Them magazine

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MUSIC
Mar 25, 2021
By THEM MAGAZINE

The LATEST MUSIC -今週聴きたい新譜- TUNE-YARDS | Sketchy.

バング!バング! 響く憂いのファンファーレ

音のみを拾い上げれば、底抜けに明るく、途方もないほどに能天気なアルバムに聴こえる。しかし歌詞に耳を傾ければ、それと相反した悲痛な言葉が叫ばれている。カリフォルニア州オークランドを拠点にするメリル・ガーバスとネイト・ブレナーによるデュオ、チューン・ヤーズは、環境問題や人種問題など社会を取り巻くイシューについて注意深く観察し思考してきた。その結果を、より露骨に独自のアウトプットに昇華してみせたのが、待望の5thアルバム『sketchy.』だ。

チューン・ヤーズの代名詞ともいえる、重層的で畳み掛けるようなアンサンブルや重くこだまするベース、けたたましいほどのハイトーンは健在。今作がこれまで以上にパワフルに聴こえるのは、主にパソコンではなく二人の生楽器を使った演奏をベースにつくられているからだろう。特に「silence pt. 1 (when we say “we”)」「silence pt. 2 (who is “we”?)」からの「hold yourself.」の流れは圧巻で、シングルカットとして聴く同曲とは異なった輝きを見せる。世を憂うだけの暗い曲をつくることもできるだろうが、それがチューン・ヤーズに求められていることではないのは、彼女らが一番分かっている。お祭り騒ぎの極上のポップサウンドに潜む、辛辣なアンビバレンスが痛快な一作だ。

 

スケッチィ

ARTIST チューン・ヤーズ
RELEASE DATE 2021年3月26日
LABEL 4AD / Beat Records
URL beatink.com/products/detail.php?product_id=11691

 

 

 

TUNE-YARDS

チューン・ヤーズ カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するメリル・ガーバスとネイト・ブレナーによるプロジェクト。2009年、デビューアルバム『BiRd-BrAiNs』をリリースし、直後に名門レーベル〈4AD〉と契約。11年、セカンドアルバム『Whokill』をリリース。今作『sketchy.』は、18年の4thアルバム『I can feel you creep into my private life』以来約3年ぶり。

 

 

Edit_KO UEOKA.

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