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ART
Sep 02, 2019
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】DANCERS by RINKO TSUKAMOTO

東京・原宿、キャットストリートの裏、住宅地の中にひっそりと佇むギャラリー「THE SECRET MUSEUM」。そこでRINKO TSUKAMOTOによる初の個展「DANCERS」が8/29-9/28まで開催されている。

 

 

「私は舞踊が生み出す線の美しさや
身体表現の多様性、そして彼らが踊る瞬間に放たれる
神秘的な光を切り取るその行為が好きだ。
それは私には絵を描くことと似た感覚を思い起こさせる」

 

By RINKO TSUKAMOTO

 

 

 

ダンサーたちの腕のたおやかさ、足先まで研ぎ澄まされた鋭さ、何より大胆さ。なのに、どこか退廃的な雰囲気を漂わせる。彼女の作品には、そんな相反する「動」と「静」が共存しているように感じる。この「DANCERS」は、多摩美術大学に通う現役の大学生であるRINKO TSUKAMOTOが撮りためてきたダンサーを題材にした作品を写真と映像で展示。初の個展を行うにあたっての経緯と、彼女の写真や映像、ダンサーに対する思いを聞いた。最適な言葉を探すように話す彼女の言葉は柔らかい、しかし、眼差しは確かに先を見据えていてとても力強い。

――「DANCERS」が初の個展とのことですが、どのような経緯で開催が決まったのでしょうか?

 

個展はずっとやりたいと思ってたのですが、作品の数がまだまだだと思っていました。ですが、今回は(所属するダンスユニット「L’attraction」の)VACANTでの公演が決まっていたので、それ観てくれたお客さんが展示にも来てくれればと思って。いいタイミングでした。それに、今回展示している作品は、自信作ばかりです。好きなものはもっと他にあるんですが…。今回は技術面と自分の好きな雰囲気を出せたバランスが取れたものを選びました。技術面というのは構図ですね。人物の配置はちゃんと中央に来ているか、立ち位置は対象になっているか、斜めになっていないかなどとても気にします。私が私自身の作品で好きなのは、残像のある写真がメインで、ダークで、重く、暗いもの。見てくれた人にも暗いねって言われます(笑)。率直に、作品をこうやって並べてみて満足しています。配置も雰囲気ごとに分けて、自分なりに空間づくりにも作品の世界観を表現できたと思っています。

 

 

――満を辞して今回開催されたのですね。大学は多摩美術大学で、映像美術ゼミを専攻されていますね。

 

はい。映画やドラマのセット、美術をプランニングするゼミです。なので、映像と写真は完全に趣味の範囲でやっているんです。

 

 

――なぜ映像美術を専攻されたのでしょうか?

 

もともと映画が好きで、いつからかストーリーではなく作品のセットが気になってくるようになったんです。考えるのも作るのも楽しそうだなって思って。フランス映画が好きなのですが、特にゴダールの『気狂いピエロ』は作品としてとても好き。グザヴィエ・ドランの作品は好きでもあり、とても影響を受けていますね。彼特有の雰囲気や映像美がすごく好きで、彼みたいな画が撮れたらいいなと密かに思っています。

――では、写真を始めるきっかけは?

 

ずっと写真は好きでしたが、本格的にカメラを手にしたのは高校生のときです。親の影響で、昔からこのようなギャラリー(「THE SECRET MUSEUM」はTSUKAMOTOさんのご自宅で、ご両親が運営されている)を親が運営していたので、フォトグラファーさんをはじめとしたクリエイターさんが、たくさん出入りしている環境だったんです。だから、写真という媒体を無意識に好きになっていたんじゃないかな。高校は芸術高校で、有志で行う学科の合同舞台がありました。そこで撮影を頼まれたことがきっかけです。ダンサーさんが日常的にいた生活でしたが、写真を本格的に始めたのはこれがきっかけでしたね。

 

 

――どうしてダンサーを撮ろうと思われたのですか?

 

もともとダンスを見るのが好きで、バレエなど小さい頃から観にいっていました。ダンサーというものが好きだったので、その姿をおさめたいと思ったのがきっかけです。有志の合同舞台撮影からカメラを始めて、ダンサーさんにしかない身体の線の美しさをより一層、魅力的に感じましたし、撮っていて楽しかったんです。

――2017年に「L’attraction」というダンスユニットを組まれていますが、どんな経緯で結成されたのでしょうか。また、どんな活動を行っていますか?

 

ダンサーのメンセ・カティとは高校が一緒で、私の卒業制作に参加してもらったんです。そこから、もっと作品を出していきたいね、という話になって。先週(8/24-25)、VACANTにて初めての公演を行いました。踊りと映像や写真、ZINEなど様々な表現で作品を発表しています。将来的には色んなダンサーさんを迎え、「L’attraction」を劇団のようにして世界を周れたら…と思っています。

――映像と写真それぞれにどんな魅力があると思われますか?

 

映像はダンサーの魅力のすべてをそのまま出せるのがいい。個人的に、映像の編集も好きですね。繋げて、音楽を入れて…。写真は一瞬を切り取ることができるのが魅力ですよね。私自身そこをすごく大事にしています。ダンサーの、ダンサーにしかない魅力を写真という媒体に残せるし、そうすることで記憶にも強くとどめておけると思うんです。それに、一瞬に彼らが放つものを捉えたいとも思います。私が写真と映像どちらもやるのは、それぞれの良さを大事にしていきたいからなんです。

 

 

――TSUKAMOTOさんが考える、ダンサーにしかないダンサーの魅力とはなんでしょうか?

 

踊る、踊れないってあると思うんです。踊れる人にしか出せない身体表現や体の線、動き、そういったものがダンサーさんにはあります。私の撮影スタイルは自由に踊ってもらって、たくさんシャッターを切るのが基本。ポーズを決めてもらうこともあるんですが、ポーズを決めてもらうとやっぱりどこか硬いんですよね。自由に踊ってもらうと、ダンサーさんそれぞれの表現や表情が生きてくる。まさに、一瞬がたくさん転がっているような感覚です。でも、自由に踊ってもらうので、どう動くのか予想がつかなくて。手足がはみ出てしまったりするのは、ダンサーさんを撮影するうえで難しいと感じます。

 

 

――これから撮りたい、表現したいと思うものはどんなものですか?

 

これからも自分らしい雰囲気や表現で、各国のダンサーさんと出会いたいです。ゆくゆくは色んなカンパニーに顔を出して、様々なダンサーさんをおさめていきたいですね。そして、また個展をやるときは今回の展示のアザーカットと、新しいダンサーさんの写真を出せたらと思っています。まだ微力ですが、ダンサーさんの美しさや神秘性を世界に伝えていきたいです。

ZINE 「L’attraction」 ¥2,000

【展示詳細】
会期:2019年8/29(木)-9/28(土)
営業時間:13:00-19:00
休廊日:月,水曜日
会場:THE SECRET MUSEUM
〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-21-2

【問い合わせ先】
TEL.03-3797-3019
info@thesecretmuseum.tokyo

 

 

Edit_Marin Kanda

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