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ART
Aug 07, 2019
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】 田凱展「生きてそこにいて」

【インタビュー】 田凱展「生きてそこにいて」


 若手作家の登竜門として名が通るコンペティション「1_WALL」。年に2回行われるこの公募展はグラフィック・写真の2部門で構成され、これまで多くの新進作家を輩出してきた。第19回写真「1_WALL」のグランプリを獲得した中国出身の写真家、田凱の個展「生きてそこにいて」が銀座にあるギャラリー「ガーディアン・ガーデン」にて8月24日(土)まで開催中だ。

Inside of an Abandoned Reception Room

2006年より日本に移住し、日本企業に就職。2008年から、日常を記録するような写真を撮り始め、知識を深めるために日本写真芸術専門学校へ入学、在学中は自身のスタイルを追求し、卒業後は清里フォトアートミュージアムに作品収蔵されるなどの実績を持つ田凱。現在でも日本、中国、台湾などで自身の作品を意欲的に発表し続けている彼に、今展覧会で展示中の作品群について、制作についてのインスピレーションについて話を聞いた。

 

ゆっくりと流れる時間をそのまま切り取ったような彼の作品は、一見素朴でありながら、ひとつひとつに尊い生命力が宿っているように受けとれる。本展覧会のタイトルにもなっている《生きてそこにいて》シリーズは彼の生まれた故郷を舞台に撮影した作品だ。「芸術性の高いドキュメンタリー写真」と評されたそれらの作品に対し、エキゾチシズム漂う美しさを感じる人も多いだろう。
「実は写真を撮り始めた初期の頃、自分の故郷に対して、あまりポジティブな思い出がなかったということもあり、そこで作品をつくりたいと思うことができませんでした。なので、日本の各地に出かけて作品を撮るというスタイルをとっていたのですが、経験を積むにつれて他の国でも撮影をしてみたいと思うようになり、今回、自分の原点に向かい合うという意味でも故郷を題材に作品をつくってみようと思いました。
自分の故郷のリアルを見出すにあたって、現在の中国の地方状況に目を向けることはとても重要なことだと考えました。私の故郷である、かつて栄えていた石油工場のある土地をはじめ、中国国内には重工業の衰退や、過疎化で廃れていく地域が奥地に散在していました。それらの土地と、そこで生活する人々を被写体にして、自分にしか撮れないものを生み出そうと考えながら完成したのがこのシリーズです。今回は自身の故郷で撮影したということもあり、友人にも協力してもらいました」

Abandoned Living Quarters
Yuan’s Portrait

今回のシリーズをはじめ、彼の生みだす一連のドキュメンタリー写真のインスピレーション源はどこにあるのだろうか。「在学中、今回撮影した自身の故郷が油田の町だったというのもあるし沢山の作家さんに影響を受けていると思います。特に、今回のシリーズにつながるものとしては、ホンマタカシさんの《東京郊外》シリーズがあります。多摩ニュータウンや港北ニュータウン、幕張ベイタウンなど、首都圏の外輪にある郊外風景と人々のポートレートで構成されていて、どこの町なのか判別できない無機質でクールな作品です。同時に都市郊外の脱社会性を提示するその作品群は、私の故郷に通ずるものがあると思います。」

 

最後に今後の展望についても話を聞いてみた。「これからも、様々な国に足を運んでそこの空気を肌で感じてみたいですね、イラクやイランなど中東の石油輸出国を回ってみたいと思っています。資源に恵まれた国々ですが、同時に紛争が絶えない地域でもあります。古代文明の起源でもある土地に足を運び、新しい作品をつくれればと思っています。」彼の目に他の世界はどのように写し出されるか。今後の彼の活動に注目していきたい。

「Guardian Garden」での展示風景。photo by Keizo Motoda
田凱展「生きてそこにいて」

TERM – 8月24日(土)
PLACE ガーディアン・ガーデン
ADDRESS 東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F
OPENING HOURS 11:00 a.m.-7:00 p.m. 日曜、8/10(土)〜8/18(日)休館
TEL 03-5568-8818
URL http://rcc.recruit.co.jp/gg/exhibition/19ph_dengai/19ph_dengai.html

 

 

 Interview&Text_Daiki Tajiri

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