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FASHION
Aug 24, 2018
By THEM MAGAZINE

QUESTIONS & ANSWERS / JOHN GALLIANO [Japanese]

Q1_「アーティザナル」を含めたウィメンズコレクションを手がけていたあなたが、2018 F/Wよりメンズコレクションにも取り組むようになった理由を教えてください。

 

A1_《メゾン マルジェラ》のクリエイションは、ピラミッド型の構造によって成り立っています。このピラミッドの頂上に位置するのが、オートクチュールに相当する「アーティザナル」コレクションです。「アーティザナル」において探求するテクニックやシルエット、テーマは、プレタポルテである「デフィレ」コレクションに反映され、そして私たちが手がけるすべてのラインに浸透していくのです。それはつまり、私がピラミッドの頂上にひとつの言語(ランゲージ)や用語(ターミノロジー)を確立した時点で、それをメンズウエアに解釈する用意もできていたということなのです。

 

 

Q2_メンズコレクションを制作するにあたり、まず始めに取り組んだことは何でしょうか?

 

A2_私たちは、メンズコレクションを発表すると決める前から、しばらくの間、ひそかにカッティングを研究していました。それは、新しいメンズのワードローブに「アーティザナル」のモチーフやテクニックを取り入れたものです。そして、シナジーという現代的な考え方によって、すべてがうまく調和することに気付いたのです。ワードローブ、コード、価値観が組み合わされることで、ある種のケミストリー(相乗効果)が生まれるのです。

 

 

Q3_ファーストシーズンとなる今回のメンズコレクションで表現しようとしたテーマやメッセージは何ですか?今季のテーマのひとつである「シナジー」について詳しく聞かせてください。

 

A3_シナジーという象徴的な価値観を通して、ここ数シーズン私たちが使い続けているモチーフで《メゾン マルジェラ》の基盤となるコードに融合するメンズのワードローブを提案したかったのではなく、自己表現や個性、多様性を重視することによって、ジェンダーや伝統という問題を超越してしまうような新しいドレッシングのアプローチを表現したいと思ったのです。

 

 

Q4_「ニュー・グラマー」や「デコルティケ」といった「アーティザナル」コレクションから派生したハウスコードが今回のメンズウエアにも解釈されていますが、これまで手がけてきたウィメンズウエアと異なる点は何でしょうか?

 

A4_私は、メンズウエアにおいて、ウィメンズウエアと同じようにテクニックを発信しています。これらは2つの異なるレーベルですが、それはさほど重要なことではなくなってきています。「デコルティケ」は、服を核となる輪郭まで削ぎ落とすために使っているテクニックで、最後のルックに登場した、白いシャツの上にレイヤーしている2着の白いトレンチコートにこの技術が施されています。これは、「ニュー・グラマー」というアイデアを提案する中で進化させたメソッドで、服のオーセンティシティー、つまり「インサイド(内側)」なるものを探求しているのです。

 

 

Q5_《メゾン マルジェラ》では独自のランゲージを通して「ニュー・グラマー」を提案していますが、男性にとっての「グラマー」の定義やメンズウエアを通して表現する「グラマー」とは何かを教えてください。

 

A5_私たちは決して「ニュー・グラマー」を定義づけようとしているわけではありません。私は、「ニュー・グラマー」という概念を提案することに夢中になっているのです。それは、私たちが考えるグラマーというイメージに基づいた新しい概念であり、時を経て解体され、再構築されたものなのです。この再解釈の経過の中で、私は、現代の男性にとって、あるいは女性にとって、新しいグラマーとはどんなものなのかを提案しているにすぎません。それは、控えめな男性像を新しい価値観に高めることなのか?あるいは、急いでトレンチコートを羽織って、無造作にベルトを締めただけのスタイルなのか? つまり、ラバーで象った手編みモチーフのアランニットカーディガン(Look20)のように、慣れ親しんだ記憶がもたらすものこそがグラマーのイメージなのかもしれません。

 

 

Q6_急いで服を着た時のジェスチャーが生み出す偶発的なシルエットやカットを“Dressing in Haste(急いで服を着る)”というコードに据えていますが、自身が体験したコードにまつわるエピソードはありますか?

 

A6_それはパリでのある夜のこと、長い1日の仕事で疲れきってお風呂に入った後、愛犬たちを夜の散歩に連れていくのを忘れていたことに気付いて、着替えるのが面倒だったので、《マッキントッシュ》のコートを羽織って、ベルトを締めて、スリッパを履いたラフな姿で散歩に出かけました。途中で友達とばったり会ったので、ベンチに座って何時間もおしゃべりしたのですが、その時の私は、《マッキントッシュ》のコートと革のベルトという何でもない格好がしっくりきて、とてもグラマラスな気分になったのです。そこで、新しいアイデアが閃いたというわけです。

 

 

Q7_ハウスコードのひとつである“Appropriate the Inappropriate(不適切な要素を適切にする)”とは、どのような要素が、どのように適切化されるのでしょうか?

