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FASHION
Oct 02, 2018
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】CMMN SWDN

 2018年秋冬、19年春夏と、パリファッションウィークにおいて怒涛の勢いを見せている《CMMN SWDN(コモン スウェーデン)》。2012年に、セイフ・バキールとエマ・ヘドルンドのデザイナーカップルによって創立されたスウェーデンのブランドだ。彼らが人気を集める理由は、拠点を構えるロンドンらしい切れ味やストリートの匂いを感じさせながらも、スウェーデン出身ブランドならではの、美学あるデザインをリアルクロージングに落とし込む絶妙なバランス感覚にある。数シーズンにわたりロンドンファッションウィークにてプレゼンテーションを行ってきたが、18年秋冬よりパリへと場を移し、ランウェイでの発表に切り替えた。すると、これまで秘められていた《CMMN SWDN》の持つモードな魅力が鮮明に打ち出されることとなった。聞けば、カニエ・ウエストとともに働いていた経験もあるという2人。デザイナーひしめくパリで、今その存在感を高める彼らは一体何者なのだろうか?

2019S/S Collection

——まず2人のバックグラウンドについて教えてください。ブランドを立ち上げる以前は何をされていましたか?

 

エマ:私は、幼いころからよく絵を描いていました。何か創造的な取り組みをしたいといつも思っていましたが、特にファッションを目指していただけではなくイラストレーションとグラフィックデザインのコースに興味を引かれ、その翌年にセントラル・セント・マーチンズのウィメンズウエア科に入学しました。

 

セイフ:私がファッションの仕事に関わり始めたのは、15歳のときです。私の父と叔父が運営していたノースロンドンにある小さな工場で手伝いをしていました。その工場は《リバー・アイランド》や《H&M》、《トップショップ》のようなファストファッションブランドの服を生産する一方で、当時注目されていた若手ブランド《Red or Dead》など、ロンドンの若いデザイナーのために小規模な生産も請け負っていました。独自のデザインアイデアを持って工場を訪れる若いデザイナーたちが、のちに仕上がった作品を手にした時の顔いっぱいに広がる興奮した表情を見ると、私も彼らのような立場にいたいと思ったのです。このときの感覚は今でも忘れておらず、背中を押してくれていますね。そして16歳になるとファッションを学ぶために母国スウェーデンに戻り、その後またロンドンに帰ってきてロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのメンズウエア学士課程に入学しました。

 

 

——お2人はどのように出会ったのでしょうか?

 

セイフ: 私たちはロンドンで出会いました。エマと同じクラスで学んでいた私の同居人が、彼女の大学に訪れたときに紹介してくれたのです。私はすぐに彼女の美しさと優雅さに引き寄せられました。さらに彼女のデザイナーとしての才能も魅力的に思えましたね。

——デザイナーデュオとして、2人で《CMMN SWDN》をスタートさせたのはなぜですか?

 

セイフ : ブランドを立ち上げる前から、よく2人でデザインしていたんです。私はエマより1年前に学士課程を卒業しましたが、彼女は私の最終学年の制作を大いにサポートしてくれ、1年後に彼女が最終学年になったときは、今度は私が手助けをしました。私たち2人の間には、アイデアやデザインを議論し、新たなデザイン手法を開発しながら形にしてきました。多くの点でお互いを補完し合っているとも言えますね。このコンビネーションが《CMMN SWDN》のコレクションを確かなものにしていると信じています。

 

 

——ブランド名《CMMN SWDN》は“COMMON SWEDEN”というワードを短縮したものだと思いますが、その由来はなんでしょうか?

 

セイフ : 当初は《COMMON》というブランド名でした。ちょっと皮肉なニュアンスを込めて、ブランドのコレクションや美学とは対照的であるベーシックで日常的なブランド名にしたいと思っていました。しかし“COMMON”というワードをそのまま使うのはあまりにも普通すぎると思い始め、再考を重ねて“CMMN”に変えてみたところ、私たちをサポートしてくれている人たちが“CMMN from Sweden”と呼び始めたのです。そのアイデアを反映した結果、ブランド名は《CMMN SWDN》に落ち着きました。

AW14 Common at London Collections: Men, January 7th 2014

——過去にはカニエ・ウエストのスタジオで働いたこともあるそうですね。そのお話をお聞かせ願えますか。

 

