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FASHION
Sep 17, 2019
By THEM MAGAZINE

Interview with Yves Spinelli as SPINELLI KILCOLLIN

Interview with Yves Spinelli as SPINELLI KILCOLLIN


占星術が好きだというイヴ・スピネリは、自身のためにデザインした指輪に「ギャラクシーリング」と名付けた。複数のリングを小さな輪で繋いだジュエリーは今、世界中のショップで取り扱われ、彼の《スピネリ・キルコリン》というブランドを象徴するシグネチャーとして、たくさんの人々の装いを輝かせている。

 

LA発のジュエリーブランド《スピネリ・キルコリン》。創業者のイヴ・スピネリはハワイで生まれ、LAに移り住んで自身のキャリアをスタートさせた。「12年間、LAの『マックスフィールド』というセレクトショップでセールスパーソンとして働いていたんです」。「マックスフィールド」といえば、1969年の創業以降西海岸を代表するハイエンド・セレクトショップとしてその名をほしいままにしている。《コム・デ・ギャルソン》や《リック オウエンス》、《ジバンシィ》といったメゾンやラグジュアリーブランドを取り揃え、《ヴェトモン》や《オフホワイト》をいち早く発掘した。世に出る前の《クロムハーツ》を見出し、即座に取り扱いを決めたというエピソードも有名だ。「ある日、自分で着けるリングが欲しくなったんです。《クロムハーツ》はもちろん好きだけど、自分で着けるならもっとクリーンなものがよかった」。ティーンのころから金属好きが高じて、趣味でジュエリーメイキングを学んだ経験をもとに自らハンドメイドで作ることにした。「一度に複数の指に着けることのできるデザインを考えました。そしてそれぞれが繋がっていれば、よりコンフォータブルでいいのではないか、と思ったんです」。そして出来上がったのが、まるで惑星系を描いたような連なりの、神秘的なバランスと美しさを持ったリングだった。ブランドを始めるときに名付けたと彼はいうが、彼の宇宙への羨望が表現されたのだろう。《スピネリ・キルコリン》のコレクションとして展開されている「ギャラクシーリング」は、彼が最初にデザインしたものとまったく同じだ。自身では今もなお、22金やブラックゴールド、シルバーなどさまざまなマテリアルで作り上げたファーストモデルを愛用している。店頭に立つ彼の指元を見たマックスフィールドのカスタマーが口々に、同じものがほしいと声をかけてきた。そして2010年に彼が妻とともに《スピネリ・キルコリン》をスタートさせるようになると、LAのみならず世界中のセレクトショップからのオーダーが届くようになっていった。

 

ブランドが大きくなるにつれて、彼が作るジュエリーは自分が想像するよりたくさんの人を魅了していることに気づいていった。設立当初は『マックスフィールド』のカスタマーに向けたデザインを意識していたというが、クリエイションを続けていくにつれ、どんな人にも合うようなジュエリーブランドを目指すようになったと語る。「友人のリングをデザインするとき、指が華奢な人には厚さを少し薄くしたり、その人に合ったものを考えながら作っていたんです。そうしていくうちに、今のような幅広いラインナップになっていきました。最初のリングが完成した後、妻のために同じ厚さのものを作ったのですが、自分がデザインするジュエリーがユニセックスで使えるものだとわかったんです。もちろんフェミニンだったり、繊細なデザインは女性が似合うことはありますが、デザインする上ではあくまでユニセックスということにこだわっていますよ」

こうしてより多くの人に受け入れられるようになっていった彼のジュエリーは、何通りもの着け方を楽しむことができるのも大きな特徴のひとつだ。出来上がってからいくつもの着け方ができることに気づいたというデザインも、ファッションに長年携わってきた背景から影響を受けている。中でも《コム・デ・ギャルソン》や《ヨウジヤマモト》といった日本のデザイナーにインスパイアされると語る。「裏返しても着られるジャケットのように、一枚の服でいくつもの着方があるような服が好きなんです。《ヨウジ》は似合ったためしがないけど(笑)、《ギャルソン》は今でもよく着ています」。インタビュー時に彼が着ていたのは《ジル・サンダー》のTシャツだった。また出身地のハワイでは、日本製のプロダクトの数々を目にし、一見シンプルなもののなかにもこまやかなディテールやこだわりが詰まっているものに魅力を感じてきたという。「シンプルながらも強さを感じさせるものを作りたいと思っています。クオリティの高さやクラフト感というものを追求していきたいんです。《クロムハーツ》のものつくりの姿勢や、特筆したブランディングもリスペクトしているけど、私にとっては少し“ロックンロール”すぎたので(笑)」

 

着ける人を選ばず、より多くの人にとってオープンなブランドでありたいという思いは、デザインのみならずプライスレンジの幅広さにも反映されている。またイヴは《スピネリ・キルコリン》だけじゃなく、他のジュエリーとも組み合わせて欲しいとも語る。そうした彼のマインドは、友人である《クリーチャーズ オブ ザ ウィンド》やLAのアイウエア《バートンペレイラ》といったブランドとの、これまでのコラボレーションからも見ることができる。そして今回新たにタッグを組んだのが、同じくLA発のジュエリーブランドとして人気を博している《ホーセンブース》だ。
「同じLA出身ということ、卸先のショップが共通していることもあって、以前から面識があったんです。(デザイナーの)ロバートが『一緒にやらないか?』と声をかけてくれたんです」。ジュエリーブランド同士のコラボというスペシャルなコレクションでは、互いのシグネチャーをかけあわせた3型3タイプで展開するという。「《ホーセンブース》の錨モチーフのリングと《スピネリ》のリングをかけあわせたんだ」。このスペシャルなコレクションは、今秋日本でも展開されるそうだ。

 

その繊細で力強いクリエイションを、今後よりさまざまなプロダクトで表現していくのだろうか。最後に、この先ジュエリー以外のプロダクトを手がける構想があるのかを訪ねてみた。「妻が彫刻家で、ブランドを立ち上げる時からいつかさまざまなプロダクトを手がけるデザイン会社として発展できればいいなと話していました。実はもう、テーブルとライトといったファーニチャーも制作しているんですよ。テーブルは大きすぎるので輸送が大変そうですが(笑)、ライトなど、ジュエリー以外のプロダクトなども今後人々の手に渡っていけるようにできればと思っています」

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