 

A7_‘Appropriate the Inappropriate’というのは、あらかじめ服に対して持っている価値観を壊して新しいものに変換するという考え方です。ジャケットのプロポーションを縮小してシャツにするとか、ニットウェアをラバーに成型するといった、ある一面では適切だと考えられている服の要素を他の何かに変換させる(進化させる)ということです。

 

 

Q8_「デコルティケ」のプロセスの中で最も複雑な点はどういったところなのでしょうか?

 

A8_私たちは、「デコルティケ」というテクニックを服に用いて、表層部の内側に隠された核となる構造を露わにしたいと考えました。そのためには、服を単に切り離していくのではなく、服をつなぎ合わせている本質的な構造を突き止めて、その過程で、何を露出させるかを明確にしていかなければならないのです。いわば、服を比喩的に表現するカッティング方法というわけです。

 

 

Q9_これまで、《メゾン マルジェラ》は、メゾンのヘリテージを現代に甦らせたり、歴史上の人物、服や衣装から着想を得て、再生、再構築、再解釈によってデザインを生み出してきましたが、今は、そのクリエイティブなプロセスや取り組み方に変化はあったのでしょうか?

 

A9_私がメゾンのクリエイティブ・ディレクターに就任する前に、マルタン・マルジェラ氏と会って話をする機会がありました。そこで彼は私に、彼が創ったコードをなぞるのではなく解釈することが重要だということを伝えてくれたのです。それ以来私は、メゾンのコードに新たな解釈を吹き込みながら進化させています。

 

 

Q10_《メゾン マルジェラ》を手がけるうえで、メゾンのアーカイブをどの程度踏襲し、自分自身のスタイルやアイデアをどの程度取り入れているのでしょうか?

 

A10_《マルジェラ》のようなメゾンでは、私自身の仕事にピラミッド型のアプローチを確立することが、クリエイションを表現するうえでとても有機的なプロセスだと考えました。私たちが表現することはすべてアトリエの中で生まれていて、ここは歴史と、新しい発見への情熱と願望に満ちています。

 

 

Q11_ SNSや加速化するファッションサイクルによって、時は常に移り変わり、進化しています。あなたのクリエイションは時代の変化にどう向き合おうとしているのでしょうか?

 

A11_私は、ファッションや私たちを取り巻く世界の進化にワクワクしています。このアトリエで1年間過ごすスタージュ(インターン)たちを通して、私はミレニアル世代のものの見方や考え方を間近に見ています。彼らの考え方はファッションの変化にとても関連が深いので、私はそれらすべてからインスピレーションを得ようとしています。例えば、6月に発表したばかりの「アーティザナル」メンズコレクションは、現在のメンズウエアを取り巻く環境の変化やストリートウェアへの関心の高まりに反応したものでした。ドレスメーカー(*ジョン・ガリアーノは自身を「ドレスメーカー」と呼ぶ。)としての自分なりの解釈、自分が知り得る最善のことを、新しい世代に向けてどう提案できるだろうかと考えてみたのです。

 

 

Q12_《メゾン マルジェラ》がメンズとウィメンズで同じハウスコードを共有しているように、現代のファッションでは、より男女の境界線がなくなっています。例えば、メンズのワードローブから解釈されたウィメンズのコートのように、「グラマー」を表現するためにウィメンズウエアを男性が着るアイテムに変換したりすることはあるのでしょうか?

 

A12_メンズウエアで表現したバイアスカットは、まさにこの転換のわかりやすい例だと思います。メンズの18-19F/WのLook19あるいは、「デコルティケ」のダブルブレストのコートに、レザーのロデオジャケットの上部をカットオフしたビスチェを重ねたLook28もそれにあたります。

 

 

Q13_メゾンの将来について、あなたはブランドのディレクション(方向性)やビジョンをどこまで考えているのでしょうか?もしくは、その都度、目の前の「デフィレ」だけに集中しているのでしょうか?

 

A13_先に説明したように、創作のプロセスにピラミッド構造を取り入れて実践しているので、コレクションをどう発展させていくかというのは自然のメカニズムなのです。このやり方によって、ある程度の予測はたちますが、日々、周りにあるものからも自由にインスピレーションを受けています。

 

 

Q14_《メゾン マルジェラ》のクリエイティブ・ディレクターに就任して以来、プライベートやライフスタイルは変わりましたか?

 

A14_「ステップ バイ ステップ」という姿勢で仕事に取り組んでいます。休みもとります。そして、不完全なものに美を見出すことを学びました。こうして創作活動ができることは、とても爽快で刺激的です。

 

 

Q15_あなたもアトリエで作業する際は、(メゾンのユニフォームである)白衣を着ているのでしょうか?

 

A15_私たちはみんな、アトリエでは喜んで白衣を着ていますよ。

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