エマ:私がセントラル・セント・マーチンズの名物講師だったLouise Wilsonの下で修士課程をスタートさせようとしていたとき、カニエがブランドを立ち上げるためのデザイナーを探しにセントマーチンズに訪れてきました。2008年の話で、カニエがファッションのキャリアを歩み始めたころでした。Louiseにカニエを紹介され、2日後には、私はLAでカニエとヴァージル・アブローと仕事をしていました。《Pastelle》というブランドを立ち上げるためです。しかし、たった1年でブランドはすぐに休止になり、その後私は《ウーヨンミ》のヘッドデザイナーに抜擢され、パリに移住しましたが、そのまた1年後、カニエから《Pastelle》を再開すると連絡があったのです。新チームを築いていくタイミングでセイフがメンズのヘッドデザイナーとして召集されました。私とセイフが、仕事として一緒に働いたのはそれが初めてでしたね。これらの経験が、私たちがブランドを始めるきっかけにもなりました。

 

 

——そうなのですね。スウェーデン出身であるのに、なぜロンドンに拠点を置いているのですか?

 

ロンドンは私たちの物語が始まった場所でありヨーロッパの中心で利便性の高い都市だからです。私たちは、ロンドン東部のShoreditch近くにデザインスタジオを持っています。ロンドンは芸術や音楽、ファッション、建築などあらゆる分野で魅力があり、いつもインスパイアされます。この街は多様で、常に私たちを魅了し、あらゆる欲望を高めてくれます。

 

 

——2014年には、ロンドンコレクションでブランド初となるプレゼンテーションを行いました。プレスやジャーナリストの反応はいかがでしたか?

 

あの発表は大いに盛り上がりましたね。バックステージでの喝采の中、プレスがコメントを取るために押しかけてきたことは、今思い出しても鳥肌が立つほどです。コレクションはとても好評で、当時、他のブランドのプレゼンテーションはほとんど静的なものでしたが、私たちはモデルに動きを加えることで動的に服を見せるプレゼンテーション方法も賞賛されました。

 

 

——ロンドンを拠点とするブランドは、ロンドンでコレクションを発表することが多いと思いますが、《CMMN SWDN》は2017-18 F/Wより発表の場をパリに変更しましたね。なぜパリを選んだのでしょうか?

 

パリのファッションウィークは、多くのメゾンやブランドがコレクションを発表しており最も重要なファッションウィークだと言える一方で、新進気鋭のブランドもショーを行っており、この二つの融合が、パリのファッションウィークをエッジの利いたものにしています。ロンドンコレクションは若い才能の発掘と、トレンド発信の地として知られる場所でもあります。私たちもロンドンでの発表を楽しんでいましたが、ブランドが成長するにつれ、より成熟したパリに移行し、ロンドンの若手ブランドのため機会を与えるときが来たと感じたのです。

2018-19F/W Collection

——2018-19F/Wからは、プレゼンテーションではなくランウェイ形式でコレクションを発表していますね。

 

私たちは常に《CMMN SWDN》はランウェイで映えるブランドだと考えてきました。すでにロンドンで6回のプレゼンテーションを行っていたので、やり方を変えてみようと思いました。

 

 

——ブランドを始めた当初は、ボクシーなシルエットなどリラックスしたウエアが多くありましたが、最近はテクスチャーとシルエットの両方がよりモードな印象になっているように思えます。ランウェイを開始するにあたってデザインのアプローチを変更したのでしょうか?

 

毎シーズンのコレクションはますます大きくなっており、ランウェイで見られるものは《CMMN SWDN》が提案するショーピースやデザイン性の強いアイテムの一部に過ぎません。例えば、18FWコレクションは、思春期が感じる複雑な心と体の変化を包み隠すようなオーバーサイズのシルエットや90年代のスポーツの要素を用いて現代的なアプローチを表現している。実際、展示会では従来から提案しているトラックパンツやTシャツなどがショーピースの隣に並んでいます。ランウェイはデザイナーとしての自己表現と創造力を発揮するための手段であり、スタイリングにおいてもさらに高いクリエイティビティを発揮することができるエキサイティングな発表形式です。

 

 

——ランウェイを行うようになって、ブランドのビジョンや求める男性像、ターゲットとする市場は変わりましたか?

 

《CMMN SWDN》のビジョンと目標は常に同じです。私たちの目標は、多様な背景とデザイン分野からインスパイアされたハイエンドのメンズウエアブランドを作り出すことでした。ブランドにとっての初めての卸先は、ハイエンドも扱えばトレンド的なブランドも扱う2つのショップ、「TrèsBien」と「Storm Copenhagen」でしたね。今日では、「Barneys New York」、「Browns East」、「Liberty」、「MR PORTER」、「SSENSE」など世界各地の60店舗に卸しています。日本では「吾亦紅」「MONKEY TIME」「JACKPOT」などのショップで《CMMN SWDN》の服を見ることができます。ぜひ手にとって見て欲しいですね。

 

 

 

 

 

Edit_Ko Ueoka

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