Them magazine

SHARE
CULTURE
Jul 11, 2023
By THEM MAGAZINE

LP RECORD JACKET COLLECTION Vol_03

ヴァイナルの魅力はなんといっても当時発売されたオリジナルに尽きる。

再発されたものと比べると、ジャケットの印刷の色味、紙の質感、そもそもレコード盤自体からしてモノが違う。

音のみならず、ジャケットにまでこだわるLPコレクターもついつい手を伸ばしたくなってしまうヴァイナルを紹介。

 

今回で、第3弾となる編集部が独断と偏見でセレクトした「目と耳で満足させられるLP」を紹介するLP RECORD JAKET COLLECTION Vol_3

 

 

 

 

THE VELVET UNDERGROUND / THE VELVET UNDERGROUND (1969)

ベルベット・アンダーグラウンドのセルフタイトルであるこのLPは、実験的なサウンドを好んだベーシスト、ジョン・ケイルが脱退した後にリリースされた3rdアルバム。

二枚目のアルバム制作中、ジョン・ケイルはバンドのフロントマンであるルー・リードとの関係が悪化。彼はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの中で居場所を失う。

新たなベーシストとしてダグ・ユールが加わったこのアルバムは、前作とは打って変わってルー・リードの個性が色濃く出た物静かで穏やかかつ、繊細な楽曲になっている。

このクリーンでフォーキーなサウンドに変わった理由の一つに、空港でエフェクターなどの機材一式盗まれたトラブルに見舞われたことが原因だとか。

 

このアルバムのジャケット写真を撮ったのは、写真家のビリー・ネーム。

彼はアンディ・ウォーホルの「ファクトリー」(※1)の一員として、ウォーホルの友人であり、時には恋人であった。

あの“バナナ”でお馴染みの一枚目のアルバムを最後に、プロデューサーであったアンディ・ウォーホルと絶縁したベルベット・アンダーグランドだったが、ビリー・ネームとは親交が続いた。彼はベルベットアンダーグラウンドの『White Light/White Heat』に続いて、この三枚目のアルバムのジャケット写真を撮り下ろしている。

 

写真のLPは当時発売された初期盤だが、1980年代に再発されたLPと比べてみると印刷・紙質の違いは一目瞭然。

再発されたLPは、リプリントのためかビリー・ネーム特有のモノクロの風合いが欠け、写真のコントラストがハッキリとした印刷で紙質・盤も薄くペラペラなものになってしまっている。

楽曲のみならず、ジャケットの質感にもこだわるLPコレクターは、80年代以前に発売された当時の味わいのあるLPを手に取ってみてほしい。

 

 

(※1)ファクトリー:アンディ・ウォーホルがもっぱら作品を制作していたアトリエ。そこで時にはアートについてディシカッションする場であり、セレブとのパーティを開き、性に開放的かつドラッグが蔓延した無法地帯だった。この空間には上流階級と下流階級が関係なく、あらゆる人々(ミュージシャン、セレブ、ドラッグディラーからトランスジェンダーなど)が入り混じっていた。すべて銀色でおおわれた空間はファクトリーのアーキビストであったビリー・ネームが手掛けた。2006年に公開されたアンディウォーホルのミューズ、イーディ・セジウィックを描いた『ファクトリー・ガール』では、ファクトリー内の様子が色濃く描かれている。

 

 

The smashing Pampkins / Mellon Collie and the Infinite Sadness (1995)

1990年代、グランジムーブメント絶頂期。その中でもスマッシング・パンプキンズは、ニルヴァーナ、パールジャムなどのグランジシーンとは一線を画したオルタナティブ・ロックアーティストだった。

このスマッシング・パンプキンズの『Mellon Collie and the Infinite Sadness』は2枚組、全28曲から構成されたトータル2時間にもおよぶ超大作で全世界売上1000万枚以上を超える90年代の“大名盤”となった。

バンド史上最高の支持を受けたこのアルバムは、ジーザス&メリーチェイン、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなど、オルタナティブ・ロックシーンの凄腕のプロデューサーとして名を馳せるアラン・モウルダーとフラッドのタッグが、プロデューサーとして加わっている。

 

このアルバムがリリースされた1995年頃はCDが主流だったが、現在のように密かにレコードブームの再熱が来ていた。彼らはこの『Mellon Collie and the Infinite Sadness』を限定で、5000枚までジャケットにナンバリングつけたLPで発売。今や、上記の写真のLPのようにナンバリングのついたものは超プレミアヴァイナルとして扱われてる。

 

このアートワークを手掛けたのは、アメリカのグラフィックデザイナーであるフランク・オリンスキー。彼は、ソニック・ユース、トーキング・ヘッズ、デュラン・デュランなどの数多くの著名アーティストのアルバムジャケットをデザインする他、スマッシング・パンプキンズに関しては、シングルを含めた11枚ものジャケットデザインを手掛けている。

 

この三作目の大ヒットにより、グランジシーンのライバルと差をつけたスマッシング・パンプキンズだったが、バンド内では、鬱病、バンド内恋愛の破局、薬物依存など数多くの問題を抱えていた。ツアー中には、サポートメンバーが薬物で死去、ドラマーのチェンバレンは薬物所持で逮捕され、バンドを解雇。2000年のアルバム『Machina/The Machines Of God』を最後に、バンドは解散した。(その後もビリー・コーガン中心にスマッシング・パンプキンズは継続。その後20年の時を経て、2020年にはジェームス・イハ(※2)、ジミー・チェンバレン、ジェフ・シュローダーの四名で再結成を果たしている。)

 

 

(※2)ジェームス・イハ:スマッシング・パンプキンズのギター。バンドを解散した翌年、ビームスのバックアップの元、《VAPOR(ヴェイパー)》(現在《VAPORIZE(ヴェイパライズ》)を立ち上げる。1998年初となるソロアルバム『Let It Come Down』をリリース。このアルバムはそっと背中を押してくれるな、優しく爽やかなサウンドだ。スマパン好きはもちろん、これからの季節の散歩やドライブのお供に是非おすすめしたいアルバム。

 

SHARE