Nov 06, 2025
By THEM MAGAZINE
PICK-UPS vol.13 DUFFLE COAT
ドメスティックブランドが示す、“ダッフルコート”の再解釈。
トラディショナルなルーツを持つダッフルコートはいま、再構築の波にある。素材やシルエット、ディテールの選択を通して、自分たちなりの解釈を試みるなかに、それぞれのブランドの思想が宿る。今回はその中から、今季注目の5着をピックアップ。変わりゆく時代のなかで、あなたはどんな“クラシック”を纏う?
≪kolor≫ DUFFLE COAT
再構築で遊ぶ、最後のダッフル。
デザイナー阿部潤一にとってラストシーズンとなった2025年秋冬コレクション。これまでテーラリングやミリタリー、スポーツウエアといったクラシックの要素を再解釈し、素材と構造の再構築によって独自の“バランス”を更新してきた《カラー》。その姿勢を、彼は最後のコレクションでも貫いた。そこには、機能性とモード性のあいだを軽やかに行き来する、《カラー》らしい感覚がある。本作のダッフルコートでは、伝統的なメルトンウールの風合いを生かしつつ、トグル部分をロープ・金具・レザーで構築。手縫いのようなディテールが、クラフトと再構築の精神を象徴している。裏地にグリーン、フード裏にブラウンと、色と素材の差異をあえて仕込み、見えない部分にも遊びを宿す。膝上丈の軽やかなバランスが、クラシックを日常のリアリティへと落とし込む、《カラー》らしい提案だ。原点と革新が共存する、最後の一着。¥264,000(Kolor)
≪TSTS≫ SEDITIONARY SHELL COAT
日常と非日常のはざまに揺れる、機能と遊びのバランス。
アントワープ王立芸術アカデミー出身の佐々木拓也と井指友里恵が手がける《ティーエスティーエス》は、東京を拠点に構築的なパターンと実験的な造形で評価を高めるブランド。2023年秋冬から本格始動し、日常と非日常のあわいにある、バランスの揺らぎを探ってきた。本作では、クラシックアウターのディテールを再構築し、機能と遊びの関係を再定義している。ボディ全体に配置されたリングやストラップは、装飾ではなく、機能と遊びのあいだを往復する構造としてデザインされている。今季は映画『トゥルーマン・ショー』から着想を得て、作中に描かれる“制御された世界”と“その外側への恐怖”をデザインに落とし込んだ。その情景に重なるのは、暗闇の奥に広がる未知への欲望と不安。《ティーエスティーエス》はそれを、アントワープ仕込みの構築性に東京のリアリティを重ねて表現する。日常を少しだけ逸脱する、その緊張感こそがブランドの本質だ。¥187,000(TSTS)
≪YOSHIOKUBO≫ SHAGGY TWIST DUFFLE COAT
ずれが生む、新しいクラシック。
クチュールの技術を背景に、構造の中に意図的な“ずれ”を仕掛けるデザイナー、久保嘉男。2004年にブランドを立ち上げて以降、「見たことのないパターンとディテール」を追求し、服づくりを再構築のプロセスとして示してきた。このダッフルコートは、切り替え線やポケット位置を緻密に計算して配置し、まるで布がツイストしているかのような視覚効果を生む一着。肩線のずれや斜めに走る背中心線、左右非対称のバランスが、クラシックなフォルムに新たな緊張感を与えている。温かみのあるウール素材とトグル留めのディテールは、伝統的な機能性を継承しながらも、構造そのものをデザインとして昇華。2020年秋冬から素材を変えながら継続して展開されている“隠れた定番”であり、彼の服づくりに通底する実験とリアリティの交点がここにある。¥93,500(yoshiokubo)
≪SUGARHILL≫ FUR COAT
無骨さを洗練へと導く、10年目の進化。
翌シーズンで10周年を迎える《シュガーヒル》は、設立当初から貫く「クラフトと無骨さの共存」を軸に、独自の進化を遂げてきた。今季のダッフルコートは、クラシックなディテールを継承しながらも、フェイクファーの質感で新たな存在感を放つ。黒のファーの中で際立つトグル部分は、レザーとロープで構築され、素材のコントラストがブランドの“都会的ワイルドネス”を象徴している。重厚なルックスとは裏腹に、ナイロンならではの軽さと滑らかさを備えた一着。無駄を削ぎ落とし、素材の質感に力強さを宿したデザインは、《シュガーヒル》が積み重ねてきた10年の成熟を物語る。“無骨さ”を美学へと昇華する、その確信こそが《シュガーヒル》の現在地だ。¥176,000(林デザイン事務所株式会社)
≪NICENESS≫ LILY-YARN HERRINGBORN DUFFEL COAT
時間を重ねて、服を更新する。
20世紀初頭、英国海軍のために生まれたダッフルコート。その機能美を礎に、《ナイスネス》が現代へと再構築した一着だ。アメリカ産ウールとシェットランドウールを掛け合わせたリリヤーン糸を用い、リバーシブルのヘリンボーン生地で仕立てている。表裏で異なる表情を持ち、トグルにはフランス・HAAS社のアルザスレザーを採用。着脱式のパーツ構造により、着る人のスタイルや気分に合わせて表情を変えられる。各国のアーカイブから抽出したディテールを組み合わせながら、構造や素材、そして着る人の感覚をデザインに織り込む。それは単なる再現ではなく、“時間を重ねて再構築する”ようなアプローチだ。落ち着いた存在感と確かなつくり。《ナイスネス》が目指すのは、流行を超えて長く寄り添う服のかたち。クラシックとは、時を経てもなお、手の中で更新され続けるものだと教えてくれる。¥319,000(ELIGHT inc.)
【問い合わせ先】
Kolor
東京都港区南青山5丁目6-10
TEL.03-6427-6226
Instagram:@kolorofficial
TSTS
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tstststs.com
yoshiokubo
東京都目黒区中目黒1-8-1 VORT中目黒I 2F
TEL.03-3794-4037
yoshiokubo.jp
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林デザイン事務所株式会社
Mail:info@sugarhilltokyo.com
store.sugarhilltokyo.com
ELIGHT inc.
東京都目港区赤坂8-5-40 PEGASUS AOYAMA 260
TEL.03-6712-7034
niceness.jp