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FASHION
Jun 18, 2018
By THEM MAGAZINE

LONDON FASHION WEEK MEN’S 2019S/S #1 Collection Report

妊婦のように腹の出た男性モデル、阿修羅のように伸びた6本の腕、アルミホイルの雲から垂れ下がったチューブに繋がれたタイトスーツ姿のパフォーマー…。19年春夏シーズンの開幕を告げるロンドン・ファッションウィーク・メンズは、次代のスターを生み出す場に相応しい、それぞれの個性を巧みに表現したコレクションを披露するブランドを数多く見ることができた。

初日にメイン会場のBFCショースペースでランウェイを発表した《JOHN LAWRENCE SULLIVAN》。『タクシードライバー』(1976)と『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)からインスピレーションを得た今シーズンは、パワーショルダーに厚いソールのブーツなど、力強さを打ち出したルックの数々がランウェイに登場。得意とするPVCやレザーを用いたアイテムに加え、シルバーやイエロー、レッド、グリーンなどビビッドなカラーを用いたルックが印象的だ。

「LVMH Prize 2018」のファイナリストにも選出された《A-COLD-WALL*》は、身体や衣服をクレイで染められた集団によるパフォーマンスからショーがスタート。“Human. Form. Structure”をテーマに、光沢のあるナイロンやメタリックなテクスチャーに手織りのニットやウールを組み合わせた異素材のハイブリッドを中心に、片袖はストラップで繋げられもう片方はマントのようになったコートなど、左右が異なるシルエットのアイテムが続き調和のとれたアシンメトリーなスタイルを提案した。

小誌ともかかわりの強い《KIKO KOSTADINOV》は、チャイナタウンにあるビルでランウェイを行った。6シーズン目となる今季のテーマは“Interviews by the River”。サタジット・レイ監督の『The Apu Trilogy』とジャン・ルノワールの『河』というインドを舞台にしたふたつの作品にオマージュを捧げた。ミリタリーウエアのシルエットやボックスシルエットがスポーツウエアのディテールによって柔らかさが加わり、料理服が通気孔や誇張されたカッティング、ネールカラーに変わるなど、ユニフォームスタイルが新しい解釈で生まれ変わった。

チョーク・ファームの住宅地を会場にショーを行った《Martine Rose》は、ロンドンへのラブレターがテーマ。サイケ柄のシャツ、スプレーペイントされたパンクジーンズ、青みがかったハワイアンシャツ、モーターサイクルジャケットやパンツなど、90年代のUKレイブシーンで育った男性が大人になったスタイルがランウェイを彩った。ヴァージル・アブローといった来場者の豪華さもブランドの支持を強く示している。

今季最も期待を集めたのは《チャールズ ジェフリー ラバーボーイ》。今シーズンもセット&コスチュームデザインをギャリー・カードが手がけ、アルミホイルの雲がランウェイ上に吊るされ、そこから伸びるチューブにつながれたヘッドピースかぶった人がパフォーマーをする側をモデルが歩くという独特な演出が観客を魅了する。ボディへの研究をテーマにしたコレクションには、着丈の短いトラックスーツやアームやウエストにリング状のふくらんだトップス、男女の身体が組み合わさったプリントのニットなど、身体をそれと包み込む衣服のシルエットそのものを考えされるようなメッセージが込められていた。

 

一部のブランドが不参加になったロンドン・ファッションウィークだが、新しい才能が見出されるプラットフォームとしての魅力は顕在だ。再び今、若いデザイナーたちはロンドンでのショー発表への関心が集まっていると言う。まだ見ぬ新しいクリエイションは、これからもここロンドンから生まれるだろう。

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