Them magazine

SHARE
ART
Nov 05, 2021
By THEM MAGAZINE

横須賀の地の歴史や人々の痕跡を掘り起こす、山谷佑介の新作

横須賀の地の歴史や人々の痕跡を掘り起こす、山谷佑介の新作


「ユカ・ツルノ・ギャラリー」は10月16日(土)から11月13日(土)までの期間、アーティスト山谷佑介の個展『KAIKOO』を開催。
横須賀の古民家の解体・改築作業を通して掘り起こされた土地や建物の歴史、そこで暮らしていた人々の痕跡、そして土やコンクリートといった物質との出会い、対峙で生まれた、土壁の立体作品や作業中に撮影された写真作品を発表する。
国内外で活動を行う山谷は『Tsugi no yoru e』や『ground』といった、現代社会と個人の狭間にある欲望や熱量などを鋭く切り取った作品が持ち味の写真家だ。深夜の住宅街を赤外線カメラで撮影した『Into the Light』にて、“撮影する”という行為そのものの可能性を拡げ、前作『Doors』では元パンクバンドを組んでいた経験を、ドラム演奏という形でパフォーマンス化して作品に落とし込むなど、実験的なアプローチを繰り返してきた。

photo by Ken Kato
photo by Ken Kato
photo by Ken Kato

山谷の写真における表現は、現実を映し出す写真への尽きない興味と同時に、撮影者の意図によって被写体がイメージの中で固定化されてしまう一方的な関係への違和感とつながっている。
そして、彼の関心が現実世界へと対峙する写真へ深化した頃、山谷はコロナ禍で横須賀の築82年の3棟平野の古民家を自宅兼アトリエに改築するプロジェクトを始動。家族・友人・知人らを巻き込んで、自身も一から作業に加わった。山谷は土やコンクリートに触れ、横須賀の土地が持つ歴史やそこに暮らしていた人々の痕跡を掘り起こす過程に、自身が考えてきた写真表現との類似性を見出した。

古民家は、陸軍日本兵の宿舎だったという近代史の一旦を担った土地である一方、「竣工から80年の間に繰り返されたリフォームで埋もれてきた歴史が顕にされ、特筆すべき歴史的価値のない、ありふれた昔のものたちに今一度光が当たる。受け継がれてきた歴史や伝統とは程遠い、どこにでもあるそれぞれの家の話だ。」と語る山谷。
堀り起こされた土や、伐採した植物、コンクリートなどの住居作りが彼にもたらす物質たちは、「何かしらのモノとの出会いでしか存在しない」と考える山谷の写真そのものを想起させる。
『KAIKOO』は、物質や時間の中で成り立つ写真のあり方を探り、現代を生きる私たちの足元に根付く歴史、存在を見つめる示唆を与えてくれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

【開催情報】
山谷佑介
「KAIKOO」
開催期間:2021年10月16日(土)〜11月13日(土)
開廊時間:火―土 11:00-18:00 *11月4日〜7日「Art Week Tokyo」開催中は10:00-18:00
休廊日:月、日、祝

協力
濱田智成 (studio hamanari)

 

【問い合わせ】
ユカ・ツルノ・ギャラリー
TEL.03-5781-2525
E-mail. info@yukatsuruno.com

SHARE