最新作「The May Sun」は、「IZU PHOTO MUSEUM」の周辺で撮られたものですが、いわゆる伊豆的な要素はあまりなく(接写だしね)、そこには不変のワイフェンバックの色彩と独特なフォーカスの世界が広がっていました。もしかしたら、地元の人には“伊豆”がわかるのかな?
また、パレスチナの押し花帳『Pressed Flowers from the Holy Land』に触発されて作成したというモノクロのシリーズ「The Politics of Flowers」も展示されています。パレスチナの紛争を思い起こす重いテーマで、一般的なワイフェンバックのイメージとは真逆ともいえる、感傷的な気分になります。
「The May Sun」では、ユニークな表現から生み出される美しいビジュアルが見られる。しかし、その内包するコンテクストには乏しい。一方、「The Politics of Flowers」は既存の押し花をスキャンしているもので、モノクロでシンプル。しかし、そのコンテクストは計り知れない。そして2つが同じ場所で提示されることでくっきりと現れてくる、非現実/現実の交錯、もしくはその反転。様々な要素が相反するこの両作が対になる形で展示されていることが、両作に対して別の角度からの視点/解釈をもたらし、またワイフェンバックへの理解や関心を深めるきっかけになるのではないかと思います。その意味で、ミュージアムに出向いて鑑賞すべき、特別な展示になっているのではないかと思います。