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BOOK
Sep 26, 2025
By THEM MAGAZINE

COMING UP Vol.03_04 『九龍城砦I 囲城』by 余兒

拳で固めていく揺るぎない友情と義侠心

香港でも日本でも、映画と漫画が大ヒットしたバイオレンス・アクションストーリーの原作。とにかく劇画を読みまくるスピードでページが捲られる。中国語圏小説では避けることのできない登場人物や土地名の難解な漢字にも、すべてのページごとにふりがなが記され、テンポを緩めることなく、スムーズにストリーを追いかけていける。そんな配慮がとても嬉しい。ヤクザな世界に足を突っ込んだ主人公の若者(チャン・ロッグワン)が、持ち前の度胸の良さと、タフな心身で、アウトローの世界を生き抜いていく痛快活劇。次々と現れる巨大な敵に、時には打ちのめされ、時には友情を育みながら、義理と人情とセンチメンタリズムで、読者を惹きつけていく。日本のアニメや漫画も随所に登場して親近感が湧くが、服部半蔵が日本刀の名工などという、ちょっと首を捻る記述は(香港の不良たちの知的レベルをあえて揶揄する)狙いなのだろうか? ラスボスのキャラクターや、クライマックスのシーンなどはこれまでのバイオレンス作品とは一線を画す、どこかZ世代的と思わせるような表現と展開も。本書は三部作の第一巻で1988〜1989年の香港が舞台。次作は年代が少し遡り、主人公の師匠が主役となるようだ。映画『スター・ウォーズ』を思わせるような構成に、さらに興味が募る。映画、漫画、小説とどれを最初に選ぶかは迷うところだが、おそらく、どこから入っても男気溢れる対決シーンの連続には、満足させられるのではないか。

余兒

ユーイー 漫画原作者を経て、本作『九龍城砦Ⅰ 囲城』にて2008年長編小説デビュー。本作に始まる《九龍城砦》三部作は、第二部『龍頭』(2018年)第三部『終章』(2024年)からなり、また外伝『信一傳』(2025年)も刊行されている。第一部の本書は漫画化され、原作を担当。第七回日本国際漫画賞の入賞作品に選ばれた。2024年、本書を原作とした映画『トワイライト・ウォーリアーズ 決戦!九龍城砦』が公開されると熱狂的に迎えられ、香港で広東語映画作品として歴代1位の観客動員数に達した。日本でもロングヒット中となっている。

よしだかおり

中文翻訳家。訳書『台北裁判』(早川書房刊)他。

光吉さくら

みつよしさくら 翻訳家。訳書『三体』劉慈欣(共訳、早川書房刊)。

ワン・チャイ

翻訳家。訳書『三体』劉慈欣(共訳、早川書房刊)。

 

Photography_TORU OSHIMA.
Text_TORU UKON(Righters).

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