンシティブに反応しています。最も印象的で美しいのは、彼の孤立を超越した力と、今日でも多くの人々に語りかけるような親密なトポグラフィーを作り出すために、彼が尽くしたことだと思います。

 

―アーティストの作品を取り入れる上で、コレクション制作にどのような影響を与えるのでしょうか?

 

C:私たちは、アートワークはもちろんのこと、正しいフォルムとフォーマットを尊重して、すべてのピースをデザインしました。

S:それが実は美しい制約なのです。アイディアは、モチーフや動物に命を吹き込むという発想でした。 私たちは女性の体の周りをかくれんぼをするように遊びながら、すぐに動きのあるモチーフを描きました。

 

―今回のストアやコレクションだけでなく、あなたは《ユニクロ ユー》などのコラボレーションも手掛けています。それは売るためのバズを起こすためのものや、話題先行のコラボレーションとは異なる長期的なプロジェクトだったり、より深いコミュニケーションによって生まれる化学反応のようなものだと思います。あなたが他者との協業を行うときのポリシーや哲学といったものがあれば教えてください。他者との協業ということであれば、2009年に加わったサラ=リン・トランさんの加入があります。彼女とはどのようなきっかけで出会い、出版社に勤めファッションを学んでいないにもかかわらずクリエイティブ・パートナーとして引き入れようと思ったのでしょうか?

 

C:私が他ブランドと一緒に仕事をする際、《ラコステ》、《エルメス》、そして今は《ユニクロ》ですが、最初のそのブランドたちから自分たちがインスパイアされ、彼らのレガシーをリスペクトできることが必要です。そしてもちろん、そのブランドが本当の意味で、何のためにあるのか、ブランドの哲学、その語彙を深く理解しようとしています。私はブランドに建設的なインプットをもたらすために最善を尽くすようにしています。

S:私の人生の中で重要な出会いでした。私たちはすぐに意気投合し、年齢や背景が違っていても、共通の審美眼を共有していることを発見しました。《ルメール》ブランドの再スタートに向けて一緒に仕事をしようというアイデアは、とても自然に出てきました。この出会いが今日のブランドの基礎となっています。

―日本にくることも多いあなたは、神保町で古本を探すことも多いそうですが、「twelvebooks」にも訪れたことがあるのでしょうか?

 

C:そうです!「twelvebooks」は東京のお気に入りの本屋さんです。サラ=リンが紹介してくれました。

S:非常に興味深い本のセレクションを持つ美しい書店だと思います。私たちのコレクションと書店とが対話することは、とても自然なことだと感じました。訪れた人が時間をかけて過ごす様に促してくれます。神保町は、世界で一番好きな場所の一つです!渋谷には小さな本屋さんがたくさんあって、いつも宝物を見つけています。

 

―この苦しい時代のなかで、人々は本当に必要なものや残そうとするものに対する意識が強くなっていると思います。《ルメール》というブランドは一過性のファッションではなく、ずっと着ていたいと思うような服を作り続けていると思いますが、この時代の変化を経て、あなたは《ルメール》がどのようなブランドにしていこうと考えていますか?

C:親切なコメントをありがとうございます。今回の危機は、私たちの信念を再確認させてくれました。私たちは、これまで以上にコレクションを改善するために決意を固めています。

S:その通りです。Covid-19は、私たちの信念をより強めました。長持ちするように作られた本格的でデイリーなワードローブを提案していきます。

LEMAIRE AND SKWAT

ADDRESS:東京都港区南青山5-3-2 火曜〜日曜
BUSINESS HOURS:12:00~19:00 ※月曜定休
TEL:03-6384-0237
TERM:2020年10月1日〜2021年3月31日(予定)

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