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FASHION
May 25, 2020
By TORU UKON (Editor in Chief)

「もう、これ以上買わんでよし! 〜断捨離断念のマイ・ワードローブ〜」Vol.002_MADE IN USA Tシャツ

MADE IN USA信仰(もしくは信者)であると自覚している。なぜか? どうして、そんなにMADE IN USAをありがたがるのか? これは恐らく年代に関係していると思う。主に1950〜1965年くらいまでに生まれた人にこの信仰が強いのではないか。彼らの青春時代、ファッションといえば、アメリカだった。

僕が、MADE IN USAにこだわる理由は、最初にファッションを好きになったスタイルがアメカジだったから(もっと言えば、IVY)。当然、日本製よりもアメリカのブランドが偉く、そのほとんどがMADE IN USAだった。1980年代になると、アメリカブランドも工場をコストの安い海外に移転したため、MADE IN USAがみるみる減ってきた。それが逆にMADE IN USA信仰を強めた。

 

ただ、2020年の今日、品質にアメリカ製品と発展途上国製品に明らかな違いを見つけることは難しい。よく、洋服屋さんのお兄さんが「作りが違う」と教えてくれたが、それも20世紀までの話。それでもMADE IN USAにこだわるのは、もはやノスタルジーでしかない、と僕は思っている。ま、60を過ぎた今もなお、16歳くらいのころと変わらないスタイルなのだから、必然とも言えるのだが。

 

特にアメカジの中核的なアイテムになると、MADE IN USA信仰は強固な傾向になる。中でもTシャツはその代表だ。そこで、これまでMADE IN USAにこだわって買い求めたTシャツをまとめてみた。もちろん、主題としているところの自戒の念を込めて。

まずは、アメリカを代表するTシャツブランドから。

 

左が80年代の《チャンピオン》のトリコロールタグで、右が《ヘインズ》のビーフィー。Tシャツを買うときに、もっとも気にするのが、ネック。特に左のバインダーネックが好きだ。バインダーネックは伸びやすいので、ネックが伸びきっていないヴィンテージを探すのは結構難しい。ビーフィーのリブネックは太い幅が気に入っている。MADE IN USAのビーフィーはあまりネックもへたらないので、何回洗ってもネックの両端が立った感じになるところが、好きだ。90年代以降、細くなる一方だったリブネックの幅だが、最近は80年代以前の太くて大きく締まりの良いリブネックをチラホラ見かける。ダサかっこよくて、好きです。

1965年の映画『コレクター』のテレンス・スタンプを採用したThe Smithsの『What Differencr Does It Make?』のアルバムジャケット(後に回収騒動に)をプリントした《フルーツオブザルーム》。洗うとすぐにタグのプリントが消える同ブランドの3枚パックTと違って、こちらは98%コットンで、2%異素材が混じる。その分強度は増すが、着心地はザラつく。タグの下部にスター&ストライプが描かれ、そこのMADE IN U.S.A.と記されるこのタグは、最近ネットなどでブートのロックTのボディに使われていることが多い。ヴィンテージのボディだから、当時のオリジナルにみせかけているのだろうか。僕はロックTにオリジナルかブートかにこだわらず、ヴィジュアル重視で購入しているですが、たまに「それ、ブートだよ」とご丁寧に注意してくれる方がいるので、ちょっと面倒臭かったりする。

 

右は現在でもMADE IN USAを続けている《ヴェルバシーン》の80年代のフロッキープリント。ただこのブランドは最近、生地が粗いように感じる。このTシャツはヴィンテージの100%コットンならではの柔らかさ嬉しい。

 

子供っぽいと言われるが、リンガーTも好きだ。

 

左はコーポレイトT(企業ロゴTとも説明される)。ジェネラルフーズだ。70年代くらいまで、アメリカの企業のロゴはデザインが良くて、古着屋さんで見つけると、つい買いたくなってしまう。右はご存知ディズニーのミッキーT。20年ほど前にそのまま着るのが恥ずかしくて、黒目線をマッキーで描きました。ミッキーTもMADE IN USAが少なくなってきましたが、そこにこだわっている人がどれだけいるでしょうか?

