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CULTURE
Jan 06, 2018
By TORU UKON (Editor in Chief)

日本映画史上、最も美しい女優は誰だ? 第一回

何と言うテーマだろう。 畏れ多い、と言うことをお前は知らぬのか?

 

お前ごときが語れるテーマなのか?

 

厚顔無恥は百も承知百も承知。ここはブログ、ご意見無用ということで語らせていただきます。

 

私の人生60年を振り返り、最も美しい女優さんについて語らせていただきます。

 

最初に登場する女優が当然、美女ランキング第1位と思われるかもしれませんが、実は第1位がたくさんいて、そこは判断がつかないのです。でも、常々この方の美しさはことあるごとに思い出されるので、まずはこの女優さんから語りたいと思います。

 

もうすでに顔が出ています。御察しの通り、藤谷美和子です。

 

女優の美しさは一瞬、永遠ではありません。それが私の定義です。

 

ですから、藤谷美和子も彼女の女優人生を通じ総じて邦画史上ナンバー1ということではありません。映画『それから』の藤谷美和子が、ナンバー1なのです。

 

1985年、今は亡き森田芳光がメガホンを取った映画『それから』。原作は夏目漱石、主演は松田優作、脇役には小林薫、風間杜夫、笠智衆、草笛光子。そして、特筆すべき音楽には梅林茂という、これで駄作なはずがないと言う布陣で撮られた作品でした。

 

 

松田優作のアクションが全くない抑えた演技は『探偵物語』以上のもので、森田芳光監督も名作『家族ゲーム』で松田優作とタッグを組んでおり、かなり熟成した作品になることがあらかじめ期待されていました。

 

そこに、ストンと添えられた可憐な花一輪、それが藤谷美和子です。

 

彼女のキャスティングにより、この『それから』は名作を超えて、日本映画史上の傑作となった、と私は信じています。

 

藤谷美和子は、この作品に出演する6〜7前に、テレビの青春ドラマでピーチクパーチクやかましい女子高生役や、カルビーのポテトチップスのCMに出演し、天然ボケの不思議ちゃんなアイドルと言ったキャラクターで、すでに人気者でした。でも、僕はそのころの彼女を見ても、額面通りの評価しかできず、とくに気になる存在でもなかった。『それから』を観に行く際も、彼女にはまったく眼中になく、森田&松田作品と言う興味だけで映画館に向かいました。

 

ところが、明治の女性としてスクリーンに現れた藤谷美和子の美しさは最初のシーンから、輝き放っていました。

 

これまでの彼女のキャリアのどこを探しても見つからないような、清楚で、慎ましく、奥ゆかしく、芯が強く、可憐で、美しい日本の女性。これまで観てきた吉永小百合とも、倍賞千恵子とも、原節子とも違った美しさ。それはこの作品の最後まで貫かれていました。公開から30年経った今もまったく不変です。

 

確かに、森田芳光の演出も、梅林茂の音楽も、多少は彼女の美しさに助長していたかもしれない、と何度か見返ししたけれど、やっぱり美しい。

 

「寂しくて、いけないから、また来て頂戴」とラムネを飲みながら絞り出すセリフは、そのシーンだけでも、数年分のすべての

女優賞を捧げたいほど。

 

 

日傘をさしてひまわりのような笑顔から、暗い畳の部屋で耐え忍ぶ姿、そして、両の肩をさらけだして髪の毛を洗うシーン。そのどれもがもし美の純度があるならば、目盛りは100を超しているに違いない。

 

まだ、「それから」の藤谷美和子を観たことがない方は、ぜひご覧ください。

 

ちなみに、藤谷美和子に関しては、「それから」のそれ以前も、それ以後も、まったく美しいとは思いませんでした。

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