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MOVIE
Jul 08, 2021
By THEM MAGAZINE

Go See a Movie : 映画館へ行こう! エリザ・ヒットマン『17歳の瞳に映る世界』

誰にも言えない 誰も判ってくれない

 

エリザ・ヒットマン監督最新作となる『17歳の瞳に映る世界』。その原題『Never Rarely Sometimes Always』は、しばしばチェックシートで見かける「一度もない/めったにない/時々/いつも」の4択の答えから引用されている。何てことのない質問なら軽く流せるが、そうでない場合は筆が止まり、その曖昧な事情と感情には4択のどれが適切な答えなのかと思考を巡らすハメになる。それが病院の場合、思い出すのは良い記憶でないことがほとんどだ。今作は、妊娠が発覚した17歳の少女オータムが、中絶のためにいとこのスカイラーとペンシルベニアからニューヨークに向かう数日間の物語。オータムは日頃から口数が少なく、周囲と馴染めずに孤独を背負いながら暮らす。ニューヨークに向かうのは、居住するペンシルベニアでは未成年の中絶には親の同意が必要だからだ。

 

 

オータムを演じるシドニー・フラニガンの感情を押し殺した表情は、切迫した思いが息苦しいほど繊細に伝わってくる名演だが、今作で女優デビューだというから驚き。通底するムードはドイツや近年のフランス映画のようなエッセンスを感じさせるが、撮影を担当したのがアニエス・ヴェルダやヴィム・ヴェンダース作品を手がけてきたエレーヌ・ルヴァールだというから納得だ。音楽を手がけたのはSSWのジュリア・ホルター。主人公の母親役を演じたシャロン・ヴァン・エッテンは、本作のエンディングのために新曲「Staring at a Mountain」を書き下ろした。製作には『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスも名を連ねる。2012年にアイルランドで起こった、中絶が違法だったために女性が亡くなったという事件から着想された本作。ある一人の少女の物語は、地球上のどこでも起こり得ることであり、決して人ごとではない。

 

 

17歳の瞳に映る世界

2020年/アメリカ/英語/101分
TERM 7月16日〜
SCREEN TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
URL 17hitomi-movie.jp

Eliza Hittman

エリザ・ヒットマン 1979年、アメリカ、ニューヨーク生まれ。カリフォルニア芸術大学で美術学修士を取得。2013年製作の『愛のように感じた』は、サンダンス映画祭NEXT部門でプレミア上映された。17年製作の『ブルックリンの片隅で』は、サンダンス映画祭ドラマ部門のコンペティションでプレミア上映され、監督賞を受賞。本作が長編映画3作目、日本劇場初公開となる。

 

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Edit_Ko Ueoka.

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