以前はタバコを吸っていたので、ポケTを重宝しましたが、禁煙に成功してからはポケTのありがたみは減りました。ただ、乳首を隠してくれるのは嬉しい(片方だけだけど)。

 

80年代後期の《ギャップ》はMADE IN USAだった。色落ちし、ネックは伸びてあまり品質は良いとは言えないが、それもまた味。ネックが破れてきたので、さらに味わいが深くなった。このリブネックの細さがこの時代の象徴。右は、ちょっと前までデッドでも見つけられた《ディスカス》。ポケットはホームベース型ではなく、正方形に近い。タイトで着丈が長いので、今風とは言い難いかも。

 

左はヘビィウエイトでおなじみの《グッドウエア》。ただ、ヘビィすぎて日本の夏にはあまり不向きのような気がします。ヘビィウエイトをありがたがる人は多いけど、僕は《ヘインズ》のビーフィーくらいがちょうどいい。右は昨年「原宿キャシディ」の八木沢さんに勧められた新しきMADE IN USAの《ライフウエア》。なんだか前者のパチもんみたいなブランドネームだが、こちらは薄手。八木沢さんは僕らと同じ世代なので、MADE IN USAに対する思いを共有していただける素敵な店長さんです。

左は90年代の前半くらいまで存在していた《カルバン クライン》のMADE IN USA。こちらは3枚パックではなく、一枚ごとにパックされていた。90年代のTシャツらしいリブのネックの細さ、緩さが特徴的。ダブルステッチ、着丈が短めで、身幅が広く、アウターとして着る需要が増えた時代を象徴するような作り。右は同年代の《ヘルスニット》。このブランドも今尚MADE IN USAだが、この当時のTシャツは袖や裾がシングルステッチ。僕はシングルステッチのほうが好み。タグがないと《フルーツオブザルーム》と見分けがつかないが、インナーとして着るならば、80年代までのこの2ブランドの3枚パックTが最高だと信じている。

60~70年代のバインダーネック。さすがに一枚でアウターに着るには忍びないが、インナーでは十分活躍してくれる。特に柔らかさや着丈のながさ、肉厚なところがニットのインナーに最適だ。左はつい先日倒産が発表された《J.C.ペニー》のプライベートブランド。ここは《タウンクラフト》というプライベートブランドも持っていた。右は僕が個人的に大好きな《ジョッキー》。

そして最後はヴィンテージ《ジョッキー》2点。左は、恐らく90年代の頃の3枚パックの1枚。ネックのつまり具合、幅が自分にはちょうど良い。右のデッドは70年末から80年代初頭に大流行したハイネック気味の「life」レーベル。映画『アメリカン・グラフィティ』のリチャード・ドレイファスがマドラスチェックのシャツのインナーに着ていたのも、おそらくこれ。僕も高校生のころ、ボタンダウンシャツの下にこれを着ていた。当時3000円以上して、インナーにするには高価過ぎて、2枚のストックを取っ替え引っ替え着て、週に1回くらいしか着れなかった。長年ずっと探していたが、先日ついに入手! もったいなくて、まだ袖を通せてない。以上、これにて、僕のTシャツ購入もめでたく「あがり」を迎えた。

 

 

上記の原稿をアップしてから10日後。

 

長年探していた《ジョッキー》のTシャツだが、デッドの袋を開封し、洗濯してみたところ、僕が高校生のころ来ていたハイネック気味のTシャツではないことが判明した。襟の高さが違うし、素材も違うように思えた。なにぶん40年以上前のことだから記憶違いかもしれないので、さらに色々と調べて見ると、僕が高校生のころ着ていた《ジョッキー》は、おそらく日本のライセンス商品だったのではないか。パッケージも日本仕様だった気がする。となると、MADE IN USAではない、という可能性も出てくる。

 

僕と同じように当時の《ジョッキー》のハイネック気味のTシャツを探している人がいるようだ。上野の「玉美」に売っていたという情報もあったり、15年ほど前に復刻したという情報もあったが、実物を手にしていないので、真偽のほどは定かではない。

 

また、映画『アメリカン・グラフィティ』のリチャード・ドレイファスが着ていたのも、どうやらこれではなかったようだ。ハイネックに見えていたのは「前後逆に着ていた」という説が正しいようだが、当時のアメリカでポリスマンなどが制服のシャツの下に《ジョッキー》のハイネック気味の白いTシャツを着ていたというのも事実として残っている。映画『カラーズ』でショーン・ペンが着ていたのがそれだ、という情報もあった。確かにハイネック気味だが、僕が高校生のころに着ていたものと同じである確証はない。

 

「あがり」を迎えたと思っていたが、僕の「Tシャツの旅」は完全にゴールを失ったようだ。

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